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医師法21条
2012年09月19日(水)
しかし近年、病院内での死因が良く分からない死にも適応され、警察が病院に入る時代に。
医師法21条を巡るシンポが都内で開催された。以下、m3より引用させていただく。
医師法21条判決、マスコミも医療界も誤解
医学ジャーナリスト協会シンポ、女子医大事件の佐藤氏指摘
2012年9月16日 橋本佳子(m3.com編集長)
1999年に起きた都立広尾病院事件とは、点滴ルートをヘパリンロックする際、誤って外用消毒薬を静脈注射し、患者が死亡した事件。看護師2人が業務上過失致死罪で有罪、さらに担当医と院長は医師法21条違反などに問われ、担当医は2003年の東京高裁判決で、院長は2004年の最高裁判決でそれぞれ有罪が確定している。
佐藤氏は、まず「高裁判決のポイントは、一審判決を破棄したこと」と指摘。高裁判決では、地裁判決と同様に、院長と担当医を有罪としたものの、「原判決(一審)を破棄する」とした。佐藤氏は、高裁判決は医師法21条について、
(1)診療行為の「経過の異状」を認識しても届出義務はない、
(2)死体をじっくり見て、「外表面を検査(検案)して異状」を認識すると届出義務が発生する――と判断していると説明。
一審判決とは、検案の解釈や担当医が「検案して異状を認めた時期」の特定などの点で異なる。最高裁も高裁判決を支持、「医師法21条にいう死体の検案とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい、当該死体が自己の診療していた患者のものであるかは問わない」とされた。
佐藤氏は、「大半の医師が医師法21条を理解していない。そもそも21条には、『異状死』という言葉はない」と説明。医療界では、医師法21条の「異状死体等の届出義務」が刑事捜査の端緒となり得ることから、2004年の最高裁判決以降、“医療事故調”の議論が活発化した経緯があるが、佐藤氏の指摘に基づけば、「警察に代わる第三者機関を設置し、医師法21条を改正すべき」という主張は論理的ではないと言える。
さらに佐藤氏は、2003年の東京高裁判決時の新聞各紙の報道を、下記のように比較。高裁判決は前述のように一審判決と異なるものの、「一審判決と同じ」とした各紙は、「記事としては0点」と切り捨てた一方、東京新聞は「100点満点」とし、産経新聞も一定の評価ができるとした。
【都立広尾病院事件の高裁判決報道(2003年5月20日朝刊】(佐藤氏による)
・朝日新聞:「一審・東京地裁と同じく」
・毎日新聞:「一審と同じ」
・読売新聞:「一審・東京地裁判決と同じく」
・日経新聞:「ほぼ一審通りに認定し」
・産経新聞:「一審判決を破棄し、主治医が、容体の異状を発見した時期に ついて一審とは異なる判断をしたものの……」
・東京新聞:「一審東京地裁判決を破棄し、届出義務の発生時期を変更した上で、あらためて一審と同じ(懲役1年執行猶予3年、罰金2万円を言い渡した)」「法的な意味合いが不明確だった同法の『検案』について、中川裁判長は、『診療中であるか否かを問わず、死者の外表(裸体)を検査すること』と初めて定義づけた」
報道によって医療の密室の扉が開いた
15日のシンポジウムには、佐藤氏のほか、都立広尾病院の被害者の遺族であり、「医療の良心を守る市民の会」代表の永井裕之氏、朝日新聞編集委員の出河雅彦氏がシンポジストとして出席。
さらに、永井氏は2000年代前半をピークに、「医療事故」「医療ミス」関連の報道が減少しているというデータを引用。「医療事故報道については1999年のレベルにまで減ってきている。本当に事故が少なくなっているのか。メディアが委縮しているのではないか。医療安全・質向上のために、メディアは医療事故の深層を検証し、報道すべきである」と主張した。
出河氏は、自身の経験として、事故発生当初から判決に至るまでを継続して取材した福島県立大野病院事件と薬害エイズ事件という二つの記事を例に挙げて講演。県立大野病院事件では、2004年12月の事故発生の翌年3月に、県が事故調査報告書をまとめている。その後、担当医が業務上過失致死容疑で逮捕されたのは2006年2月。「報告書から約1年間、県は再発防止のためにどんな取り組みをしていたかなどはフォローしていなかった。県、メディアの両方に問題があったのではないか」(出河氏)。その上で、医療事故報道の在り方として、例えば抗がん剤の投与ミスや患者の取り違えなど、同様の事故が繰り返される現実を指摘。メディアは事故の発端だけを報道する傾向にあるが、事故発生の背景から再発防止策、事故が与える影響などに至るまで、継続的かつ多角的にフォローしていく必要性を強調した。写真朝日新聞編集委員の出河雅彦氏。
