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発熱外来に手を挙げたけども・・・

2020年11月11日(水)

日本医事新報11月号は、自分の悩みを書いた。

「発熱外来に手を挙げたけども・・・」→こちら

診療所医師たちは今、大きな悩みの中にいる。

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週刊誌は11月21日号に掲載予定だ。



「発熱外来に手を挙げたけども...-政府は具体的指針や強いメッセージを」


かかりつけ医による発熱外来

 この冬、発熱外来に手を挙げた。新型コロナウイルス感染症(コロナ)と季節性インフルエンザ(インフル)の両方を診ることになる。しかし町医者は発熱患者をどのように診ればいいのだろうか。そのために国や地域、各診療所レベルで必要な準備とは何なのかを考えてみたい。 「発熱外来」には3類型あるという。①PCRやインフル検査をしない、②PCR検査のみ行う、③PCRもインフル検査も行う、医療機関だ(①②は自施設で実施しない検査を外部機関に依頼)。発熱・感冒患者は、「かかりつけ医」がいる場合にはそこに相談し、いない場合は保健所に電話して患者の症状に応じて「発熱外来」や、重症者は「帰国者センター」に紹介するという。PCR検査は「唾液」ないし発症後9日以降は「鼻腔」で行う医療機関が多いと予想されている。

 ちなみに当院の唾液PCR(行政検査と自費検査)の陽性率は2~3割であり、軽症ないし無症状の若い人が多い。風邪はもちろん、無症状であっても全員コロナの可能性を考えながら日常診療を行わなければならない。 発熱外来には既にマスクやフェースガードやガウンなどの個人防護具(PPE)が配布されている。欲を言えばインフルとコロナを同時測定できる抗原キットを配布して頂ければ非常に助かる。同時感染もあるかもしれない。片方ずつ検査するには手間も時間もかかりすぎる。唾液PCR検査は、結果判明まで2~3日と時間がかかりすぎるので、やはり抗原キットによるスクリーニングで判断することになるのだろうか。


「換気」と「寒気」の二律背反  

 三密の回避とこまめな換気が院内感染予防策の肝である。診療所を換気するには外気の入り口と出口の2カ所が必要で、その間の空気を移動させないといけないので室温は下がる。真冬は外気温が下がるため待合室にいる一般の患者さんが震えないような様々な工夫が必要となる。一方、発熱患者さんは風が通るような屋外で待つことになるのだろうが、発熱で震えている人を寒気に晒すことは忍びない。  テントを張って発熱患者さんを診るにしても、どうやって暖をとって頂くか様々な工夫が必要になる。まさか焚火をするわけにはいかないし、寒いなか待ち時間にどんな工夫をすればいいのだろうか。

 当然、暖房の設備投資に相当な費用がかかる。簡易なテントの整備だけでも数十万円の負担となる。この冬は「換気」と「寒気」という二律背反する命題に悩まされそうだ。 「かかりつけ医」は慢性疾患の患者さんを診るが、この冬は、通常外来と発熱外来をしっかり分けないといけない。しかしせっかく手を挙げた発熱外来に患者さんがあまり来られないと「損失補填」のようなものがあるという。そして発熱患者さんを診れば診るほど赤字になる制度とも聞く。やる前からため息が出るような仕組みだが、合理的な制度であって欲しい。


検査なしでの投薬の是非

 臨床症状だけではコロナとインフルの区別はできない。例年ならばインフルを疑う患者さんには処置室で鼻腔をこすればいいだけだったが、今年は勝手が全く違う。常にコロナである可能性があるので、しっかりPPEを装着したうえで屋外のような場所で検体を採取しないといけない。ビル診は時間を区分しても空間の制約があるのでどうすればいいのだろう。ドライブスルー検査なら医療機関側はとても助かるが、車で来られない人のほうが多いだろう。検体採取をする医師や看護師や臨床検査技師の感染リスクに対する精神的負担は計りしれない。

 産業保健的にいえばコロナ診療に関わること自体が「特殊業務」であり、心身ともにサポートする体制を整えないとバーンアウトが懸念される。また感染者が出た場合は今春のように再び自主隔離をしないといけないのだろうか。それに要する費用は補填されるのだろうか。  そんな面倒くさい作業をやめて検査無しでインフルと臨床診断して抗インフル薬を処方するという診療所もある。しかし検査なしでの抗インフル薬の処方は耐性ウイルスを増やすのではないか。また新しい抗インフル薬の重篤な副作用リスクも指摘されている。利益とリスクを天秤にかけた時に迷うケースが出るだろう。筆者は例年どおり臨床診断だけで済ます場合は、漢方薬を多用しようと考えている。検査法があるにもかかわらず敢えてそれをせずに薬を処方するという行為に慣れないといけないのかもしれない。

