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赤あげて、白あげて、赤さげないで白さげない

2010年02月20日(土)

午後は介護認定審査会の委員の研修会でした。委員の年1回の義務です。介護保険制度が誕生してちょうど10年。3年ごとに改訂されてきましたが、3回目の昨年春の改訂は酷かった。医療費抑制政策の最後の大ナタが下され、軒並み2段階位下がる厳しい基準となりました。しかし、大ブーイングに負けて「患者希望があれば前介護度の据え置き可能」という前代未聞の通達が出て、介護認定審査会は無用の長物と化していました。その影響がまだ続いています。介護認定審査会とは一言でいうと、「赤あげて、白あげて、赤さでないで白さげる」という遊びをしているだけです。機械判定を一旦人間が覆し、またそれを平準化という大義名分の下、いじくるのです。さっぱり分かりません。厚労省さん、しっかりしてください。

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介護認定には7段階あります。要支援1,2、要介護1~5です。その中でもいくつかのポイントがあります。

【要支援と要介護では大違い】
要支援は地域包括センターのケアマネが担当し、要介護は民間のケアマネが担当します。しかし、地域包括センターのケアマネが担当しきれないので、一部は民間のケアマネに半額以下で下請けさせます。1人のケアマネ当たり、8人を受け持つと言う訳の分からないノルマがあります。コンピュータ-ソフトの関係で要介護になったり、要支援になる患者さんがいます。その都度、地域包括センターのケアマネから民間のケアマネに変わります。利用者(医療では「患者」さんが、介護では「利用者」と言います)にとってややこしいだけです。

【要介護度が高ければいいとは限らない】
要介護度が高ければいいというものでもありません。要介護度が上がると1回のサービス単価も上がります。同じデイケアに行くにしても要介護1と要介護3では値段が全く異なります。重症のほうが高いのです。素人はとにかく介護度を上げるように判定すればいいと考えがちですが、そう単純ではありません。実際の利用状況や患者負担も勘案して判定するように、と言われますが、そんな難しいことは無理です。

【全滅の4】
全介助になればなぜか要介護4に落ちます。口から食事を食べさせていた人が胃ろうになれば、なぜか要介護5から4に落ちます。これを「全滅の4」と呼ぶそうです。なぜかというと、口から食べさす方が介護の手間がかかるからだそうです。しかしそれはあまりに可哀そうなので「利用者の心情も考えて審査会判定として5に戻す」ことが正解らしいのです。あれだけコンピュータに判定させて、医師の意見書を勘案しても、最後は「心情」で決めてください、とのお達しです。理解できません。

【ピンピンの5】
ピンピンしているのになぜか要介護5の人もいます。何も問題ない(非該当か要支援1くらいにしかみえない)のに何故か要介護5をもらって、必要もないのに診察室に一緒に入って来るヘルパーさんがいます。なぜ、こんな不思議なことがあるのでしょうか。以前、ケアマネが患者さんに寝たきりの演技指導している現場に出くわしたことがありました。歩けるのに寝たきりの演技をするのです。そして要介護5をもらいすべてそのケアマネの所属するヘルパーで埋め尽くしていました。こんなことを、誰もチェックしないのは不思議です。医者は1点でも厳しくチェックされるのに・・・

【認知の1と不安定の1】
要介護1が曲者です。以前は「要介護1相当」という訳の分からないゾーンがありました。これは要介護1と要支援2を合わせたゾーンでした。現在の要介護1は、さらに「認知の1」と「不安定の1」に分かれます。認知症があるか、病状不安定があれば要介護1に上がります。認知の1と不安定の1とか難しいことは言わずに、普通に「要介護1」では何故だめなのか、理解できません。

【入院中は病状不安定??】
入院中の患者さんは、入院しているというだけで「病状不安定」となり重い介護度が出るという話があります。入院中は看護師が薬を管理し食事を介助します。過保護状態であってもそのまま評価され、介護度に反映されます。聞けば聞くほどよく分かりません。
 

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この記事へのコメント

大阪でケアマネジャーをしています。市の委託を受けて認定調査員もしていますので、要介護を決めるための資料作りと決まった介護度でサービス調整する二役をしているわけで、全国的に二役をしているケアマネジャーも多いと思います。認定調査は面接調査は1時間程度ですが、書類作成には時間と手間をかけます。項目をチェックするだけではわからない、「辛さ」「しんどさ」「労力」生活への影響、家族の負担などは言葉で伝えるしかないのです。サービス計画のために認定調査票、主治医の意見書を市町村から取り寄せることがよくありますが、事実像との乖離やいい加減さに呆れるときもあります。長尾先生が以前よりご指摘されている、癌ターミナル患者さんの認定にも問題があります。時には申請日から2週間以上調査に来てもらえないこともあり、調査の前にお亡くなりになられたケースもあります。

Posted by はなぽこ at 2010年02月21日 11:57 | 返信

はなぼこさま
長尾です。
ご指摘のように問題山積です。
ケアマネに全部しわよせが行っています。ほんとうに気の毒です。
認定調査以前に亡くなられた患者さんに発生した自費分を自腹を切っているケアマネもいました。
こんな無理難題に埋没している善良なケアマネさんを非難する気は毛頭ありません。
善良でないと表現すしているのは、経営者のことです。ケアマネではありません。
「ケアマネ問題の改善無くして、介護の改善はない!!」とある集会で叫びましたが、反応はもうひとつでした。あまりの忙しさに疲弊しているようです。
年1回ハワイ旅行する優雅なケアマネさんを私は知りません。お金の問題もあるけど、労働時間の問題です。大みそかも元旦も働いています。ヘルパーは交代性ですが、ケアマネは担当制です。
拙書「パンドラの箱を開けよう」では、医師の労働問題を大きく取り上げましたが、高齢化社会を迎えて本当に考えるべき課題は、ずばり「ケアマネの労働問題」の方だと感じます。ケアマネさんには是非ご意見をお聞かせください。

Posted by 和 at 2010年02月22日 10:48 | 返信

本日は先生の著書いただきありがとうございました。
認知の1の意味はわかりました。そもそもおかしな話ですよね・・・要介護認定なんてほんと
いいかげんだと思います。ケアマネがきちんとアセスメントをして、必要な人に必要なサービスを
提供できるようにすればそれでよいと思います。
その為にはケアマネジメントは非常に大切なものになりますよね・・・アセスメントができない
ケアマネが多いのは認めます・・・今のままの介護保険制度ではほんとうに必要な人によりよい
サービスを提供できるとは思えません。自分自身もケアマネジメントをもう一度見直してみなければ
いけないかなって思います。       ケアステーション翡翠 土井でした!!

Posted by 土井久美子 at 2010年02月23日 05:28 | 返信

土井久美子さま
長尾です。コメント、ありがとうございます。
制度の奴隷になり、本来の役割を果たせなくなっているのが現在の介護保険制度です。
さまざまな政策提言をしていますが、役人には無視されます。
御用学者も綺麗ごとだけを並べます。現場の意見に耳を傾けません。
土井さんよような現場のケアマネはもがいています。
1)介護認定の簡素化、迅速化
2)ケアマネージャーの報酬アップ
3)中立性の確保
が急務だと考えます。

Posted by 和 at 2010年02月25日 02:42 | 返信

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