普段、病院に縁が無い人が、わざわざ病院に来るくらいだから
よほどのことだろう、と思いながら、診察します。
多くの場合、過労と不景気に起因した悩みです。

老人さんで、毎日、だるさを訴えてこられるかたもいます。
検査しても何もない。もちろん、過労もない。
「死にそう」と自分では言われるが、どうみても死にそうでもない。

「病院に紹介しましょうか？」と聞くと、「それは要らない」、と断わられる。
漢方薬を処方しても「効かないから要らない」と断わられる。

帰るのかな？と思って診察室を出て行く姿を眺めていると、
こちらを振り向いて、必ず、言われることばがあります。
「点滴でも打ってーな！」
「元気の出る注射を一発打ってーな！」

「でも」とか、「元気が出る」とか、「一発」」と言われると
私はつい反発したくなります。
まして、「来たついでに・・・」と言われると、もうダメです。


「ノリピーみたいになったら困るやろ」
「わしが自分に打ちたいくらいやわ」
「そんな注射あれへんわ」など
下品に断ります。

それでも納得されず、暴れそうになる患者さんがおられます。
しかたなく、２００ｍｌの点滴をします。
すぐにグーグーいびきをかいて寝てしまいます。
終わると「アー元気になったわ」と満足します。

このような、「社会的点滴」は、断るようにしていますが、
なかなか杓子定規にいかないことがあるのが、開業医です。