 在宅患者さんや介護施設の患者さんにおいて発熱は日常茶飯事である。多くは誤嚥性肺炎か胆嚢炎か腎盂腎炎などであろう。しかしこの冬は常にコロナを意識しないといけない。介護スタッフの不安の払拭に医療者が果たすべき役割は大きい。しかし寝たきり患者さんを介護施設のどこでどのように検査をすればいいのか。発熱はコロナだけではないので、誤診をしないように普段よりも丁寧な問診が重要である。しかし丁寧にやりすぎると今度は「濃厚接触者」というレッテルを貼られる、というジレンマもある。


クラスターは悪なのか

 「クラスター」という言葉はもはや一般市民も日常会話で使うくらい一般的になりつつある。しかしクラスターの発生はいまだ「事件」である。マスコミは依然として、○○病院や○○介護施設で「クラスターが発生した」と連日報道している。そして責任者がカメラの前で頭を下げて謝罪するという構図は9カ月たっても変わっていない。そしてコロナ=悪というイメージや差別や偏見を助長するという悪循環に陥ったままである。欧米と比較して重症化率や死亡率が桁違いに低い日本におけるコロナ禍は「インフォデミック(情報災害)」の色合いがかなり濃いと感じる。まさにマスコミによりつくられたコロナ禍と私達「かかりつけ医」は対峙している。

 クラスターが出にくい場所といえば「在宅」であろう。もしくは無症状者には検査をしないことかもしれない(笑)。クラスターは5人以上の集団感染だが独居高齢者や2人暮らしであれば、そもそもクラスターの人数に達しない。もちろん介護・医療スタッフも同時に感染する可能性はあるが、集団感染のリスクは同居者が小規模であるほど少ない。クルーズ船ではないが大規模集団ほどクラスターを生む可能性がある。 もはやどんなに一生懸命に感染対策をしても院内感染や施設内感染は防ぎきれない。コロナ感染はいわば不可抗力であるのに、誰かが責任を負わないといけない状況のままだ。その結果、一部の介護施設はいまだに面会謝絶と外出禁止令が続いている。言葉が悪いが刑務所を連想させる。当然の帰結としてフレイルの進行や認知機能の悪化が今も続いていることが残念でならない。せめて介護施設だけでもコロナをインフルと同じ扱いにできないものか。そうすれば風評被害も免れる。その結果、入所者の尊厳は守られるはずだ。

 しかし政府関係者に聞くと、コロナの指定感染症(感染症法2類相当)は1~2年間は続くらしい。そうなると、少なくとも来年2月までは今までどおり2類相当のままのようだ。 この冬、発熱外来に手を挙げた「かかりつけ医」は外来や在宅や施設で発熱患者に抗原検査やPCR検査をどこまですればいいのだろう。現実にクラスターが出れば診療を停止するのか。いつまでクラスター=悪とみなすのか。現時点では頑張るほどに良からぬ将来が待っている可能性がある。コロナ専門病院は中等症以上の感染者が入院する病院である。それとは別に通常診療から独立して発熱患者さんだけを診る診療所を整備すべきだろう。

 診療所によってバラバラの対応では市民は不信感を持つかもしれない。発熱患者さんの検査や治療のあり方についてはある程度の標準化が必要ではないか。専門家会議による、より具体的な指針や政府の強いメッセージを待っている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今夜は、「2020年度第4回国立認知症大学」の講義をした。

寝不足の上に分刻み(秒刻み?)の診療後でヘロヘロに。


しかし全国の介護福祉士が1時間半も聞いてくれるので

ZOOMであっても、とても遣り甲斐がある仕事である。


次回の講義は、1月12日(火)。

コロナに負けずに頑張ります。


PS)

コロナチャンネル #206


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この記事へのコメント

#206「鼻腔免疫IgA」について
「鼻うがい」「鼻呼吸」を30年超続けてきた者にとって、勇気づけられます。生理的ハタ・ヨーガに親しむ者にとっても、力強い限りです。

「マスク・手洗い・間隔」のお題目ばかりでは、なんともさびしい限り。
「鼻うがい」は、口唇で吸い上げるようにすればよく、あら塩(精製塩でなく自然塩)も安価でいつでも手に入り、歯磨きのついでにやれます。問題は、その生理学的効用や如何にです。

