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石川遼君との不思議な1日
2009年08月20日(木)
夏の思い出にたまにはゴルフの話を長々と書かせて頂きます。実況中継です。医療の話は個人情報があるため詳細は書けませんが、今日は公式競技の話です。
休日の今日。朝の往診を終えると、快晴のなか今日から関西オープンゴルフが開催される宝塚ゴルフクラブに行きました。今年の関西オープンは日本オープンかと思うくらい一流選手が参加していました。
片山真吾、丸山茂樹、矢野東以外は全部宝塚に来ています。阪急坂瀬川から徒歩圏内という都心でこのような豪華な公式競技が開催されるのはおそらく一生に1回でしょう。予選初日の練習場とはいえ、すでに黒山の人だかりでした。全米プロから帰国したばかりの日本一注目される17歳、黄色のパンツとキャップの遼君は100m先までオーラを放っていました。それにしてもやたら女性が多い。90%以上のギャラリーは遼君を追いかけて動きます。遼君はまずバンカー練習から開始。その後ドライビングレンジで、50球位をじっくり見ました。ショートアイアンからドライバーまですべて、まっすぐの球です。フォームが実に美しい。お父さんが直接コーチしているのにはビックリ。クラブを置いて、手だけでシャドウスイングの練習をしていました。何事も基本に始まり基本に終わるものだと改めて思いました。
さて、デフェンデイングチャンピオンとしての遼君の緊張のスターテイングホール、テーショットは会心の300ヤード超えショットでした。残り145ヤード、ピン手前をおそらくピッチングウエッジで狙った高い球は3ヤード足りず、エッジに蹴られてしまいました。10ヤードの微妙なアプローチもエッジで止まってしまい、5ヤードのパターも入らず、不運のボギースタートでした。ワンオンを狙った2番ミドルのテーショットは左に引っかけてしまい山から出切らずOBでした。暫定球もほぼ同じ位置の林に打ち込みましたが、これはコロコロ転がり落ちて、なんと250ヤード地点にいた私の足元の深い斜面のラフに止まりました。しかしこの1球目の完全なOBボールを競技委員の間違った裁定で何故か2打目として10ヤード前のバンカーに打ち出し、残り60ヤードを今度は奥のラフにグリーンオーバー。難しいロブショットを成功させるも5ヤードオーバー。なんとかこれをねじこみ、ホールアウトしました。私はグリーン周囲に移動していたのでてっきり、暫定球をプレーしたものと思い込んでいました。だからなんと出だし2ホールで4?オーバーのはずです。思わず、友人に「遼君は出だし2ホールでボロボロです」とメールしました。私でもガッカリするとても気の毒なスタートでしたが、3番ホールでスコアボードを見ると遼君は2オーバーと記されていました。
前置きが長くなりましたが、これが今日の話の始まりです。その後、3番パーで終え、4番ロングの池越えのテーショットは、1ヤード以内の至近距離から堪能しました。ここは2オンならずバーデイー逃がしのパー。5番の短いミドルも深いラフに入れたため、50ヤードのセカンドショットを手前バンカーに入れて意地でパーパットをねじ込みました。とても苦しいゴルフです。笑顔のカケラもなく大変厳しい表情で迎えた6番テーショットは、また左に引っかけてしまいカート道上に止まりました。私の目の前で遼君はOB杭を結ぶ線を確認しましたが、残念ながら30cmほど出ていてまた無念のOB。私はたった6ホールで何と3つもの遼君のOBボールを至近距離で見ることになりました。結局、遼君は11番の短いミドルをほぼワンオンさせてバーデイーを奪った以外、あとは全部パーでした。最終18番も素晴らしいテーショットを放ちながらも、短いバーデイパットを決められずパーに終わりました。私の頭の中では、2OB、1ボギー、1バーデイで4?オーバーのはずでした。ところが、スコアボードも電光ボードもリアルタイムのPCから見れる公式記録もすべて2オーバーと表記されています。私は「えらいことになった」と思いました。詳しい事情はわかりませんが、どうやら2番のOBボールの件が全くカウントされていないようです。2番がボギーのはずは絶対にありません。しかしこのままスコアカードを提出してしまうと失格になります。休憩所で友人たちにこの件を相談しましたが、誰も信じてくれません。「そんなアホな。長尾の錯覚だろう」「遼君が間違えるはずがない」「そんな大変なことを大きな声で言わない方がいい」など言われました。彼らの忠告どうり、何も言わずにゴルフ場を後にしましたが、帰りの電車の中でも全く腑に落ちない気分でした。よく考えると同じような左の山に打ち込んだ球のどちらが1球目であるかは、ボール番号を知っている遼君自身と、間違いなく2球目が山から自分の足元に転がり落ちてきた私自身しか知りえない真実だと気が付きました。いや正確にいうともう一人、隣に私の知り合いが落下地点にいましたから、3人かもしれません。ゴルフはリアルで厳格なスポーツです。真実は1つしかありません。もし私が真実を誰かに言えば遼君は失格になるかもしれません。あれだけ沢山のメデイアやギャラリーがいながら、真実を知っているのは遼君と私たちだけかと思うと、なんだか切なくなりました。遼君は決して故意ではなく、何らかの理由で勘違いをしながらプレーを続け、18ホールをホールアウトして、スコアカードも提出したのでしょう。2オーバーの80位台で順位が確定していましたが、もし4オーバーだと100位ぐらいまで下がります。明日の予選通過は60位までで、おそらくカットラインはイーブンパー位だから、2と4では天と地の差があるし、それ以前に過少申告で失格になってしまいます。しかもこのことを知っているのは自分だけかもしれない・・・
夜のスポーツ番組を見ていて驚きました。「遼君、あわや失格。前代未聞の珍事」として2番ホールの映像が何度もいくつかの局で流れていました。番組によると、競技終了後に、私以外に2番ホールでの間違いを指摘した人がいたらしく、夕暮れに競技委員と遼君が現場検証をして、競技委員の判断ミスが発覚して、「競技委員のミスなので選手の失格には該当しない。2打罰を付す」との異例の裁定になったそうです。そこことについてのみの記者会見まで開かれるぐらい大騒ぎになっていました。深夜に遼君のスコアが2オーバーから4オーバーの102位に変更されました。現場にいたものとして、まさに前代未聞の事件だと思います。私自身ももっと早くプレー中の遼君かキャデイーさんに指摘してあげたらよかった。遼君は実力を発揮できないままでも最後までリズムが変わらず、1球も手を抜かずプレーを終えたことは本当に立派でした。明日、はたして予選を通るかどうかは神のみぞ知るですが、遼君を襲ったあり得ない事件に真近で遭遇した、とても不思議な1日でした。
夜は末期がんの方を2名往診しました。思わずこの不思議な話を世間話としてしようかとも思いましたが、あまりにも不謹慎なのでやめました。
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