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人間とは「考える管」である
2014年11月16日(日)
産経新聞兵庫版の連載には「人間とは考える管である」と書いた。
胃腸は内臓ではなく、外部である。
そこに棲む1000兆個の細菌は、もう一人の自分である、と。
胃腸は内臓ではなく、外部である。
そこに棲む1000兆個の細菌は、もう一人の自分である、と。
産経新聞・腸と心シリーズ第5話 人間とは「考える管」である
肥満も動脈硬化も腸内細菌叢のせい?
私は胃腸病の専門医ですが、そもそも胃や腸は内臓でしょうか?私はずっと内臓だと思っていました。お腹の上から触るとたしかに腹壁の内部に位置しています。しかし口から肛門は、間違いなく一本の連続した管です。口から挿入した胃カメラと肛門から挿入した大腸カメラは、小腸内で“お見合い”をすることができます。分子生物学者の福岡伸一氏は、「人間はチクワ」であると言います。なるほど、胃や腸はチクワの穴の表面で、外の皮とつながっています。だから胃腸の中とは「身体の外」だそうです。いつしか私も「人間とは考える管である」と認識するようになりました。その管の役割といえば「消化」と「吸収」。食べたものは胃腸で消化された後に小腸粘膜から吸収されて初めて“体内に入った”と言えるのです。
消化とは、食べ物をバラバラの最小単位に切り刻むこと。そうしないと小腸粘膜から吸収できません。炭水化物はブドウ糖に、蛋白質はアミノ酸へと最小単位に分解されてはじめて吸収可能となる。よくコラーゲンやグルコサミンを飲んで肌や膝にそれが直接届くと信じておられる方がいますが、そんなことはあり得ません。頭が悪いからとサルの脳ミソを沢山食べたら頭が良くなるのでしょうか?食べ物は大きな分子のまま小腸粘膜から吸収されることはありません。いったんバラバラの最小型に分解されてから吸収され、肝臓等の臓器で再びその破片から大きな分子(コラーゲンなど)が造られるのです。そしてその総和が私たちそのものです。すなわち「汝とは汝の食べた物」です。我々の皮膚も臓器も血液も、すべて我々が口から食べた物によって成り立っているのです。
さて、糖尿病や高血圧が続くと動脈硬化が起きて心筋梗塞や脳梗塞に至ります。実は、その動脈硬化と腸内細菌叢が密接に関係しているデータが2011年にネイチャー誌に発表されました。高脂肪食を与えると動脈硬化になりますが、腸内細菌叢の違いによって動脈へのプラークの付着度が違うのです。また別の研究ではアフリカ原住民とイタリアの都市生活者の腸内細菌叢が比較されました。アフリカ原住民の子供の腸内細菌叢は細菌の種類が多くて、善玉菌優位でした。
動物実験でも太ったマウスから採取した腸内細菌叢を別のマウスに植え付けると、同じ量の餌を食べていても肥満になりやすいことが分っています。肥満の人が持つ腸内細菌艘は少し食べただけでも、ますます人を太らせる効果があります。昔からヤゼの大食いという言葉がありますが、全く同じものを食べても、太る人がいれば痩せる人もいます。それは、それぞれの腸内細菌叢が違うためです。もしいい腸内細菌叢を確保できれば、太ることはありません。そればかりか、がんやアレルギーのリスクを大きく減らすこともできます。
いい腸内細菌叢さえあれば、腸に入ってきた食事は消化酵素で切り刻まれたあと、必要なものだけ効率よく体内に取り込みます。また消化管からセロトニンをはじめ様々な“消化管ホルモン”がバランス良く放出され、不安やうつ症状も改善します。人間は感情の動物です。その感情をコントロールしているのが腸内細菌叢。そう、脳は常に腸の支配下にあるのです。
キーワード 腸内細菌叢
ヒトの腸管内には3万種類、総数1千兆個にも及ぶ腸内細菌が共存し、腸管免疫系を制御している。生まれた直後の腸内は無菌だが、食物、免疫系、環境などの影響を受けながら、ある一定の腸内細菌叢を形成していく。
肥満も動脈硬化も腸内細菌叢のせい?
私は胃腸病の専門医ですが、そもそも胃や腸は内臓でしょうか?私はずっと内臓だと思っていました。お腹の上から触るとたしかに腹壁の内部に位置しています。しかし口から肛門は、間違いなく一本の連続した管です。口から挿入した胃カメラと肛門から挿入した大腸カメラは、小腸内で“お見合い”をすることができます。分子生物学者の福岡伸一氏は、「人間はチクワ」であると言います。なるほど、胃や腸はチクワの穴の表面で、外の皮とつながっています。だから胃腸の中とは「身体の外」だそうです。いつしか私も「人間とは考える管である」と認識するようになりました。その管の役割といえば「消化」と「吸収」。食べたものは胃腸で消化された後に小腸粘膜から吸収されて初めて“体内に入った”と言えるのです。
消化とは、食べ物をバラバラの最小単位に切り刻むこと。そうしないと小腸粘膜から吸収できません。炭水化物はブドウ糖に、蛋白質はアミノ酸へと最小単位に分解されてはじめて吸収可能となる。よくコラーゲンやグルコサミンを飲んで肌や膝にそれが直接届くと信じておられる方がいますが、そんなことはあり得ません。頭が悪いからとサルの脳ミソを沢山食べたら頭が良くなるのでしょうか?食べ物は大きな分子のまま小腸粘膜から吸収されることはありません。いったんバラバラの最小型に分解されてから吸収され、肝臓等の臓器で再びその破片から大きな分子(コラーゲンなど)が造られるのです。そしてその総和が私たちそのものです。すなわち「汝とは汝の食べた物」です。我々の皮膚も臓器も血液も、すべて我々が口から食べた物によって成り立っているのです。
さて、糖尿病や高血圧が続くと動脈硬化が起きて心筋梗塞や脳梗塞に至ります。実は、その動脈硬化と腸内細菌叢が密接に関係しているデータが2011年にネイチャー誌に発表されました。高脂肪食を与えると動脈硬化になりますが、腸内細菌叢の違いによって動脈へのプラークの付着度が違うのです。また別の研究ではアフリカ原住民とイタリアの都市生活者の腸内細菌叢が比較されました。アフリカ原住民の子供の腸内細菌叢は細菌の種類が多くて、善玉菌優位でした。
動物実験でも太ったマウスから採取した腸内細菌叢を別のマウスに植え付けると、同じ量の餌を食べていても肥満になりやすいことが分っています。肥満の人が持つ腸内細菌艘は少し食べただけでも、ますます人を太らせる効果があります。昔からヤゼの大食いという言葉がありますが、全く同じものを食べても、太る人がいれば痩せる人もいます。それは、それぞれの腸内細菌叢が違うためです。もしいい腸内細菌叢を確保できれば、太ることはありません。そればかりか、がんやアレルギーのリスクを大きく減らすこともできます。
いい腸内細菌叢さえあれば、腸に入ってきた食事は消化酵素で切り刻まれたあと、必要なものだけ効率よく体内に取り込みます。また消化管からセロトニンをはじめ様々な“消化管ホルモン”がバランス良く放出され、不安やうつ症状も改善します。人間は感情の動物です。その感情をコントロールしているのが腸内細菌叢。そう、脳は常に腸の支配下にあるのです。
キーワード 腸内細菌叢
ヒトの腸管内には3万種類、総数1千兆個にも及ぶ腸内細菌が共存し、腸管免疫系を制御している。生まれた直後の腸内は無菌だが、食物、免疫系、環境などの影響を受けながら、ある一定の腸内細菌叢を形成していく。
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