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病気で亡くなる時に、警察は要らない
医者の大半が、在宅看取りの法律を知らない
2010年05月30日(日)
毎日のように、患者さんから「自宅で亡くなった時に警察が来た」という話を聞かされます。
エライ病院のお医者さんでさえ「24時間以内に診ていない患者が亡くなったら
警察を呼ばなくてはならない」と、信じています。
完全に法律を間違って理解しています。
なんで、人間が病気で亡くなるのに警察がいるのか?
24時間ルールの誤解が、混乱の根源です。
(正) ずっと病気で診てきた患者さんが、最後に診察してから24時間以内に
亡くなった場合は、患者さんの家に行かなくても、死亡診断書を発行できる。
(もちろん、行くが、行かなくてもいいという、すごい法律)
(誤) ずっと病気を診てきた患者さんであっても、24時間に診察していなければ、
死亡診断書を発行することができない。
(そんなアホな)
これを、多くの医師が知らないのです。誤解したままなのです。
講演会でもこの話になれば、思い込みの強い医師がエラそうに
間違った説明をしだし、大変混乱します。
病院勤務医はもちろん、在宅医療をしている医師の多くも
まだ知らないことのようです。
だから、平気で、「警察を呼びなさい」と指示します。
静かな死が、一転、事件(のよう)になり、家族が取り調べを受けます。
近所のひとは、赤い回転灯を奇異の目で眺めます。
かくして、後味の悪い最期に、医療者がしています。
第一、本人が、それに気がつかず同じ過ちを繰り返しています。
1年間に100万人以上死ぬ時代。
在宅で亡くなるたびに警察が呼ばれていたら警察ももちません。
もちろんこれは、病気での自然死の話です。
万一不審死の疑いがある時の話ではありません。
いまだに患者さんから、この悲惨な話を何度も聞かされます。
医学部教授もこの法律を知らず、家族に間違った説明をし続けています。
まあ、いちばん知らないのは、エライお医者さんたちのようです。
これも、在宅医療の大きな阻害要因です。
私は、これを全国の医療者に啓発するため(エラそうにすみません)
「はじめての在宅医療」を書いて、全国に配ってきました。
しかし、世の中、何も変わりません。
しかし、言い続けます。
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この記事へのコメント
『そんなアホなこと言う暇があったら静脈注射の一本でも良いからマスターして、医師として仕事できるようになりよし! そうでないとあんたがアホ面さらしてぼーっと突っ立ってる間にどんどん患者さん達が死んでいくんやで!あんたにその全責任取れるん!?』
たった3日前に、うちの研修医のひとり(やる気全然なしで、教授に推薦してもらえるためだけに顔出ししているけれども、ぜんぜん患者さんと接しないうえに、突っ立ってるだけ)に言い放った私の怒りまみれの台詞です(汗)
私のすごい剣幕に、主任まで恐れおののいておりましたが(苦笑)
看護の道に進む前は『お医者さんは信頼出来る。あれだけ勉強して人のために役に立てるようにって医学を選んだんだから』と、医師は誰でもプロフェッショナルだ、診断や腕の違いなんてあまり無いだろうと考えてました。
ですが、
自分の患者体験と看護師体験を経て、良い医師を見つけるのがどれほど困難かを思い知らされました。
最近の医学生(あくまで私が住んでいる国での話ですが)は医学部を卒業すると、大抵が専門医になりたがります。その道に進んで患者さん達を助けたいというのでは全くなく、
『町医者に比べて格段に稼ぎが良いし、ステータスがある』という、実にくだらない理由で。
私は1年目の研修医の教育係をさせられているので、医者の卵の本音をストレートに聞いているため、このようなことを耳にしても『ああ、それが医療従事者のレベル低下を招いているんだな』と考えても、別に驚きはしません。でも、以前の私のように病院医師の本音や裏側を知らない患者さんの多くに取っては、本当にショックだと思います。
こういう医師はモチベーションが無いから、教授に取り入るのに必死で、本当に必要なことを勉強ません。
いくら大事なことを繰り返し口酸っぱく言っても、ノートも取らないし、右から左に筒抜け状態。
だから、長尾先生のおっしゃるように『そんなアホな???』と思うようなことが非常に多いのです。
看護師でも知っている常識ですら病院医師は知らないのです。
そして、医師なら普通は絶対しないであろうという初歩的なミスを犯して、患者さんの命が危うくなった時に真っ青になり、パニックになり、邪魔になる場所に突っ立っているだけでまったく使い物になりません。
そしてその後始末をさせられるのが看護師です。
患者さんのケアだけでも大変なのに、研修医のミスの後始末までやらされてるんですから、正直「やってられんわ!」となる時も多いです。
看護師としての本音を書くと、『研修医を指導してもお給料はかわらないから、後始末までさせられて結局は大損!』です。
こちらでも町医者の負担がどんどん激増しています。
病院では事務も看護もその専門の人がしてくれますが、
町医者は大抵のことは自分で全てこなさなければなりません。
(とてもおおきな個人クリニックなら話は別ですが。)
長い勤務時間は当たり前で、私のかかりつけのお医者さんも大変そうです。
靴は半分履きかけ、シャツはズボンから半分出ていて、髪はボサボサ。
それだけで如何に時間が無いのかが見て取れます。
そのため、こちらではかかりつけの町医者の数が年々激減しています。
患者を総合的に診ることができる(そして働き過ぎの)町医者たちをバックアップ出来るように、行政からなんとか出来ないのでしょうか。そうすれば病院医師が町医者を軽んじることも無くなると思うのですが。。。
そもそもどうして行政は医療というものを病院からの観点でみるのでしょうか。
かかりつけのお医者さんへ行く患者さんの方が実際にはずっと多いはずです。
(例えば、単なる風邪の場合は病院へ行かずにかかりつけ医へ行くでしょう?)
