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研修医の就活

昔、奴隷制度、今、マッチング

2010年06月25日(金)

夕焼け迫る時間に、ある有名病院の景色のいい会議室にいました。
来年の臨床研修医の研修プログラムを検討する会議でした。
当クリニックにも、この病院の研修医が来ることでしょう。
それにしても、いまからもうこんなことをやっているのです。

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白い虚塔の時代は、分かりやすかったです。
今は、「マッチング」というシステムにより、研修医の研修場所が決まります。

要するに「お見合い」だそうです。
研修医(正確には医学部6年生)にも就職活動があるのです。
会議に参加して、あらためてそう感じました。

このシステムがいいのか?悪いのか?
自分の講演では、「このシステムで医療崩壊した」というニュアンスで
話すこともあります。

いつも話しながら、「この制度は自分が学生時代に活動して作った制度だ」
と、思い出し、自己矛盾を感じます。
日野原先生に傾倒していた学生時代の活動です。


それから20年後。平成16年から、研修医が「お客さん」になったのです。
私らの時代は、「奴隷」でした。昔の話をするのは、老人の始まりかもしれませんが。

そういえば、その「奴隷時代」によく怒られた婦長さんが、
会議の席に座ってられ、驚きました。
20数年たっても、まだ怖い存在。

もちろん、奴隷の名前や顔など覚えているはずもないでしょう。
「掃除のおばちゃんが死んだら困るけど、研修医が一人くらい死んでも誰も困れへん!」
と、言われて育った世代です。

その世代が、今の日本の医療を支えています。
現在のお客さん研修医(そうでない病院もありますが)が、
指導者になった時、日本の医療の質は確実に低下するでしょう。

すでにその予兆を感じます。
「人間を診ない医療」
「臓器しか診ない医療」です。

私の中には、常に矛盾があります。

「パンドラの箱を開こう」に書いた、労働基準法の範囲内での医師の労働、と、
「奴隷制度」に鍛えられた、プロとしての「医師」。

どちらも大切です。
しかし相反する主張です。

結局、卒後数年間は、半分奴隷。
中堅以降は、労働基準法遵守。
と、思うことで整合性を取ることにしています。

かつてのエライ先輩たちのお顔を拝見しながら
そんな、妄想が頭の中を駆け巡りました。


蛇足ですが、
開業して自分のクリニックの中にいると、自分が常に一番偉い存在。
しかし、一歩外に出ると(たとえば今夜)、一番偉くない存在。
たまには、大きな病院の会議にも参加してみるものだと思いました。








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