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抗がん剤の止めどき

2013年02月26日(火)

2月23日の産経新聞の抗がん剤シリーズ第13回からの転載。
抗がん剤の止めどき、について書きました。
始めるのは簡単だけど、止めどきが難しい。
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産経新聞抗がん剤シリーズ第13回  抗がん剤の止めどき 

                  中止後も仕事を継続

 

抗がん剤の「止めどき」ほど難しいものはないと思います。Aさん(58歳、男性)は呼吸困難を訴え病院を受診。精査の結果、Ⅳ期(一番進行した)の肺がんと診断されました。一年間に三回の抗がん剤治療の入院を繰り返しました。Aさんは特別養護老人ホームの介護士でした。リーダーとして活躍していました。しかし職場の仲間には病気を隠して、仕事を続けていました。ある日、Aさんが私の外来を受診されました。「抗がん剤治療を止めたい」との相談でした。「もう疲れたし、薬が効かない」とのこと。レントゲンを撮ると片方は真っ白でもう片方も半分真白でした。白とは、胸水が貯まっていることを意味します。呼吸している肺の面積は、わずか4分の1程度。しかしAさんの顔色は、どう見ても健康的でとても病人に見えません。息切れも無くて、レントゲンの所見と合わないのが不思議でした。自転車と電車を乗り継いで遠くの職場に、いつもと変わらず通勤されていました。しかし1年以上抗がん剤治療を受けても、大量の胸水が貯まり腫瘍マーカーの上昇が激しいので、ついに合がん剤治療の中止を自己決定されたのです。


 「病院の先生は抗がん剤を続けろって言われて・・・」そう切り出されて、返事に迷いました。もともと顔見知りだったこともあり「止めてもいいじゃないかな」と即答しました。翌日、再び現れたAさんは「今、止めてきました!」と。仕事を止めたのかと思いきや、抗がん剤治療を止めたのでした。「治療を止めたので、もう病院に行く必要がなくなった」と大きな声で本当に晴々した笑顔を見せてくれました。しかし「これで思う存分、仕事に専念できるぞ」との言葉に、驚きました。余命はそう長くないだろうから、療養生活に専念されるのかと思っていました。しかしAさんは特養での介護の仕事を、夜勤も含めて続けられました。私は「もう3ケ月ももたないな」、と感じていました。


 夏に始まったAさんとのご縁は、せいぜい年内だと思っていました。しかし年末になっても元気なので当院の忘年会にAさんを招待しました。最期のクリスマスになるであろうことは、Aさん自身もよく分かっていました。通常、忘年会に患者さんを招待することはあまり無いでしょう。私や職員の宴会芸を見せると、信頼を失うかもしれないからです。しかしAさんは末期がんなので、まあいいや、と思い招待ました。旅立つ前に思いきり笑わしてやろう、とスタッフも願いました。この世での最期のお酒を飲み交わしました。


 しかし年が明けても、Aさんは介護士として働き続けました。腫瘍マーカーは毎月倍々のペースで上昇しても、元気に夜勤もこなしていました。それでも職場の仲間には、病気のことは全く隠しているとのこと。自分より長生きする入所者さんの介護を楽しんでいました。「仕事しているほうが、精神的にも楽」とのこと。毎月検査しましたが、肺がんはますます進行し医学的には間違いなく末期がん。しかしAさんは「がんと仲良く付き合います」と笑うばかり。3月になると、さすがに息切れが強くなってきました。通勤が難しくなり、退職の決意をされました。そのころから、往診での点滴を頼まれることが増えました。(続く)

 

キーワード 肺がん

がんは日本人の死亡原因の第一位。がんの中では肺がんが一番多い。腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種のがんの総称。手術、抗がん剤、放射線の治療が行われる。

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