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男性更年期、そして前立腺肥大とがんの最新知見

2010年11月21日(日)

今日は、紅葉の京都で実に有意義な勉強会に参加した。
男性更年期、前立腺肥大、前立腺がんの最新治験を知った。
男性の下部泌尿器科問題は、現在mさにパラダイムシフトの真最中にある。
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日本を代表する泌尿器の学者と交流出来て、
わざわざ京都まで来た甲斐が、充分あった。

アボルブという新しい前立腺のお薬は、
前立腺肥大の治療のみならず、
男性更年期と男性ホルモンの考え方を、大きく変えつつある。

そして、前立腺がんの予防も可能になってきた。
面白い時代に生きていることを実感した。


【プライマリケアにおける
Prostate Heaith

まず、最初に、LUTSとは何か?

今、前立腺肥大診療にパラダムシフトが起きている

 

まず三波春夫さんの娘さんである、八島美夕紀さんが

自らのPSA検査の啓発活動について話され、踊られた。

 

【中高年の気になる病気とおしっこの悩み】

と言う演題で大阪大学準教授の石蔵文信先生が講演した。

 

男性のうつで有名な石蔵先生の話は、

もう何度も聞いているが、今日は後につながる。

 

うつと不安が同居する。

うつと言わず、「不安」と言って

問診した方がいい。

患者さんは決して自分からは言わない。

 

交感神経後進症状がメインであるが、

いったいどこの科で診るのか?

・発汗=婦人科?

・動悸=循環器科

・頻尿=泌尿器科

・攻撃性=精神科

いろんな科を受診しても異常が無いと言われる。

 

4人に1人は、膀胱症状、特に頻尿で困っている。

しかし、3人に2人は泌尿器科を受診していない。

 

テストステロン⇒DHTに変換される。

DHTは脱毛の原因

治療すると攻撃性がマシになる。

 

不安がキーワード。

阪神タイガースは、とても不安に強い。

ここ一番で、ゼロ点で負ける。

 

日本の前立腺がんの発生頻度は、

欧米の2分の1だが増えている。

PSA検診で助かる患者が増えている。

PSA検診の重要性は、増すばかりだ。

 

【プライマリケアに必要な前立腺疾患】

帝京大学の堀江重郎教授の講演。

 

前立腺がんは、周辺領域より発生する。

前立腺肥大症は、移行部から発生する。

両者の発生母地は明らかに異なる。

 

下部尿路症状(LUTS)を引き起こす。

加齢およびアンドロゲンが中心的な役割を果たす。

 

前立腺肥大症は単一の病気ではなく、

いくつかの要因が重なって起こる病態。

 

・LUTS=下部尿路症状

・BOO 膀胱出口部閉塞

・BPE=腺腫=前立腺腫大

の、少なくとも3つの要因が重なり合って

複雑な症候群を形成している。

前立腺の肥大が無い「前立腺肥大症」も存在する。

 

前立腺がんは、過去20年で倍増。

近い将来3倍ぐらいまで増加する。

 

米国では、保険が無いにもかかわらず、

7割の方が、PSA検診を受けている。

 

「和食が前立腺がんを予防する」

牛乳の中の脂肪が問題?

カルシウムの問題?

(フランスに前立腺がんが多いのは、トマト?硬水?の影響)

日照時間が少ない国に前立腺がんが多い。

 

診断には、IPSSという問診票が役に立つ

 

DHT=悪玉(?)の男性ホルモンン

前立腺肥大、男性型脱毛の原因となる。

 

プロペシアは、2型の還元酵素のみを抑えるが、

アボルブは、1型と2型酵素の両方を抑える。

(2型がメインである)

 

日本人は、アボルブの効果が出やすい人種。

3ケ月ぐらいで効果が出てくる。

前立腺肥大には、α―ブロッカーとアボルブの

両方が用いられるが、最終的にはアボルブだけでいい。

 

アボルブは線種を小さくする作用がある。

夜間頻尿が前面に出る場合は、α―ブロッカーから入る。

 

慢性炎症もがん発生の母地となる。

実験的にも慢性因子は、発がんを促進する。

 

PSA=前立腺上皮で産生されるセリンプロテアーゼ(蛋白分解酵素)

がんとは限らず、肥大症や炎症でも上昇する。

将来の前立腺がん予想のリスク因子でもある。

 

PSAのカットオフ値は、4である。

しかし4以下でも悪性度の高い癌はいくらでもある。

現在、昔言われた「グレイゾーン(4~10)」という概念は無い。

 

年齢でカットオフ値が異なる。

1以下の人は、3年に1回の検診で良い。

PSA2.5以上か否かで、リスクが大きく分かれる。

 

アボルブは、前立腺を縮小させ、PSAを低下させる。

投与中は、PSAを2倍として評価する。

3~6ケ月ごとに、PSAを測定する。

PSAの持続的増加は、泌尿器科に相談する。

 

Male LUTSとは?】

前立腺腫大、排尿障害、畜尿作用、PSA高値の

4つのマトリックスで考え、薬剤選択をする。

すなわち、α―ブロッカーとアボルブを

どう併用するのかを考える。

 

【前立腺肥大症治療の新戦略】という演題で

日本大学の高橋悟教授が講演。

 

OAB=日本では、男女合わせて800万人以上もいる。

 

α―ブロッカーだけでは、長期的な成果が出ていない。

BPH手術患者さんの前立腺体積の変遷を見ると増えている。

 

手術対象になっているBPHの体積は年々増加している。

=α―ブロッカー単独治療の功罪か?

