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私の訪問を待つかのようにトイレで静かに旅立たれた患者さん
2009年11月04日(水)
この3日間、急に冷え込みました。寒さで冬が越えられない患者さんが毎年何人かおられます。10年間近く在宅医療をしてきた独居の患者さんが今朝、静かに旅立たれました。先週から特に体調を崩し、週末には2日続けて訪問しました。土曜日にお会いしたときには、私の帰り際にいつにない笑顔を見せて「先生、長い間ありがとうございました」と挨拶されたので、ちょっと気になっていました。今朝、定期訪問した時、いくらベルを鳴らしても応答がありません。10年間、こんなことは一度もなく、嫌な予感が走りました。
ドアチェーンのため中に入れず、隣人にベランダ伝いに入って頂くと、案の定、トイレの中で冷たく息絶えていました。警察の方に直腸温で確認して頂くと亡くなった時間は明け方と推定されましたので、その時間で普通に死亡診断書を発行しました。夜、ご家族ともゆっくりお話しました。前夜の電話では特に変わったことのない様子だったとのこと。入院を勧めても彼女はかたくなに拒否していました。ここ(自宅)でプッツリ死にたいと何度も言われていました。ある意味では本人の希望どおりになったわけで、苦しみとは無縁の最期でした。あたかも週に1回の私の訪問を待って旅立たれたように感じました。恋人ではありませんが、10年間の2人だけの思い出が走馬灯のように頭を巡りました。
以前、「病気の場所」というエッセイを書きました。トイレと風呂場が死に場所になることは経験上、真実です。急激な血圧上昇に伴い、致死性不整脈が発生するのでしょう。緊急往診で呼ばれる時には、トイレで動けなくなったという訴えが実に多い。だから、弱った方には「トイレは命がけでしてください」、といつも言っています。
昼から介護判定委員会でした。この春から基準が厳しくなり平均2段階下がりましたが、特例処置で10月までは「本人希望で前回判定据え置き」という訳のわからない判定をしていました。しかし今月からはその特例が無くなり要介護3の人が要介護1へ、要介護2だった人は要支援への軒並み2段階下がっています。今日はいちいち手入力で要介護度を2段階上げる作業をしました。しかし何の意味があるのかさっぱり理解できません。
上げて下げて、下げてまた上げる。こんなアホなことをする暇があれば患者さんの隣にいたいのですが、大変複雑な気持ちで委員会に出席しています。
夜は、11月22日に開催される「つどい場さくらちゃん」主催の「かいご学会イン西宮」の最終打ち合わせでした。熱心な討論が深夜まで続きました。NHKテレビのデレクターさんも来られていましたが、丸尾多重子さんの母性はさらに広く報道して頂きたいと思います。さくらちゃんには素晴らしい市民ボランテイアや介護関係者が集まっています。彼らの話を聞いていると、もし世の中の5%の人が変われば本当に世の中が変わるかもしれない、という気がします。
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