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本音で語る、出版への想い

2012年08月14日(火)

「医療タイムス」は、医療者向けの週刊誌、いわゆる業界誌。
毎月連載しているが、今月は「平穏死・10の条件にかける想い」で書いた。
以下、「医療タイムス」の今週号から転載させていただく。

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医療タイムス8月号 「平穏死・10の条件」出版に寄せる想い  
                        長尾和宏

 

 私ごとで恐縮ですが、去る7月17日に「平穏死・10の条件」(ブックマン社)という本を出版しました。「平穏死」とは自然死と同義。尊厳死と大部分で重なります。石飛幸三先生が「平穏死のすすめ」の中で使われた「造語」です。超高齢社会において、老衰や認知症終末期の人工栄養問題がクローズアップされています。今年になり中村仁一先生は「大往生したけりゃ医療とかかわるな」を出版されました。石飛先生、中村先生は、特養という施設での平穏死、自然死を提唱されましたが、私は町医者の立場からみた「在宅での平穏死」について書いてみました。

 8割の国民が平穏死を望んでいるが8割は叶わない、と石飛先生は指摘。その要因は、日本人の死に場所の8割が病院であることと深く関係しています。病院という場において、終末期において「何もしない医療」がどれほど難しいことであるのか、私自身も経験してきました。現在、病院での自然死は極めて稀です。勤務医時代に経験した500人と死と、在宅でお看取りした500人の死は異質でした。家族の反応も全く異なります。なぜ同じ死なのに、場によってこれほど違うのか?という素朴な疑問を持ち続けてきました。さらに、いわゆる延命治療議論の本質はどこにあるのか、終末期ガイドラインの現状、そして尊厳死法制化の現状まで、書き綴ってみました。平穏死を叶えるために市民が心得ておくべき情報を、10ケ条としてまとめたのが本書です。

 一見、市民向けに見えますが、実は病院のお医者さんに読んでほしいと願い書いた本です。講演ではよく「在宅と病院の文化の違い」について話します。在宅の常識は病院の非常識。両者の文化は全く逆です。誤解を恐れずにいえば、日本とアフリカだ、と言ったことがあります。フロアから手が上がりました。「日本とアフリカなら言葉は通じないかもしれないが気持ちは通じる。もし喩えるなら、日本とアトランテイス大陸と言ったほうがいんじゃないの?」なるほど、と思いました。それほど両者の文化が違うのは、多くの在宅医が感じていることです。もちろん病院という場でなぜ平穏死できないのか、どうすればこの「文化の差」を埋めることができるのか?その答えが本書です。終末期議論はもはや国民的ニ―ズです。何十万部も売れた「大往生」の本も、病院の先生にはほとんど読まれていません。中村先生は、「病院からの講演依頼は皆無。たまにあっても、上層部の許可が下りず後で必ず断られる」と笑って話されました。

 7月25日の国中継で「平穏死議論」が行われました。梅村聡参議院議員(医師)は、「野田総理、平穏死って聞いたことありますか?」と質問。総理は「平穏死?聞いたことがありません。知りません」と答弁されました。その後、尊厳死議論、医師法20条へと議論は展開しました。社会保障・税一体改革法案の中にはちゃんと「尊厳を持って地域で終末期を迎えること」と謳われています。昭和24年にできた医師法20条の「24時ルール」が、平成24年に国会質疑されました。偶然にも「24」という数字が三つ並びました。 

お陰さまで発売2週間ですでに4刷を重版、4万部突破といういいスタートを切りました。是非、お盆にでも御一読頂き、忌憚のないご意見を賜れば幸いです。

 

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この記事へのコメント

『平穏死』や『尊厳死』の言葉も知らぬまま、母を在宅で看取る経験をしてから、
貪るように在宅医や介護関係者、宗教家、遺品整理屋さんに至るまで死に関わる人たちが
書いた本を読み続けています。


それらを読んで感じたことは、百万言の言葉を費やすよりも、肉親や身近にいる人々の死が
いかに大きくその人の死生観や人生観を変えるかということです。
頭ではなく、心で、これから死にゆく患者の気持ちを受け止められる医師が、ひとりでも
増えてほしいと思うのですが。


ずっと乱読してきた中で、これは本物と思ったのが、石飛幸三医師、中村仁一医師、川越厚医師
などが書かれた本、そしてこちらの長尾先生のブログ、「介護と医療のちがい」を30年
に渡って介護者たちに説き、実践してきた三好春樹氏などです。

余計なことですが、これからは『平穏死』がブームになるとにらんで、亜流本を出すような
ニセモノには気をつけたいと思っています。ブームなど関係なく、地道に、自分の信念を持って
活動してきた方が語ることこそ、心に沁みるのです


最近興味を持ったNPO法人『つどい場さくらちゃん』が開催するかいご学会で、中村医師、長尾先生
三好春樹氏が揃い踏みすることを知りました。
私の中では、最高の豪華なラインアップで、今からこの三人が集結して、どんな興味深い話が
聞けるのか、どんな化学反応を起こすのか、興味津々です。

Posted by 花へんろ at 2012年08月14日 06:00 | 返信

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