 

血中DHTの抑制率は、

プロペシアより、アボルブの方がずっと強い。

 

【アボルブでテストステロン濃度が下がるのか?】

アボルブ投与でテストステロン濃度は、

1~2割増える!!!(決して減らない)

ここが、抗男性ホルモン療法と決定的に異なる。

 

石蔵先生が話された「アボルブを飲むと不安が軽減する」

中年男性の説明はこれと合致する。

 

アボルブは、決してテストステロンを下げない!

 

CombAT試験が教えること】

α―ブロッカーとアボルブの併用療法の意義を

急性尿閉と手術をイベントとした欧米の臨床研究のこと。

 

IPSSや畜尿症状の変化

α―ブロッカーとアボルブは、

15ケ月で効果が並び少し逆転する。

併用療法が最もいい。

 

大きい前立腺に、アボルブを併用した方が、良い。

α―ブロッカー単独療法では、3年で頭打ちになる。

66%の人が、イベント(=急性尿閉と手術をイベントと定義)

のリスク軽減が見られた。

 

【いつまで併用するのか?】

SMART-1テストでみると、

軽症者は、6ケ月以降は、アボルブ単独でも良いのでは?

中等度以上は併用でいい。

 

【とりあえずビール、とりあえずα―ブロッカー】

Male LUTSがあれば、

とりあえずα―ブロッカーでいいのだが、

もし前立腺体積が30ml以上であれば

アボルブ併用を考慮する。

 

残尿が50ml以上あれば、コリン作動薬も。

 

【アボルブとPSAの関係】

アボルブ投与前に、PSAを一度は測る。

アボルブ投与後6ケ月目に、必ずPSAを測る。

 

50歳を超えたら、男たるものPSAを一度は測る。

1.5以下かどうかで今後が変わる。

できれば40代でも一度測ればいい。

 

【アボルブが前立腺がんの予防効果がある!!?】

今年のNew England Journal of Medicineに衝撃的な

データが発表された。

 

アボルブ投与で、がんのリスクを23%減少させた。

アボルブは、いろんな可能性を秘めた薬である。

 

アボルブの副作用は、射性障害、生液量の減少の可能性がある。

まだ生殖機能を重視した男性には、少し注意が必要。

 

最後に司会をされた奈良医大の平尾佳彦教授からの

メッセージが印象的だった。

 

「泌尿器科領域で、大きなパラダイムシフトがおこりつつある。

うつや不安に対するメンズヘルスは両者の協力が不可欠の時代」

 

プライマリケア医と泌尿器科専門医の連携が

ますます重要になってきた。

 

Male S ヘルスの新星】

世界300万人

国内10万人以上が、アボルブ服用中。

 

 

【以下は懇親会での有識者との雑談】

真偽のほどは保障しません。

 

DHTが、悪玉かどうかははきりしない。

アボルブは、テストステロンを上げる唯一の薬剤

テストステロンを上げると、男性的になる。

パターナルになり、それは男性的なやさしさに。

 

前立腺肥大の原因は分かっていない。

前立腺の7割が間質で3割が上皮。

肥大するのは間質成分である。

 

アボルブは、主に上皮の増殖を抑える。

だから、せいぜい3割しか縮小しない

 

悪性度は、前立腺容積と比例しない。

むしろ小さな前立腺から悪性度の高いがんが出る。

 

【去勢抵抗性前立腺がんとは?】

以前は、ホルモン帆依存性前立腺がんと言われたが、

去勢しても増大する前立腺がんがある。

副腎由来のテストステロンが働いている?

 

【アクテイブ・サーベイランスとは?】

PSAの上昇速度と、前立腺がんの悪性度は比例する。

PSAのダブリングタイムが、3年以上の前立腺がんは

悪性度が低く、経過観察のみで良い。

しかし日本人は、無治療には不安がる。

そのような人には、アボルブが適しているかもしれない

(あくまで前立腺肥大症状が、あるひとだが)

 

【前立腺がんの3割は天寿がん】

コンバットスタデイでは

・PSA1.5以上

・前立腺容積30m以上の前立腺がんの

におけるアボルブの有用性と、

短期、中期の安全性が示された。

しかしまだ長期のデータは無い。

 

日本人なら、カットオフは、2.0のほうがいいかもしれない。

PSAが、1以下のひとに、アボルブを投与するのは

過剰投与かもしれない。

 

DHTは悪玉とは言い切れない。

活性の強いテストステロンと認識すべき。

 

 


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