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抗がん剤はギャンブル?
2013年01月13日(日)
昨日の産経新聞兵庫版には、そんなことを書いた。
抗がん剤シリーズ第7話を、転載させていただく。
産経新聞抗がん剤シリーズ第7回 抗がん剤の効果予測
ギャンブルに似て、確率の世界
謹賀新年。今年もよろしくお願いします。抗がん剤治療には標準治療と、オーダーメイド治療があります。抗がん剤の効果や難儀な副作用の程度は、がん組織の遺伝子や患者個人の遺伝子である程度予測できます。転移・再発までもそれを司るがん組織の遺伝子異常ある程度予測できる時代です。ただしそれには膨大なお金や手間暇がかかります。保険診療の範囲内ではできないことが多く自費での検査になるので、あまり積極的には行われていません。全員をオーダーメード治療にするには、検査にコストがかかり過ぎるのです。
ではお金と手間暇の話は横に置いておいて、仮に純粋にがん組織の遺伝子異常と患者さん個人の遺伝子情報が分かったとしましょう。そうすれば、抗がん剤の効き易さや副作用の出方を完全に予測できるのでしょうか。答えは残念ながら、ノーです。効く確率や副作用の確率の予測精度は、ある程度高まります。しかし100%正確に予想できるわけではありません。しかしあくまで、確率の問題です。私はよく「抗がん剤治療は宝くじ」とか、「競馬と似ている」と患者さんに説明しています。
何故か1億円の大当たりが出やすい売り場は予め分かっています。一方、抗がん剤治療も実際にやってみないと効果は分かりません。効くと思っていたのに効かなかったり、その反対だったりします。大昔、抗がん剤の専門家に言われた言葉が忘れられません。「抗がん剤治療は、宝くじのようなものだよ。時々、大当たりがあるんだ」と。私は聞き返してみました。「どれくらいの確率で、当たるのですか?」と。「さあ、10人に1人当たればいい方じゃないか」と。「まるでギャンブルだな」。そう思いましたが言い返せませんでした。「でも当たった時は快感だよ。それが忘れられないので、また買ってしまうんだよ」とも。買って大当たりしたひとが、また当たることはあるかもしれません。しかし3回続くことは難しいでしょう。抗がん剤が効き易いといってもいつまでも効く訳ではありません。耐性が出来てそのうち効きにくくなれば、お薬を変えることになります。一方、宝くじは、買わないと絶対に当たりません。ただし買うか買わないかは、あくまで自由。買わないで後悔するくらいなら、一度買ってみればいいのです。もしハズレだったら、そこで買うのを止めればいいだけ。抗がん剤治療も同じことではないでしょうか。
競馬には、オッズがあります。どの馬が勝ちそうかある程度予測できます。大本命なのにハズレもあれば、大穴の馬が来て万馬券になることもあります。本命狙いのひとや大穴狙いのひとがいます。宝くじに比べたら、競馬のほうが事前予測が可能です。さて、抗がん剤治療は、競馬ともどこか似ているような気がします。情報を分析することで事前にある程度、効果が予測できるのです。ただしあくまで確率の問題なので、外れることも多々あります。競馬は当てたいひとだけが参加します。万馬券を当てても1回きりで止めておく手もあります。ちょっと不謹慎な喩えだとお叱りを受けるかもしれません。しかし抗がん剤が効くかどうかが不安だと相談に来られる人には、宝くじや競馬の話をしますが、妙に納得されるのです。
キーワード オーダーメード治療
がん組織の遺伝子異常を調べることで治療効果がより期待できる抗がん剤を選ぶことができる。たとえばHer2陽性の乳がんにはハーセプチンを使うなど、標準治療からオーダーメード治療に変わりつつある。
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この記事へのコメント
お仕事お疲れ様です。
先日、はがきで申し込んだ本が当選して届きました。去年の暮は仕事中の突然死に2度も当たり、宝くじにはハズレさんざんでしたが、年明けそうそう先生の本が届き、今年は良い年になる?ような気がします。毎日のブログを読んでいなかったので気付かずで申し訳ありません。
お体に気をつけて在宅の支援よろしくお願いします。訪問看護師にも!
ちなみに、住所が宮の浜ではなく宮の沢でした、無事届いてよかったです。私の字が読めなくてすみませんでした、、、遅くなりましたがありがとうございます。この本をよんで、ハッピ-な胃ろうか自然にまかせるか、ご家族やご本人が選択できるように支援していけるようかかわって行きたいとと思います。
Posted by 牧 佳代子 at 2013年01月13日 01:14 | 返信
抗がん剤シリーズも、拝見しています。
がん治療は複雑ですね。
医師によって、内科・外科・放射線科によっても、考え方も違うと思います。
遺伝子を調べる方法がオーダーメイドなのですね。勉強になります。
私の親は肺がんで休眠治療をお願いしています。
抗がん剤は少量で体が副作用を感じない程度のシスプラチンを点滴。その他にTS-1を基準値内において、自己が飲める範囲で。
標準的治療のように、副作用に耐えながら受ける最大量ほど多くは使用しないので、治療費は抑えられます。
それでも、抗がん剤は高額です。この先、もし、分子薬などを使うとなれば更に高額です。残念ながら現在は、エビデンスがないということで、多くの病院でされている治療ではないため、通院費が別途かかります。
何をしても、がん治療にはお金がかかりますね。
「がんで死ぬとは限らない」には、本当にそうだなぁと納得しています。
高齢者である私の親は、がんを通じ、様々な合併症を持っていることを改めて知りました。
親の介護を通じ、医療について勉強をすることとなりました。
循環器から始まり、がん、そして痴呆。 薬と共にお医者様のことも。これらは、親ががんにならなければ学ぼうともしなかったでしょう。
平穏死についても、考えるようになりました。
けれど、それは今の治療段階ではダメなのか? 今からできることもあるのか? 今は副作用を感じずに普通の生活をしているのに、それを全て止めないといけないのか? など心が揺れます。
親にとって、そして残される私たちにとって、一歩づつですが考えてゆきたいと思います。
Posted by よしみ at 2013年01月17日 11:24 | 返信
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