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関係性の反撃
2013年05月13日(月)
「関係性の反撃」について書いた。
つまり物とられ妄想にどう対応すればいいのかということだ。
産経新聞認知症ケアシリーズ第8回 関係性の反撃とは?
被害妄想や嫉妬妄想への対応
不思議なものです。高齢女性が認知症になると「嫁が財布を取った!」と必ず言います。こうした「もの取られ妄想」に代表される被害妄想は、それだけで認知症だと分かるくらいです。嫁はそんな姑を「あなた、あんなお母さん早く施設に入れて!」と泣き叫び、夫は戸惑います。町医者をしているとその仲介に入る羽目になることが時にあります。施設では、熱心な介護職員ほど泥棒にされます。しかし男性認知症でそんなことを言った人は見たことがありません。認知症の男性は「妻が俺に見えないところで浮気をしている」などと言います。これは嫉妬妄想です。実は被害妄想も嫉妬妄想も認知症の根幹に関わる言動です。私たちはそうした妄想をどう考えればいいのでしょうか?またそんな時、どう対応すればいいのでしょうか?
まず「もの取られ妄想」に隠された3つの背景を知りましょう。1)近い記憶が失われて、最も身近なひとを犯人と思い込む。2)年下の家族の世話になるという屈辱、不安、反発。3)周囲が認知症の人が置かれている状況を理解しないまま対応することの間違い。
もの取られ妄想は、自立して頑張ってきた人、他人に依存する状況を強く意識する人が陥り易いようです。実はこれらの妄想の裏は「介護されている自分を否定したい」気持ちなのです。妄想とは、「関係性を逆転しようとする試み」なのです。「関係性の反撃」とも言います。そして介護する人が妻であった場合、嫉妬妄想となります。閉鎖的な空間で妻が献身的に介護している場合に、そのような言葉が出やすいのです。
被害妄想や嫉妬妄想への対処法を考えてみましょう。「勘違いだよ」、「盗むわけないじゃないか」といくら説明しても納得は得られません。実は、「世話になっている」という負い目が相手を加害者に仕立てる妄想の引き金になっています。そのような場合、その高齢者から何かを教わる、という態度が大切です。たとえば、カラオケや将棋の先生になってもらうのです。「自分も他人のお世話をしている、対等な人間関係の中で生活している」と実感できれば、妄想は一挙に軽減します。また大切な物の保管場所を決めて、目立つ名札を貼っておくのも一考でしょう。盗まれたという言葉に対してすぐに否定しても全く意味がありません。「本当に無いか、一緒に探しに行きましょうね」というと安心感を持っていただけます。すなわち「否定」ではなく、「共感」する態度が最も大切なのです。本人の主体性を重く扱い、自信を回復させることが肝要です。
また介護を一人で抱え込まないことも大切です。そのためデイサービスやデイケアなどを上手に利用することも大切。介護をしている配偶者から見えない人間関係を作ってあげることです。在宅介護では、いわゆる「抱え込み」が時々見られます。人間関係を決して閉鎖的にせず、外に開くことが大切です。妄想は、一見困ったものかもしれません。しかし、本人は妄想自体を忘れてしまい、根に持ち得ません。また心の奥底で「あれ?何か違うかな?」と思っているので、何かのきっかけで好転します。言われた嫁の方も、濡れ絹を決して根に持ってはいけません。
キーワード デイサービス、デイケア
デイサービス=通所介護、デイケア=通所リハビリテーションのこと。昼間に日帰りで利用する。通所介護の場合、社会的な交流や家族負担の軽減が主で、通所リハは、身体機能や日常生活の維持、回復が主である。
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この記事へのコメント
