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親分は眠り、子分は暴れる

2010年03月27日(土)

大阪大学消化器外科森正樹教授による「iPS細胞と癌幹細胞」という講演を聞きました。大変興味深い講演でした。日々癌に接している医師としてとても納得できる仮説でした。親分(=癌幹細胞)は眠り、子分(=非癌幹細胞)は暴れるのです。抗がん剤は子分にしか効きません。(以下、医療者向けサマリー)

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【再生】
プラナリア(下等動物)=どこを切っても(頭、胴体、尾)、全身が再生する
イモリの再生=腕を切っても生えてくる
タバコの葉っぱ=葉からタバコの木が再生する

【ES細胞とiPS細胞】
ES=embryonic stem cell=胚性幹細胞
iPS= induced pluripotent stem cell=人工多能性幹細胞
i-Podにあやかってiが小文字になったそうな。

ESは受精後数日の細胞から、iPS細胞は受精卵を使わないで、体細胞から作る。

【羊のドリーの実験が成功】
羊Aの乳腺細胞の核を取りだし、羊Bの核を取りだした卵子に入れるとAのコピー羊が出来る。=細胞質に分化を元に戻す成分が含まれている、と考えた。まず24個の遺伝子がノミネートされ、山中教授により有名な4個の遺伝子が同定された。

【iPS医療の現状】
ES細胞に4つの遺伝子を組み込んで、多能性幹細胞までは作れている。そこから先に分化させることはまだできない。一方、癌化のリスクが指摘されている。

【問題点】
ES細胞=卵子提供の負担が大きい
iPS細胞=癌化の可能性

【再生医療への応用】
脂肪由来幹細胞の多分化能を利用して乳房の手術後に脂肪を再生する。森先生は手術室でお腹の脂肪を採取し脂肪由来の幹細胞を作れる機械を作った。そして乳房切除後の患者さんに実践したところ乳房が再生し、かなり患者さんの満足度が高い結果が得られている。

【ミネソタ大学では脂肪由来の幹細胞から心臓を作った(2008年)】
形の上では出来た。そして実際に拍動する心臓は作られた。しかしまだ移植は出来ていない。

【癌幹細胞】
1cmの癌の塊の中には何十万個の癌細胞が存在する。これらをバラバラにして1ケ、1ケの癌細胞にして移植しても塊を作らない。消化器ががんの最大の問題点は、抗がん剤で叩いてもがん細胞のみが残ること。癌の幹細胞(親分)には抗癌剤は効かないようだ。

【癌肝細胞の腫瘍形成能と薬剤耐性能】
抗がん剤で死ぬのは、非癌幹細胞のみ。本当の幹細胞はKi67に染まらない=増殖期にはない。横にいる細胞が増殖能を持っている。すなわち
・大親分は分裂をしない
・小親分が分裂をする

Dormantと
Activatedと考えれば分かり易い。

幹細胞とは、分裂した1ケはやはり幹細胞のまま、もう1ケが分裂能を持っている。

【乳癌再発から14年経って再再発の症例の解釈】
なぜ14年もじっと潜んでいられるのか?癌幹細胞がNiche潜んでいていたから

【正常造血系におけるNiche system】
正常造血幹細胞は冬眠状態にいた。Integrin N-cadherinに挟まれた状態にあれば(Niche system)癌細胞は冬眠できる。造血系と同じようなことが、癌でも起こっているのではないか?

【癌細胞と細胞周期 ―新規マーカーによる検索―】
眠り易い幹細胞群がある。上手く入れ換わりながら増殖する。
CD13=冬眠している癌幹細胞のマーカーである。

癌幹細胞=抗がん剤を細胞外に排出する装置を持っているので強い
非癌幹細胞=細胞外に排出できないので弱い

【癌の血行性転移】
たまたま転移するのではない。がんが骨髄にあるシグナルを送り、肝臓にニッチを作る。(Pre-metastatic niche)そのニッチ内で冬眠状態に入る。起きる速度が乳癌や前立腺がんではとても遅い。
・抗がん剤は子分をやっつけている。
・大親分をやっつけるにはどうすればいいのか

【癌幹細胞を標的とした治療】
今後、期待される。現在の抗癌剤治療では、幹細胞は死なない=治らない。

私の質問:iPS細胞と癌幹細胞はどのような関係があるのか?
答え:今のところ関係ない
 

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この記事へのコメント

最近になって日本の医学界でも癌組織体の根源細胞である癌の幹細胞の存在が注目され始めました。癌の幹細胞に関する研究が進展すれば、将来の癌研究や癌治療に重大な転機を齎すものと期待されます。小生は1992年以来、癌の幹細胞に対処する治療概念、すなわち、今までにない全く新しい治療概念を記載した論文17篇を国際的な医学雑誌に発表しています。それらの論文資料にご関心のある方には個人的に無料で郵送致しますので、郵送できる宛先をお知らせ下さい。
780-0870 高知市 本町 5-4-23 平田病院 平田陽三
電話:088-875-6221 Fax: 088-871-3801
E-mail: hphirata@mb.inforyoma.or.jp

Posted by 平田陽三 平田病院 at 2010年05月16日 01:53 | 返信

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