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除染とは移動にすぎず
2011年09月15日(木)
一生懸命除染しても、汚染土を運ぶ場所がないと、行き詰まる。
除染とは、放射線物質の移動にすぎず、放射能が消えるわけではない。
そう言ってしまえば、身もふたも無いが。
以下、MRICから転載させていただきます。
坪倉先生、上先生、頑張ってくださーい!
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よつば保育園の除染結果報告
南相馬除染研究会
坪倉正治
2011年9月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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南相馬除染研究会では、8月15日から1週間、南相馬市原町のよつば保育園の除染を行った。被ばくをできるだけ低減させるために、除染は不可欠であるにもかかわらず、その具体的ノウハウについては情報が少ない。今回はその方法と結果について報告したい。
除染前に行った放射線測定は、できるだけ細かく行った。ホットスポットを漏らさず発見するためだ。屋内ではそれぞれの部屋の中央、およびその窓際、廊下や玄関前など、計55ポイント、屋外では東西南北それぞれの壁周辺、園庭、屋根、雨樋を合わせて約100ポイントで測定した。それぞれのポイントで5cm、 1m、 2mの高さで空間線量を測定している。合計で400回程度、測定除染前後の測定を合わせると800回程度の測定を行った。
実際、測定には2日間を要し、マップ作りもかなりの作業時間を要した。しかしながら、この測定のおかげで多くのホットスポットを見つけることができた。雨樋や側溝だけではない。ちょっとした凹み、草木、壁のコケ、付着している泥など、ほんの測定場所を5m移動するだけで、状況はがらりと変わり、線量も大きく変化することを認識できた。園庭と言っても真っ平らではない。少しの凹みが線量の変化を生み、壁の少しのくぼみや水の溜まりが、コケや泥の溜まりを生んでいるのだ。このきめ細かい測定は、安心安全プロジェクト吉田邦博さん、田中節夫さんやサードウェーブの益永勉さんが行ってくれた。
高圧洗浄機で屋根や雨樋を洗い、園庭の土を剥ぎ、雑草を根から抜くという作業を3日間かけて行った。これは石川建設さんのご協力が無ければ不可能であった。やはり高所の作業は危険で、素人のやるものではない。表土を剥ぐには5cmといわれているが、実際には砂質によってどの程度剥ぐべきかを細かく考える必要があった。滑り台の下や、ブランコの下などくぼみの部分にはより多く放射性物質がたまっているため、やや深めに掘る必要がある。砂質も問題で、砂場は水などしみ込みやすいため、深めに掘らないと線量の低減はみられなかった。一旦5cm大まかに剥いでから、再度測定し直し、高い場所を細かく掘り直すやり方が功を奏した。園庭では平均0.78μSV/hから0.33μSV/h(-58%)へと線量の低下がみられた。しかしながら、他の敷地の境の土は壁の耐久性の問題であまり剥げなかったり、狭い通路は対応できなかったりと課題も残った。
草木に関しては、ただ草木を刈るだけでは線量低減にあまり効果がなかった。土を掘り返さず雑草の上だけを刈ると、逆に線量が高くなる場所も多かった。そのような場所は表土剥ぎを含めた雑草の除去の効果が高かった。草木の伐採は景観にも影響する。切りたくない木は枝打ちで対応したり、園児が生活する建物に近い場所(5m程度までの範囲にあるもの)にあるものは伐採したりと個別対応が必要だった。
園児がよく遊ぶ木の遊具の回りの線量が高かった。取り壊すのはやや忍びなかったが、園長先生のご判断で取り除くこととなった。実際にそこで生活していらっしゃる方との対話の中で、草木や遊具、その他の建造物を取り除くか否かの相談をしながら作業を行うことが重要であると思う。
今回の作業を通して、重要なことはどの場所の線量を下げるために除染を行っているのかを意識しなければならないことだ。土を剥ぐ、水で洗う、草を抜くという3つの動作で、放射性物質をできるだけ生活する場から離す。今回の除染も、園児がその多くの時間を過ごす建物近くの放射性物質を遠ざけるのがその目標だった。表土を剥ぐにも建物に近い園庭を重点的に行い、草木の伐採、側溝の洗浄も、建物に近い場所を重点的に除染した。結果的に、一階で、1mの空間線量の平均が除染間0.39から0.28μSV/h(-27%)に低減。二階では、0.34μSV/hから0.27μSV/h(-20%)に低減した。
しかしながら、いくつか問題点も残っている。一つ目は放射線物質の保管だ。今回は保育園からやや離れた駐車場に6m×6m×2mの穴を掘り、その場所に土砂や草木を埋めた。その駐車場近くのアパートがあったが、近藤園長先生が一軒一軒まわり事情を説明して回った。できるだけ早く、保管場所と方法が確定することを望む。二つ目は、隣家や近くの側溝など、よつば保育園に近い場所にも関わらず、敷地ではない場所へ介入できないという問題だ。そばに川には雑草が生い茂っていたが、県の管轄であり勝手に介入できず、側溝についても上蓋をとって洗い流したいが、敷地外でできなかった。三つ目は作業員の安全の確保だ。放射線被ばくの管理もだが、熱中症も深刻な問題だ。20人以上の方が参加してくださり、皆汗と泥だらけ。実際に熱中症で気分が悪くなった方もいた。
今回の結果は、妊婦宅と同様、子供のために線量をできるだけ下げたいという気持ちで集まった多くの方々の協力でなし得たものである。よつば保育園の近藤真紀子園長、近藤能之副園長、原町中央産婦人科院長 高橋亨平医師、安心安全プロジェクト吉田邦博さん、田中節夫さん、石川建設、放射線測定機器販売会社サードウェーブ社のスタッフの方々など、皆さんに感謝したい。
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