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医者が喜ぶと患者が泣く
2012年02月20日(月)
「診療報酬改定に思う」という小文は、今日発売の医療タイムスからの転載。
医者が喜ぶと患者が泣く。 当たり前のことを書いたが、自分の本音である。
冬の時代の診療所経営2月号 診療報酬改定に思う 長尾和宏
2月10日、中医協は診療報酬改定の概要を決定し、小宮山厚労大臣に答申しました。その内容に救急医療の充実と在宅医療の強化が明確に示されています。社会保障・税一体改革の大きな流れをしっかり盛り込んだ形です。ただ在宅誘導点数に関して少し違和感を覚える点があります。たとえば在宅療養支援診療所(在支診)の往診が2000円増えて8500円になる点。これを見て疑問に思うのは私だけではないででしょう。医師の診療報酬が増えるということは、患者負担も増えるということだからです。2000円の値上げは3割負担だと約700円の値上げになります。ジェネリック医薬品への変更で10円でも節約、と頑張っている患者さんにとっては「朗報」どころか「悪い知らせ」でしかありません。低所得者は、病気が悪化して通院できなくなっても、ますます往診を頼み辛くなることを強く懸念します。高い保険料はなんとか払うことができても、肝心の窓口負担が払えない方が多くおられます。受診が遅れ重症化する人が増えています。こうした階層にも充分配慮した社会保障制度に工夫すべきです。また敢えて在支診を掲げない在宅医が増えるのではないかと懸念します。在支診制度ができて5年。在宅看取りが思うように進んでいないのは、在支診全体の看取り数が増えていないからだと思います。安定期のみ診て最期になると入院を勧める在支診があるそうですが、高い診療報酬に見合うよう、しっかり看取りまで行うのは当然です。在支診には、医学・看護教育への参画、さらに地域包括ケアの中心的役割を義務つけるべきではないでしょうか。あるいは社会医療法人へ門戸を開くべきだと思います。診療報酬議論は、現行の在支診と在支病の充分な見直しの上にあるものでしょう。
とはいえ、もはや「在宅医療をするかしないか」という選択の時代ではありません。「地域包括ケアにどう関わるか」という時代です。もちろん、「地域包括ケアなんて知らないし、関わりたくもない」という診療所もまだまだあります。「自分の専門領域だけでも手一杯だ。地域包括ケアなんて勝手にやってくれ」という認識の診療所経営者もいるでしょう。しかし、2025年まで超高齢社会が進行します。医療費の半分以上は慢性期医療費です。専門科に特化した診療所であっても、何らかの形で「地域包括ケア」に関わる仕組み作りが求められます。診療報酬だけでの誘導政策の限界と副作用を事前に検討すべきです。すなわち予め制度の狭間を埋める作業をした上での同時改定であって欲しいと願います。
私も町医者として正直、診療報酬改定にはうんざりです。できれば3年毎の改定に変えて介護保険と合わせて欲しいと強く願います。今回の0.004%の引き上げの大半が在宅ケアに振り分けられた意味を医師会は噛みしめるべき。医師会を挙げて「地域包括ケア」、「地域連携システムの構築」に参画すべきです。地域包括ケアこそが、国民皆保険制度を護る最後の砦であると認識しています。「国民皆保険制度」は世界で最も優れた「商品」であること、それを市民が上手く利用できるような「啓発」がこれまで以上に重要です。誰のための診療報酬改定か。もちろん市民のため。生活保護に陥らないで頑張っている市民層の自己負担にも充分に配慮した診療報酬改定を望みます。
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