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在宅医療 7つの誤解
2018年05月07日(月)
【誤解その1】在宅医療では、高度な検査や治療は受けられない?
「在宅医療は看取りの医療なので、高度な検査や治療は受けられない」と思っている人は多いようです。在宅医療を受けているのは、子どもから高齢者まで、病気の対象も認知症から末期のがんまでさまざまです。自宅では手術はできませんが、在宅酸素療法や人工呼吸、経管栄養をはじめ、医師によっては、緩和ケア療法や腹膜透析、在宅輸血療法もおこなっています。在宅医療は、「看取り」に至るまでの長い期間、病気を抱えた人たちの家庭生活を支えるための医療なのです。
医療機器の小型化に伴い、これまで病院でしかできなかった検査も、できるようになってきました。X線検査やCT(コンピューター断層撮影)、胃カメラのような大がかりな検査機器は持ち込めませんが、血液検査、尿検査などに加え、心電図検査やスキャナーによる超音波検査などをおこなう医師も増えてきました。できない検査や治療については、提携医療機関につなぎます。
【誤解その2】在宅医療はお金がかかる?
「在宅医療は高い」と思っている人も多いと思います。在宅医療では「診療費」のほか、24時間対応のための「在宅総合診療料」などが入るため、外来に通院するよりは費用がかかります。しかし、自宅で受ける医療にも、病院と同じように「健康保険」が適用されますし、自己負担が一定額以上になったときには「高額療養費制度」で払い戻しが受けられます。70歳以上の一般所得者の自己負担限度額は1万2千円です。
月2回の訪問診療でかかる費用は「薬代」や「検査料」を除いて1割負担で6千円程度。がんの緩和ケアなど特殊な治療が必要な人は、それなりに高額になりますが、月額1万円以下の人が大半です。
外来への通院も、タクシーを使えば高くなりますし、夜間や深夜の対応が困難な医療機関もあります。本人の通院ストレスなども考えながら、選択するといいでしょう。
【誤解その3】在宅療養は家族の介護負担が大変?
いろんな調査を見ても「在宅療養は難しい」と考えている人はたくさんいます。東京都が2012年秋におこなった調査では、6割近くが「難しい」と答えていました。なかでも複数回答で最多だったのは「家族に負担をかけるから」で8割近く。数字だけを見ると、在宅療養は大変、ということになりますが。
確かに家族にとって、自宅での介護負担は軽いものではありません。ただ、こうした調査を見て感じるのは、「大変」「できない」というイメージが先行し、在宅療養でも「できること」がたくさんあるのを知らない人が多いことです。イメージで「できない」と決めつけるのではなく、在宅ケアで「どんなことができるのか」を、少し学んでみてください。「在宅」のイメージが変わるはずです。
【誤解その4】在宅医療を始めたら、病院には戻れない?
そんなことはありません。日本の医療はフリーアクセスですから、通院ができなくなって在宅医療を受けるようになっても、それまでの病院の主治医にかかり続けることは、かまいません。
たとえば、がんや難病のように治療の専門性を必要とされる病気では、それまでの主治医のいる病院に2~3カ月に1回定期的に通院し、普段はそれと並行して近所の診療所に通院したり、在宅医療を受けたりしている人は珍しくありません。病状が落ち着いたり、看取りが近くなったりしたら、在宅医療一本に絞る、ということが多いようです。
「併診」の場合は、病院と診療所の両方の医師が連携することが大切です。そうすれば、入院が必要なときには、かかっていた病院にすみやかにつなぐことができます。
【誤解その5】おひとりさまの「最期まで在宅」はむずかしい?
よく言われることですね。在宅医に会ったときに、「おひとりさまでも最期まで自宅生活は可能ですか?」と質問していますが、答えは全員、ほぼ同じです。「可能ですよ。認知症の人は少々ハードルが高いけど」
ただし、条件がいくつかあります。(1)本人に自宅生活への強い希望があること、(2)医療と看護・介護がチームを組み適切な支援ができること、(3)周囲に支えてくれる人がいることです。実際に「最期まで家にいたい」という独居の人に何人もお会いしましたが、この三つの条件を備えていました。認知症の人でも症状が穏やかで、きちんとしたケア態勢が組め、親身になって支えてくれる人がいれば、自宅で安らかな看取りを受けることも夢ではありません。
地域の居場所や、「通い・泊まり・訪問」のできる小規模多機能型ホーム、自宅と同じように暮らせるホームホスピスなどが近くにあれば、可能性はさらに広がります。
【誤解その6】死亡時から24時間を過ぎたら、警察に届けなければならない?
在宅での「看取り」が多くなり、この「誤解」がクローズアップされるようになりました。医師法の「20条」と「21条」の混同による混乱です。死亡して24時間以上たっていても、医師の死亡診断書があれば、警察に届ける必要はありません。
ただし、これには普段から診ている医師の存在が必要です。診療を継続している患者が、生前に診察していた病気で死亡したと判断した場合、かかりつけ医は死亡診断書を書くことができる、ということです。普段から診ている医師でないと、こうした判断はできませんから、かかりつけ医の存在というのは大切です。
自宅で療養している場合、看取りが迫っても在宅医の訪問は週数回、しかも臨終の場に医師がいない、というのはよくあること。あわてて救急車を呼んでしまったときも、かかりつけ医に連絡すれば、医師が搬送先の病院と連絡を取り、死亡診断書を書くことができます。
【誤解その7】自宅では終末期の対応は困難?
入院中は激しい痛みを訴えていた人が、住み慣れた自宅に戻っただけで、痛みが軽くなったという話をよく聞きます。病院での医療の目的は「治療」ですが、在宅での医療の目的は、からだや心の痛みをやわらげ、療養生活を快適にする「ケア」ですから、人生の最終章の段階にある人にとっては、病院よりも自宅のほうが「向いている」と言えるかもしれません。
人生の終わりが近づくと、活動は不活発になり、寝ている時間が多くなりますが、それでも家族の負担はあります。休日や夜間にも随時対応してくれる介護サービスや、24時間対応の在宅医療・訪問看護サービスなどを上手に組み合わせ、負担を減らしてください。がんの痛みについても、自宅でも適切な緩和ケアができる時代になりました。
※週刊朝日MOOK「自宅で看取るいいお医者さん」より抜粋
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