医療事故の報道の力を緩めるな
参加者も交えたディスカッションでは、医療報道の在り方にとどまらず、“医療事故調”や医療安全の問題など多岐にわたった。
「医療過誤原告の会」会長の宮脇正和氏は、「医療事故はそれまで隠されて
きたが、1999年の事件(横浜市立大学患者取り違え事件や都立広尾病事件など)をきっかけに明るみになるようになった。医療の安全と安心に果たす、マスコミの役割は大きい。しかし、県立大野病院事件以降、マスコミはトーンダウンし、今は地方紙で報道されるくらいで非常に少なくなっている。医療事故の報道の力を緩めないでほしい」との意見を述べた。その上で、(1)大手紙では若手記者が多く、勉強不足で、かつ継続的にかかわることが少ない、(2)日本医師会の医賠責の件数や支払額が公表されていないため、マスコミの力表に出し、医療事故の実態が分かるようにしてほしい、と要望。
これに対し、出河氏は、「報道が下火になっているのは事実だと思うが、発生する医療事故はそれほど変わらないだろう。新しいものに飛び付くのが報道の宿命であり、今は原発事故、地震や防災などが取り上げられ、結局、(医療事故については)何か大きなことが起きないと報道しない」と答え、「個人的には重大な医療事故は減っておらず、検察が起訴しなければならない事故も起きていると思う」と述べ、自身は継続的に取材していくとした。
佐藤氏は、「報道すれば医療事故が減るわけではない。報道の在り方の問題も大きい」と指摘。具体的には、(1)企業としてのメディアの特徴(活動の最大の動機は商業主義、野次馬根性、攻めやすいものや弱いものを対象とする、自浄作用なし、など)、(2)文筆業としてのメディアの特徴(事実と意見を混同して書く、事実を曲げて世論誘導する、情報操作、正確性より速報性優先、法にも医にも大雑把、事件記者の自然・人文科学手法欠如、記者クラブの弊害、整理部の見出しの付け方の問題、など)、(3)医療事故報道メディアの特徴
医療側の声を軽視するなど偏った取材と紙面、司法若手記者と医療部の連携
希薄、取材対象の専門家の選任能力の欠如、など)――という三つの特徴があるために、医療報道の問題が生じ得るとした。
そのほか、医療報道に関しては、「なぜ署名で記事を書かないのか。宅配便のドライバーも名前を出して仕事をしている。名前が出ることで責任感が生まれてくる」との質問も出された。医療ジャーナリス協会会長で、元読売新聞社会保障部長の水巻中正氏は、署名記事は毎日新聞では約20年前に開始したと説明、今では他紙でも解説記事は署名であり、「流れとしてはその方向に動いている」と回答。ただし、紙面が限られている中で紙面の文字が大きくなっている事情などもあり、「ベタ記事にまで署名を入れることは大変なこと」とした。
公開シンポジムには、100人以上が参加、約4時間にわたり開催された。
モデル事業の検証必要
“医療事故調”の関連では、佐藤氏は、「日本外科学会や日本内科学会などが、異状死を届け出なければいけないという判断になっている。都立広尾病院の判決内容がうまく伝わっていなからだろう。そのために、“医療事故調”の話になった」と見解を示した。さらに、「私の事件では、“院内事故調”に問題あった。事故が起きた時は、なるべくすぐに調査委員会を立ち上げた方がいい。A病院が設置し、B病院から医療の専門家、あるいは安全の専門家が入る形などが考えられる」と述べ、外部の専門家を入れた“院内事故調”でコンパクトかつ迅速な対応をする重要性を強調。
出河氏は、日本内科学会などが開始し、現在は日本医療安全調査機構が実施している「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」に言及、「調査は、院内を中心とするか、あるいは第三者機関かなど、着地点を見い出すためには。モデル事業は重要な経験であり、事業を検証する必要がある」と指摘。さらに県立大野病院事件では、警察の捜査の端緒になったとされる県の事故調査報告書は、福島県内の医療機関に勤務する産婦人科医が実施したことを挙げ、「医療行為をいかに評価するかは重要な問題になる」とつけ加えた。
なぜ医療事故は繰り返されるのか
