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3月1日(日)

2009年03月01日(日)

「在宅期間が7日以内であった看取り症例の検討」でポスター発表し、終了後は中野一司大会長に観光案内までして頂くという贅沢

DSC02062 (3).JPG 「在宅期間が7日以内であった看取り症例の検討」でポスター発表しました。在宅医療は美談ばかりではありません。死期間際の駆け込み在宅症例の問題点を提示し、病院からの早期紹介の重要性を訴えました。大会終了後に、中野先生、白髭先生と一緒に記念撮影して頂き、さらにお疲れの中野先生に観光案内までして頂き、うちのスタッフ達も大満足でした。

DSC02085 (2).JPG  薩摩の偉人達の生誕地を巡りながら、中野先生のバイタリティの源に触れた気がしました。維新館という立派な劇場では薩摩の歴史を勉強しました。中野先生は、西郷さんかな?大久保さんかな?なんて考えながら。桜島も今日は良く見えてみんなで記念撮影。

 この学会はとても刺激的な学会でした。余韻の残る中、大会テーマであった「多職種連携」を地域の中でさらにどう進めるか考えながら20時に伊丹空港に着きました。在宅医仲間、在宅クリニックのスタッフ同士、在宅医と病院勤務医、在宅医とケアマネ、在宅スタッフとリハビリスタッフ、在宅医とケアマネ、ケアマネとヘルパー、市民と介護者と医療者・・・と、いくつもの連携の会を立ち上げてきましたが、歯科、薬剤師、栄養士さんにも加わってもらうと、単品ではいくつあっても足りない!「在宅医療」を神輿と考え、キャタピラ全員で担ぐイメージが一番です。市民と医療者が一緒になったお祭り感覚の勉強会を重ねていくつもりです。

 さっそく4月に尼崎で今回のような「ミニ在宅医学会」のようなフォーラムを開催します。今度は650人のキャパなので少々集客が不安ですが。もちろん、「在宅医学会」(医療学ではない)の名に込められた「医学」への思いは忘れずに。帰宅しパソコンを開くと、昨朝落ち着いていたがん患者さんが急変され瀕死の状態で入院されたとのメールが来ていて驚きました。

 学会抄録                                 

病院退院後、在宅期間が7日以内であった看取り症例の検討

○長尾和宏 長尾クリニック(尼崎市) 

【目的】「入院時から病診連携が始まる」と謳われてはいるが、現実にはかなり全身状態が悪くなってからの駆け込み在宅医療依頼が後をたたない。今回、看取りまでの期間が7日以内であった短期間の在宅看取り症例について、その頻度、臨床経過、亡くなった後のご家族の気持ちについて検討し、今後の病診連携の在り方について考察した。

【対象と方法】当院で過去13年間に在宅看取りを行った286例中、病院退院後、在宅期間が7日以内であった12例を今回の検討対象とした。うち在宅期間3日以内の超短期症例が8例、4?7日間の症例は4例であった。9例が悪性腫瘍末期、3例が良性疾患末期症例であった。


【結果】12例中、疼痛コントロールに難渋した症例は3例、せん妄コントロールに難渋した症例は4例あった。看取り後のご家族のインタビューが可能であった症例10例のうち、臨床経過に納得されないと判断される症例が3例あった。3日以内の超短期間症例8例のうち、最短例は病院退院後6時間での死亡であり、本症例は主治医の到着(これが初回訪問)までに亡くなったことに家族が納得せず、「訴訟」という言葉を一度口に出された。この症例は日曜日の午後の退院であった。超短期間症例であっても家族の満足度が高い症例が5例あったが、いずれも入院前に外来で1ケ月以上診ていた、または退院前カンファレンスなど事前の相談や説明が十分なされていた。12例中、病院での説明で「予後1ケ月以上」とされていた症例が7例もあった。

【考察】昨今の医療情勢により病院から「在宅看取り」目的の急な紹介が増加している。かなり悪い状態での退院も少なくなく、病院医の推測する予後に比較して実際の予後が短い症例が多い。予後2?3日の可能性がある症例では、疼痛の増悪、せん妄、高度の全身倦怠感などの頻度が高く、介護保険の準備、薬剤調節、インフォームドコンセントなどが間に合わない事例も存在する。間際になっての在宅移行は、密度の高いケアが要求される上にトラブルリスクも包含しており出来れば回避すべきである。現代日本人の死生感、病院依存の高さ、在宅医療の情報のなさ、など患者さん側の因子と、病院医療者側も在宅医療をイメージできていないことに起因する紹介の遅れの因子、その両面へのアプローチが必要と考えられた。

【結論】入院早期からの積極的な退院支援が望まれる。信頼関係が構築されれば、たとえ在宅期間が3日以内に終わっても満足度が高い症例が存在する一方、訴訟リスクを包含する症例も存在する。また病院予後と実際予後の相異も十分考慮すべきである。在宅医療の適応と判断されたら1日も早い在宅移行が望まれ、病院医療者に粘り強く啓発する必要がある。また在宅側も退院後の経過などを病院側にフィードバックするなど、今後は双方向的な病診連携が期待される。当院は基幹病院の研修施設になっているが、看護学生、医学生、研修医の医学教育改革も急務である。

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