このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

職域における飲酒問題

2011年12月12日(月)

アルコール依存症の方と厳しく対峙する日々。
職場の隠れ依存症にも注意が必要だ。まあ、偉そうなことは言えないが・・・・
以下、一昨日の産経新聞に掲載された記事を転載させていただく。

2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 

産経新聞アルコールシリーズ2    職域における飲酒の問題

                γGTP値に着目した生活習慣病対策を

 
 今回、職域における飲酒の問題について考えてみましょう。日本企業の労働環境は大きく変化しました。従来の終身雇用に伴う家族主義的な経営から欧米型の成果主義ないし個人主義的な経営に移行。それに伴いお酒を介した懇親や接待やの機会は、昔に比べて確実に減っています。しかし企業活動において飲酒の果たす役割はいまだに大きく、営業成果や人間関係の構築、ストレス解消など様々な飲酒の効用もあります。職域におけるお酒の問題は意外に難しい問題であると、産業医をしていて常々感じています。


 さて職場検診の必須項目のひとつにγGTPがあります。これは、アルコール性肝障害や脂肪肝などで上昇する検査値。実はγGTP値と生活習慣病が大変密接な関係にあることが知られています。そこで某事務系企業の最近の調査結果をご紹介します。男性の19%、女性の60%は全く飲酒習慣がありませんでした。一方、1日3合以上の多量飲酒者は男性の4%、女性の0.5%でした。さらにγGTPが100以上の人は男性の12%、女性の1.3%でした。そこで注目すべきはγGTPが50以上の人に、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が多く認められた事実です。もちろん100以上でも生活習慣病の合併が増えますが、特に50を超えたところで激増していました。

 
 その他の職域におけるお酒の課題として、問題飲酒の継続が可能となりやすい同僚や上司の容認行動(イネイブリング)があります。飲酒の強要行為(飲酒ハラスメント)や飲酒トラブルへの寛容性も問題です。飲酒はとかく個人的な問題として見られがちですが、職場でのトラブルが大きくなると組織としての問題にもなります。またアルコール依存症の前段階、いわゆる

 「隠れ依存状態(プレアルコーリック)」が急増しています。さらに若年世代の週末大量飲酒、女性の飲酒者の増加、また海外駐在員のアルコール問題も大きな課題になっています。そういえば東日本大震災後の仮設住宅でのアルコール依存症も切実な課題ですね。阪神大震災での教訓を活かそうと巡回支援活動を続けておられる医療・介護スタッフをはじめ兵庫県からのボランテイアの皆様のご尽力も忘れてはなりません。


 アルコールは肝臓のみならず様々な全身疾患と関連します。膵臓にも負担がかかり慢性膵炎に至れば寿命にも関わります。また脳にも少なからず影響することは、あまり知られていません。大量飲酒者の脳をCTで診ると年齢に比して委縮が目立ちます。特に小脳が委縮し、酔っていなくても歩行が「千鳥足」になります。昔、歩行困難になった大量飲酒者に「脳の委縮をなんとか元に戻して欲しい」と懇願されたことがありますが、無理でした。ビタミン欠乏では認知症と同様の症状を呈することもあります。一番怖いのは、精神疾患との関連です。アルコール依存症から「うつ病」への移行は有名。それをなんとしても食い止めねばなりません。果ては家庭崩壊に至るのは今も昔も変わりません。そんな悲惨な状況になる前に、職場検診でのγGTP値にもっと着目すべきです。今後γGTP値に着目した職場のアルコール対策、生活習慣病対策を提案いたします。ちょっと厳しい数字かもしれませんが、とにかくγGTP50以上は要注意なのです。実は、かくいう私も50以上なのですが・・・・

 

キーワード:γGTP(ガンマGTP)

肝臓の解毒作用に関連した酵素で飲酒量を反映する。肝臓や胆道に病気があると上昇し、アルコールによる肝障害や脂肪肝などの指標となる。正常値は男性50以下、女性32以下。

2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

お疲れ様です。本日、半分諦めかけていた先生からの沢山の本が届きました。
朝から興奮気味に勤務のスタッフに紹介♪
詰所内にある休憩所に全てを置くことにしました。
思ってたよりも沢山の本が届き先生の思いを、ぐっすり受け取らせていただきます。
一日も早く全ての本が読み切れるよう頑張ります。
そして本の中からヒントを得て患者さんに返せるよう約束します。

大切な本を本当にありがとうございました。

Posted by 奥村 at 2011年12月12日 09:28 | 返信

γーGDP300オーバーの私って?

Posted by kawasaki at 2011年12月13日 02:54 | 返信

先日は先生の思いがたっぷり詰まった本が届きました。
ありがとうございます。小6の娘も興味深く「町医者力①」を読んでいます。
病棟にも紹介したいと思っています!!
ほんとにありがとうございました。
お忙しい先生ですので、お身体に気をつけてください・・・。

Posted by 北飯 at 2011年12月13日 04:29 | 返信

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