医療安全についてはコーディネーターを務めた元朝日新聞編集委員の田辺功氏が、「報道されたり、刑事事件になっても、同じタイプの事件は何回も繰り返される」と問題提起。
佐藤氏は、「病院としては個人の責任にするのが楽」と述べ、病院の組織文化が背景にあると指摘。「医療事故の調査や再発防止策の検討は、医療界が責任を持ってやるべき。安全対策の専門家などと医師が手を組まないと、何回も同じ事件が起きる。単純ミスを刑事事件にしても、決して医療事故は減らない」とし、医療者だけでなく、工学関連の人材などとも協同して、ヒューマンエラーが起きないシステム作りなどを通じて医療安全対策を講じる必要性を強調した。
さらに、「安全のためのシステムを作るにはお金をかかる」とし、その財源確保も求められるとした。
永井氏も、「事故が起きると、個人責任にされてしまう。この懲罰的な風土が多くの医療機関に残っている」との見方を示した上で、「医療事故死の実態を明らかにして、それにどんなお金を付けていくべきかを考えるべき。しかし、実態を説明していないので、国民は反対する。交通事故死を明らかにして対策が講じられてきたのと同じように、事故を報告する仕組みを作り、事故を毎年少しずつ減らしていく努力を重ねるべき」と述べ、医療安全は精神論で解決できるものではなく、組織的、制度的に取り組む必要性を指摘した。
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この記事へのコメント
私は医療関係者ではありませんが、都立広尾病院事件は、患者さんにとっても、看護婦さんや、病院関係者にとっても、悲劇ですね。
看護婦さんも、激務でお疲れだったんでしょうし、原因を明確にして、二度と無いようにしたいです。
少し、レベルは違いますが、私もリウマチの患者さんを10年以上治療していて、細い日本針を切針してしまいました。直ぐに全ての針を抜いて、折針してしまった由を告知しました。患者さんは、主治医に相談して、X-pを撮りましたが何も映って無いので、大丈夫だと主治医が仰って下さったので、助かりました。
しかし、業界の鍼灸師会の会長にその旨を報告したら、大変叱られました。
その頃はまだディスポーザブルでは無かったので、同じ患者の針を何度も使っていたので、折れたのだと思います。
逆に、父がMRSAで死んだ時は保険所に、相談に行きました。
MRSAに関しては、十年以上前から、富家恵美子氏が河出書房から「院内感染」と言う本でを出版されて、夫の聖心女子大教授がMRSAで苦しんで亡くなったのは、抗生物質の第三世代系セフェムを過量に使いすぎるからだと、告発していらっしゃったので、やはり、他の、老人や手術で体力の弱った若い人でも、感染してしまうのではないかと思って保険所に、相談しました。
どちらの話も、私にとっては恥ずかしい話ですが、届け出ることで、公に討論されて、二度と起こらないように、したかったからです。
Posted by 大谷佳子 at 2012年09月20日 03:57 | 返信
病院内の、医療事故検討会議はERで、何回もやられていましたが、自分の身に起きうる状況と、思うと、息が詰まるシーンでした。
病院長アンスポーの号令で、開催されて、日頃、面白く思ってない同僚からも、厳しい意見が出て、暗い気持ちになるが、また慰めてくれる上司もいて、そのうち、憎っくき、喧嘩相手も失敗して、会議に掛けられる。
誰にでも起きる、医療事故と言う事でしょうか。
あんな、カウンター州立病院は、アメリカでも、本当は存在しない、絵に描いた餅、「キャメロット」なんでしょうか?
マイケル.クライトンも、亡くなった事ですし。
戦前の日本の医師はドイツに留学したけど、戦後はアメリカに留学する医師が多いので、
今は戦前のドイツ流と戦後のアメリカ流のチームワーク医療の混合医療で、混乱していると聞いた事がありますけど、ホントですか?
ドイツ流の(医師を頂点とした、ピラミッド体制)の方が、良いと言う、医療関係者も多いでしょうね?
でも、患者はピラミッドの中に入れて貰えないので、警察とか、弁護士に走ってしまうのでは、無いでしょうか?
弁護士は「民事訴訟で、慰謝料請求しないと、事件の全容が解明されない」とアドヴァイスするでしょう。違っていたら、ごめんなさい。
Posted by 大谷佳子 at 2012年09月23日 01:10 | 返信
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