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訪問診療と往診はどう違うの?

―朝日新聞WEBサイト アピタルブログより(第5回)―

2010年04月25日(日)

自己紹介で在宅医療の話に触れたら、さっそく「訪問診療と往診はどう違うの?」という質問をいただきました。いい質問だと思います。

私のクリニックには、沢山の医療者が研修に来られます。
あちこちで在宅医療の講演もします。
そうした時はいつも私は、「訪問診療と往診の違い」の話から始めます。

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訪問診療とは、毎週○曜日の○時にと約束して医師が訪問することです。
1週間ないし2週間に1回が標準的です。
一方、往診とはまさに読んで字のごとく、電話等で請われて訪問することです。
両者は「似て非なるもの」です。

在宅医療とは、「訪問診療+往診」で成り立っています。
2006年に定められた在宅療養支援診療所には、全国約10万軒の医療機関のうち、約2万軒、すなわち全診療所の2割も届け出ています。
そこには、私のようにまだ「在宅医療」という言葉さえなかった15年前から取り組んでいる診療所と、在宅誘導政策にとりあえず乗っておこう、という診療所が混在しています。

在宅療養支援診療所の第一要件は、「必要とあれば365日24時間往診すること」です。
これは「言うは易し、行うは難し」で結構大変ですが、重要なことです。
私は在宅医療のことを患者さんに「自宅に入院する」と説明します。
ナースコールは携帯電話です。
「呼ばれたら行く。けれどちょっと時間がかかるのが病院と違うところ」と説明しています。

後進にいつも言っていることは「在宅医療とは、患者さんとご家族に安心を与えること」です。
この「安心」の第一歩は、「いつでも電話で話せることである」と私は思います。
実際、大半は電話相談で済みます。
深夜に車を走らせることは、月に2~3回でしょうか。
もし、この世に携帯電話がなかったら、今のような在宅医療なぞ無理でしょう。
携帯電話の発展とともに普及してきたと言ってもいいでしょう。

「いつでも往診します」という約束ほど、患者さんにとって安心を与える言葉はありません。
往診こそ、在宅医療の要なのです。
ですから、「訪問診療だけなら在宅医療とは呼べない」、と私は思います。
これは、あくまで個人的意見です。

さて、「訪問診療はするけど、往診はしません」というお医者さん。
これは自分の都合のいい時間には行くけどもそれ以外は知りません、という意思表示です。

医者ももちろん人間ですから夜中に起こされたり、往診したいわけではありません。健康上の理由があるならともかく、かりに医者本人がOKでも、奥さんがNOという場合もあるでしょう。

仕事とプライベートを確実に分けたい今風の医者なら、携帯電話対応など論外という方がむしろ普通かもしれません。

実は、2通りの在宅医がいるわけです。深夜に亡くなった時に、すぐに往診する在宅医と、朝まで待ってもらって往診する在宅医です。

在宅医療は、往診に始まり、往診に終わると思っています。
これについては、また次の機会に。

(当ブログは、朝日新聞WEBサイト"アピタル"にて掲載中です。)

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