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抗がん剤の是非、手術の術式など、町医者が相談相手になっています。

2010年01月27日(水)

新型インフルがしつこくまだ流行っています。季節性のB型インフルも毎日、出ています。普通の風邪と全く区別がつきません。インフル騒動からもう半年以上経ちます。新型インフルワクチンは不人気です。輸入物だと誰も打たないような気がします。大量破棄ではないでしょうか。感染症診療の横で、毎日がん患者さんのよろず相談に乗っています。沢山の資料を持って心配そうな顔をした患者さんとご家族が診察室に入ってきます。「抗がん剤をするか、とか、どんな手術を選ぶのか」。町医者が相談相手になっています。こんなんでいいのでしょうか?

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Aさんはがん病院の先生から、がんの手術後に「抗がん剤治療をするかしないか自分で決めるよう」に言われましたがどうしたらいいかと相談に来られました。

Bさんは当院で膵尾部に腫瘍が見つかりました。がん拠点病院に紹介したら主治医から「膵臓を半分残すか全摘するか自分で決めてから来なさい」と言われて私に相談に来ました。たしかに相談に乗るとしたら私しかいません。

Cさんも当院で胃がんを発見。これも有名ながん拠点病院に紹介したら、主治医から「胃全摘にするか一部を残すか術式を自分で決めて来い」と言われてこれまた相談に来られました。胃を取ったあとのつなぎ方(再建術式)も自分で選ばされます。なんだか注文住宅のようです。

「もし長尾先生が私ならどちらにしますか?」
「私なら全摘にしますね。でもどうして病院の主治医にそう聞かなかったの?」
「聞きました。でも、どちらも同じ成績だからどちらもいいと言われました」
「・・・?」

抗がん剤や手術に関する大量の説明書を目の前に患者さんが自分で判断できないのは当然でしょう。専門医が決められないものを患者さんに決めさせる。これがインフォームドコンセントという流行りの手法です。いや、今どきこうしない医者は落第の烙印を押されるのかもしれません。聞かれる私もよっぽど「僕も分かんなーい」と逃げようかと思います。しかし「長尾先生自身なら」とまで聞かれたら、つい本音を言ってしまいます。自分の言葉の重みと罪深さも感じながら、答えの無い問いに答えなければいけません。

今日もタバコと酒が好きな腹痛患者さんが来られ内視鏡検査をしたら、胃がんと食道がんが見つかりました。重複がんです。まず病院選びをアドバイスしました。そして来週は、おそらく病院から提示されるであろう2つ3つのプランから1つを選択するインフォームドコンセントの指南役を務めることでしょう。結局は町医者が決めている。こんなんでいいのでしょうか?

いいわけありません。でもそうせざるを得ないのは、一歩間違えば、刑事事件や訴訟になる危険性を医療行為が本質的に孕んでいるからです。医師法21条という明治時代の幽霊のような法律が10年前に日本法医学会で誤った解釈がなされて、現代を大手を振って闊歩しているので、こんな滑稽なインフォームドコンセント流行りになるのです。

今年は医療事故調査委員会の在り方を決める年です。極めて地味ですが、最も大切な議論です。そこには「医療の不確実性」という言葉をもっと多くの市民に理解してもらわないといけません。医者には認知されたこの言葉は一般市民には全く認知されていません。梅村議員と「医師法21条の誤解を解き、医療再生に向かう医療事故調の設置」を目指さなくてはなりません。
 

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