ウイルスの侵入ポイントは「鼻腔」。鼻腔から全身に拡散していきます。なんとしても鼻腔でくいとめ、増殖を食い止めねばなりません。
鼻腔は八つの副鼻腔を含め「頭頚部」全体の要であり、頭蓋内「粘膜免疫システム」となっていると言われます。鼻腔から亀頭、肛門まで、巨大な「粘膜免疫ネットワーク」が構成されているとも言われます。
鼻腔内は繊毛の粘膜で覆われ、頭蓋内神経と下気道に接しています。粘膜面には、長尾先生言われる「IgA」抗原が含まれており、長尾先生言われる「経鼻ワクチン」接種の有効性が、俄然クローズアップされる由縁です。

そこで、生理学的ハタ・ヨーガの日本的「易行」として、「塩うがい」がおすすめです(いささか我田引水ですが)。煮詰めたり天日干しした塩分は各種ミネラルを含み、鼻腔内に侵入した「細菌」の細胞を、浸透圧差で破壊するそうです。問題の「ウイルス」は細胞膜がないので破壊とまではいかないらしいが、素人としてはIgAとあいまって、何らかの効用を期待したい。

経験上、「鼻うがい」は殺菌・保温・保湿・通電(神経伝達)効果以外にも、「塩気」から「鼻呼吸」への移行が「難行」でなくなるという効果も生みます。「ノーマスク鼻呼吸」になれば、外気で頭蓋を冷やし肺気で鼻腔を高温多湿にする。「自家経鼻ワクチン」とでもいうべきか。

Posted by 鍵山いさお at 2020年11月11日 03:48 | 返信

コロナちゃんの独り言
「長尾先生、ごめんなさい
 コロナのせいで迷惑ばかり
 コロナはただ、生きようとしているだけなんだけどなぁ
 でも、コロナもちゃんと勉強、頑張る
 理解はできないことも多いけど、余り、気にしない
 だって、コロナ、ウイルスだもん
 だから、お歌の練習、頑張ってね」

長尾先生にお礼を言いたいです
zoomのアプリを使う決心(大袈裟だね)がつき、知り合いに相談しました時の事です
実は知り合いが最初言っていた企業とは学校で、「コロナ渦で授業が出来ないのでの困っている」と相談を受けzoomを使い「オンライン授業」の取り組みをしてみたらとなったそうです。
それが「メディアに取り上げられた」みたいな事を言っていたので、かなり早くに「オンライン授業」を始めたみたいです。
まあ、私の知り合いはボランティアだし、メディアには学校の取り組みとしか報道はされてないので、影の立役者かな
オンライン授業は子供が対象の為、端末の問題から取り組まなければ行けなかったみたいです
その点、先生は大人が対象なので楽です
そんな話を聞きながら、zoomをiPadとスマホで実際に使って見せて貰いました
時代の流れならzoomを一度は使って見るの良いかなと思います
それに今回はお遊びなので、上手く行かなくても、せいぜい、コロナちゃんが「先生のお歌が聴けないよぉ〜」ですむ話
居酒屋で本当に楽しい時間を、久々に過ごす事が出来ました
zoomの一件が無かったら、そんな時間を持つことも出来ません
その時、先生のムック本の「歩くだけ」を相談料にプレゼントしておきました

Posted by ナオミ at 2020年11月11日 11:00 | 返信

上記「長尾先生言われる『IgA』抗原」は、「長尾先生言われる『IgA』抗体」の誤りです。#206を再度お聴きしました。長尾先生には大変失礼しました。ド素人の聞き間違い、ご容赦ください。
それにしても「長尾先生の解説は、なんど聞き返しても分かりやすくためになる」とは、ぼくの年寄り仲間の感想です。ぼくのオベンチャラではありません。

Posted by 鍵山いさお at 2020年11月12日 06:20 | 返信

季節性インフルエンザワクチンは、品薄なのに「発熱外来はやってくれ」という兵庫県の命令ですか?
やってられないですね。
コロナウイルス肺炎の第3波の患者数が多いとテレビや新聞で言っています。
GO TO トラベルもやめたほうがいいんじゃないでしょうか?
もう遅いかもしれないね。
コロナウイルス肺炎の影響で自宅テレワークが盛んになると、自宅のパソコンにウイルスハッカーが盛んに入り込んで、本社のパソコンにまでウイルスが入り込んで、「金をはらえ!」と脅迫しているそうです。犯人はヨーロッパでも暗躍しているハッカー集団らしいそうです。(NHKによります)

Posted by にゃんにゃん at 2020年11月13日 04:27 | 返信

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