お盆に引き寄せられるように、暑い夏に
何人かの患者さんが旅立たれた。
看取ったくせに、まだ現実感が無い。

いつものように、その人の家に行こうとする。
しかし、もうその必要がないことに気がつく。
気分転換をするため巡回ルートを変える。

こうして16年。
さまざまな、巡回ルートができた。
旅立ちの数だけ、巡回ルートができてしまった。

ときどき、昔のルートを辿ってアポ無しでピンポンを鳴らしてみる。
時が止まっていたかのように、家族が笑顔で迎えてくれる。
仏壇の前には、私との写真が、ちゃんと飾ってくれている・・・

道が変わること。
それは、旅立った人がいたということ。

そのルートは、たったひとりの人のものとして
自分の心の奥に、時間が経つほど深く刻みこまれる。