一か月ほど前の正常圧水頭症の検査と、治療をめぐって、行き違いになって以来、ブサイク顔だった母が、89歳の誕生日に、好きなウニを食べ過ぎて、ひどい下痢状態になったので、半年ぶりにお風呂に入らざるを得なくなった。風呂場の中で、後ろに転倒したことで、私が初めて、お風呂介助することになった。ロードオブリングスの中にゴクリというのか、スメルアゴンとか言う、ちいさな怪物みたいに、ガリガリに痩せた、母の身体に「ほんまになあ...。」とため息が出る。
しかし、風呂桶に浸かると、「しんどい、疲れた」と言いながら、「久しぶりやな、お風呂に入れてもろて良かった」と御機嫌が直って驚く。
「お風呂に入れるのも、これが最後かもわからん」と言う。
この2~3週間で、一段と認知症の症状が悪化した。
しかし、お風呂から出て、「しんどい、しんどい」と言いながら、何とか、服を着て、朝ごはんを食べると、昨夜までの、錯乱状態が、嘘のように、改善している。
夕方、おそうめんの中に入れる、天ぷらを揚げていると、バタっと大きな音がして、母がテーブルの横に倒れている。あんまり、掃除もせず、ごちゃごちゃと、物を置いているのが、仇になって、転倒したらしい。こける事は一番怖いと思いながら、掃除してなかったなあと思う。
せっかく、作った、ニュウ麺も、痛そうで、なかなか食べてくれない。
でも、食べ終わると、二階へ行って、繕い物をしているので、どうなんだろうと心配する。どうせ、整形外科には面倒だから、行かないだろう。
ホントに、今日は御機嫌は治ったのに、二度も転倒して、色んな事があった。
Posted by 大谷佳子 at 2013年05月14日 02:58 | 返信
私の父もお金や通帳などが「なくなった。消えてしまった」と年中不安感を
クチにしていた人でした。本人にしてみれば「本当に無くなっている」
と思っているのですから不安の強さ、ストレスは相当な物だと思います。
私は封筒に入れた少額のダミーのお金をあちこちに隠しておきました。
お話しのように「どこにいっちゃったんやろー。一緒に探そうかー。私は
こっち探すからお父さんは引き出しの中とか見てくれる?」そんな会話をします。
そう、その引き出しにお金入りの封筒を隠しているのです。
自分で見つけて納得することが一番大事だと思っていましたし、父もお金を手に
してとてもほっとした顔をしたものでした。身近で介護していて泥棒扱いされるのは
本当に辛く、屈辱的な気持ちになることもあると思いますが、疑われるのは信頼への
裏返しです。認知症の人は手を上げることもありますし、汚い言葉でなじったり
することもあります。でもきっと心の中では「ごめんね」と涙を流していると私は
父を見てそう思っていました。脳に病変が起きて人を不快にさせる行動をしてしまうけど
その人が持つ心は、きっと変わらないと信じています。ありがとう、ごめんね、ときっと
心を傷めながら手を合わせていると思います。
現在、辛い立場で介護されているお嫁さんやご家族。皆さん本当にご苦労様です。
心壊れそうな日もたくさんあると思いますが、どうぞ抱え込まない介護、また先生のブログで
たくさん情報を頂いて少しでも肩の力の抜けた介護がいつもそこにありますようにと
お祈りしています。
Posted by ちろる at 2013年05月14日 06:15 | 返信
年をとると、寂しくなるんですかね。
なんか、絡んできます。
「あの猫が、あんたのボーイフレンドか?」って聞くんで、「あの猫はメス猫です!」っていってやりました。
自立しない人って、私ほんとに、やになります。
私も死にかけたら、ヘルパーさんに、甘えて、嫌味の一つ、言って、嫌がられてるのかな?
困ったもんです。
でも、母が死んだら、一人ぼっちなんです。
Posted by 大谷佳子 at 2013年05月16日 11:00 | 返信
はじめまして。
妻が他の男と浮気しているなどという妄想に共感などできないのですが…
そのように責めたてられた時はどう言えばいいんでしょうか?
そういう時はこちら側の心の余裕がありません。
否定するくらいならその場を離れた方がいいのかな
Posted by ケイ at 2013年06月30日 01:26 | 返信
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