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アリセプト23mgって何?

2018年02月02日(金)

抗認知症薬であるアリセプトは日本では10mgまでしか処方できない。
しかし23mgの治験の依頼をされた家族がいて、怒りを語ってくれた。
そもそもどんな理屈でそんなことになるのか、広く知っておいて欲しい。→こちら
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以下は5年前の出来事であるが、私の患者さんの話は3年前だから最近だ。
先週の日比谷の会でも述べたが、現在も過剰処方に苦しむ患者が絶えない。

どんな理屈で、どんなエビデンスでそんなことになるのか・・・
知りたい人は3月25日の品川のホテルでの研究会に来て下さい。→こちら

今後のこともあるのでみなさまと共に振り返っておきたい。

三俣さんのFBからの転載。
FDAの疑惑は日本に波及。


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BMJ電子版2012年3月22日

 パブリックシチズンは、2012年9月、アリセプトの販売停止を要請したにもかかわらず、これを怠ったとして、FDAを相手に訴訟を提起した。アリセプトの問題は、以前から指摘されていた。

 アリセプトは、エーザイが開発したアルツハイマーの治療薬である。アリセプト23mgはFDAが承認し、アジア・南アメリカの16カ国が承認するか承認を検討している。日本では申請中である。BMJ電子版に、米国のヘルスポリシーと実地臨床に関心を持つ医師たちが、「どのようにFDAはエビデンスを忘れたのか:ドネペジル(アリセプトの一般名)23mgのケース」を掲載している。

 アリセプト23mgはアリセプト5、10mgの特許がきれる4か月前にFDAが承認し、特許は事実上3年間延長された。23mgという半端な数はアリセプトのジェネリック医薬品を意識したものである。アリセプトの承認書類を調べると、アリセプトは、認知はわずかながら有意に改善を示しているが、全般機能改善は有意でなかった。これがFDAの承認基準に違反しているばかりか、アリセプト23mgが「認知機能と全般機能の両評価において重要な臨床的有益性がある」、という間違った情報を太字で強調した医師向け広告を承認している。その同じ広告の太字でないところには、「全般機能の改善は有意でなかった」と書いてあるというのに。エーザイはFDAの広告文書の見落としを最大限に活用したのだ。以下はその要約である。
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アルツハイマー病の治療薬アリセプトは米国だけで年間20億ドルを売り上げる大ヒット商品だ。2010年11月で特許切れだったが、そのわずか4ケ月前に米国FDAは中等症から重症のアルツハイマーに対する新用量23mgを承認した。ジェネリックの5mgと10mgでは組み合わせようのない「新しい」23mg製剤が、あと3年特許を守ることになる。

 アリセプト23mgの販売戦略は、教育看護師チームを通じて、神経科の医師に、アルツハイマー患者の病状は安定していないから積極的な治療が必要だという考えを植えつけさせて、長期ケアに高用量を使うよう勧めることだ。

 しかし、販売者に不都合な事実がいくつかある。アルツハイマー薬の承認には、認知機能と全般機能評価の両方での優越性が必要であるが、アリセプト23mgは、このFDAの承認基準に違反していた。1400例以上の承認試験で、認知のわずかな有意差があったが全般機能では統計的有意差がなかった。さらに問題なのは吐き気、嘔吐を含む副作用だ。10mgに比べて有意な罹病率や死亡率の増加につながりかねない有害事象が明らかに増加した。

 なのに承認されたのはなぜか。FDAの部局長は、自分の見る限り、スタディで直接的には示されなかったが、全般機能に関しての効果はあるし、製薬会社がそれを示してくれると信じている。自分は承認するつもりだと述べていたのだ。

 追加の有益性のない製品をいかにして売るのだろうか。製薬会社はアリセプト23mgの直接患者に向けた大キャンペーンを開始した。広告やウェブサイトは、アルツハイマーの配偶者や親をもつ人々の愛情に強力に訴え、医師に処方を頼むようしむける。広告には、薬が認知障害の症状を改善するが全般機能は改善しないと書かれているが、なぜそれが問題かは説明されていない。また副作用がより多いと警告するが、その頻度や重大性については触れず、しばらく服用すればよくなると書かれている。

 医師向けの広告はもっとひどい。大きなフォントで、驚くべき間違ったことが書かれている。アリセプト23mg服用者は、認知と全般機能の両方の指標で重要な臨床的有用性があったとあり、小さい文字で全般機能において統計的有意な結果を示さなかったと書いてある。

 FDAの規定では、広告は事実かつ誤解させないものでなければならず、FDAが承認した添付文書の範囲でしか作成できないのだが、ぞっとするような間違った記述が広告にかかれている。添付文書の矛盾をFDAが見落とし、販売会社エーザイはFDAが見落とした重大な矛盾の部分を強調表示したのだ。われわれの通報でFDAは添付文書を吟味し、最初の承認から1年半以上たった2012年3月1日にようやくその記載が削除された。

 承認された-そして著名な米国の消費者保護グループパブリックシティズンが市場撤退すべきと要求した(※1)にも関わらず、市場にまだある-のは残念なことだ。薬についての不完全でゆがんだメッセージは憂えることだと、医者と患者に伝えるのは簡単なことだ。よい決断のために必要なエビデンスを、彼らに与えることをFDAは忘れるべきでない。

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エーザイによると、2011年度の米国でのアリセプト23mgの売り上げは5100万米ドルでジェネリック発売による10億ドルを越える売り上げ減の補填には到底なっていない。23mg製剤は日本でも開発中だが、高度アルツハイマー型認知症に対する特許が切れる2013年6月までに何等かの動きがあるのだろうか。また高用量製剤だけでなく、ドライシロップ製剤や経皮吸収製剤(パッチ)などの新剤型開発、レビー小体認知症への効能追加なども進められており、今後拡販を強めることだろう。FDAも厚労省も、承認ありきの審査ではなく、厳格な審査を望みたいものだ。(N) 

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この記事へのコメント

自分の経験なのだが、実父と舅が心筋梗塞で亡くなった。双方ともアルツハイマー症と診断されていた。
どちらも一般的な健康診断(循環器)はきちんと受けていたし、舅に至っては、以前に動脈瘤をやったことも有り、気をつけていたはずだった。
舅の心筋梗塞が起こったとき、医師からは、既に2カ所の梗塞が有り、一カ所はバルーンを入れたが、もう一カ所は古いので、ダメだったと言われた。
そのとき気がついたのは、5年ほど前から、舅は歩行がしづらくなり、すぐに息が切れるようになったこと。認知症もその頃から徐々に始まった事。
次に、症状が悪くなったとき、ブドウ糖の点滴をしてもらったら、それまでぼうっとしていたのが、元気に話し出したこと。明らかに明晰に語り出したこと。
さらに、偶然に心臓の専門医の検診を主人が受けたとき、病院の掲示の中にあった言葉で、「下肢が紫色になっていたら要注意」というのがあった事。
この症状は明らかに実父に出ていたし、舅も実父ほどではないが出ていた。

アルツハイマー症事態が脳の血行障害によって促進されるのだろうけれども、そもそも血行が悪ければ、老人は認知症状を起こすのではないかと思う。それは心臓の障害によって起こる場合も少なからずあるだろう。
専門医に聞くと、心臓の血管の梗塞は、通常の循環器の検査では出なくても、造影剤を入れてCTで心臓を撮影するとわかるそうだ。実際実父も、舅も、循環器の専門医に診てもらっていたのに、全くわからなかった。普通の病院の普通の検査(心電図)などではダメなのだ。

つらつらと思い起こすと、2人の父のアルツハイマー症は、本当にアルツハイマーだったのか。それとも心臓の血管による血行障害だったのか。
ちなみに、老人性痴呆症は、脳の血管そのものの障害を見るためにMRIなどを撮るが、そのとき心臓の検査はしない。そして、脳に障害がなく、痴呆症状が出ていれば、(そして顕著に他の症状がなければ)全部アルツハイマーになってしまうらしい。
少なくともそこで心臓疾患は調べない。

もしかしたら、心臓からから来ている痴呆症が意外に多いのかもしれない。
で、アルツハイマーの薬であるアリセプトだが、心臓に障害を起こしやすい。2人の父は双方これを飲んでいた。
ちなみに実父は飲み始めて2ヶ月で亡くなり、舅は飲み始めて1年で、胃腸障害が起き、食が細くなって、痴呆症状が進んだ。それで、アリセプトの服用をやめたら、食事が取れるようになり、痴呆症状も回復傾向にあった。

アリセプトはまるでアルツハイマー治療の切り札のように言われるが、本当だろうか。

Posted by 匿名 at 2018年02月04日 04:33 | 返信

医薬品と保険と投資は誇大広告がものすごく多いですよね。利益はでっかい字で大げさに強調するけれど、副作用や損失については、拡大鏡を使わないと読めないくらい小さい文字でちょこっと書いてある。
それ以前に、高齢者は自分で考え自分で判断しようとしないから、説明分を読まないことが多い。
最近思うに、本人の自己責任というのは、やはりあるのではないか、と。
あ、そうじゃないです。
「自分で考えても無駄よ」「自分で判断なんてできないでしょ」、「エライ人たちの言う通りにしなさい」と教え込まれてきた日本人に、自己責任を問うべきではないです。
「自分で考え自分で判断できない国民」を育て上げた日本という国家の責任です。
「自分で考え自分で判断できない国民」ゆえに、医療崇拝者となるのです。「医者のやることだから口出しできないよ・・・」
かくして____
( ^)o(^ )゛「お医者様の言う通りにしましょう!!」
お医者さまの言う通りに酸素マスクをつけてベッドに縛り付けてもらってお腹に穴をあけてもらって栄養剤を入れてもらってついでにクスリも流し込んでもらって悶え苦しみながら長生きしましょうね★☆☆彡♪(^_-)-☆自分の意思表示なんか、必要ありませんよ。日本人とはそういうものですからね⋈◍>◡<◍^^♪⋈

Posted by 匿名 at 2018年02月05日 03:23 | 返信

家族が言ってしまった。

診察時に、先生がどうですか?と尋ねたら、ご家族が、ご本人の困っていることをぶちまけた。
それを聞いた先生は、
なんとかせねば…僕のできることは?そう、お薬を出すこと。→増量してしまった。
ご本人が、さらに、騒ぎ出した。
ご家族がなんで?と言われる。

薬が増えたから…ですよね。…と言いたいけど、、、、言ってしまった。
先生も悪気がない。なんとかしてあげたい気持ちです。
でも、いらんお世話でした。

病院受診は、曲者です。
先生がどうですか?と聞かれたら、何かを話さなくてはいけないと、探し出して、大きく言ってしまったら、最悪です。
先生に言っていいけど、薬はこのままでいいです…と伝えて欲しいです。…と思った出来事でした。

Posted by 宮ちゃん at 2021年10月19日 11:06 | 返信

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