ならば、もっと地域医療を活性化させるために、町医者の観点から医療を見つめるべきではないのでしょうか。
Posted by *snowflake* at 2010年05月30日 03:55 | 返信
*snowflake*さま
一日のスタートにスカッとした発言!
開業医の先生はほんとうにお大変だと思います。
そこそこ大変そうじゃない先生でも、たいへんだと思います。(意味不明?)
勤務医は勤務医のご苦労があり、開業医は開業医のたいへんさがあり・・・・・
けれど医者である以上、目の前の患者さんと向き合い、治療するという目的は
病院、在宅分け隔てはないはずです。(手段、過程は違うかも知れません)
前にも言いましたが、
医者である以上、簡単に「僕の専門でない」と言い捨てることだけはして欲しくありません。
わたしは自身のこれからの役割は、
・ケアマネジャーにももっと医療知識を持ってもらい
在宅において、他の専門職とある程度無難に渡り歩ける専門職に育てること
・場合によっては看取れるケアマネジャーを育てること
だと 誰にも頼まれていないのに そう勝手に考えています。
ですので、この24時間ルールについてもケアマネジャー自身も誤解している人が多いと思います。
尼で手一杯の長尾先生にお願いはできませんので、
是非機会があれば わたしがお伺いして
ケアマネ対象の伝道師役をさせていただきたいと思う次第でございます。
Posted by カミムラクミコ at 2010年05月30日 08:38 | 返信
はじめまして。うちの義母もつい最近在宅で亡くなりました。
癌でしたが在宅は義母の希望でした。知識も何も持たないわたしたちは本当に家で最期を迎えることができるのだろうかと半信半疑。でも最期は眠るように全く苦しむことなく亡くなりました。
在宅緩和ケアをしていただいた診療所の先生、訪問看護師さん、ケアマネージャーの方、とても感謝しています。
その後偶然、長尾先生のブログを見つけ、毎日欠かさず目を通しています。
わたしたちも全く知らなかった在宅医療のすばらしさを少しでもたくさんの人に知ってほしいです。
ちなみに、看護師さんから亡くなった時にあわてて救急車を呼んだりしたら、警察がきたり検死をされたり大変なことになるから、必ずまず先生に電話してねと言われていました。
本当に自然に亡くなったので先生に電話したら、地方に帰省中。もちろん看護師さんは飛んできてくださいましたが、先生も提携の診療所や病院に委ねるのではなく、ゴールデンウィークの渋滞の中を必死で戻ってきてくださいました。
長尾先生のブログで、在宅医療が医療従事者の中でもこんなに認知度が低いことも知りました。
大変お忙しいことと思いますが、ぜひこれからもがんばってくださいね。
わたしも身近なところから、家で看るってこんなにいいよと伝えて行きたいと思います。
Posted by ako at 2010年05月30日 12:57 | 返信
自宅で看取り検視についての誤解
朝日新聞2010/2/10の声欄に、横浜市の医師、深澤立氏の投稿が載っています。内容は長尾先生と同じです。2/2付の家族からの投稿「自宅で看取り なぜ検視なのか」にお答え下さったものです。
私はこれを投稿して下さった深澤医師、ならびに朝日新聞声編集部に深く感謝して、自分の「いざときノート」にファイルしています。
これを読んだ時、在宅介護をしようとする家族の大きな不安の一つが解消された、と嬉しく思いました。それに朝日の声欄は多くの医師も目を通す紙面でしょうし、と期待していました。あまり現場ではそうでもなかったみたいですね…
深澤医師の表現は、「患者の家に行かなくても(?)」ではなく、「死後診察をしなくても」という優しい表現になっています。図書館で縮刷版読める方に一読お勧めです。
Posted by 梨木 at 2010年05月30日 01:46 | 返信
カミムラクミコさま、
いやー、本当にあの時は『このままじゃ、患者さんが死んじゃう!(本当に危ない状態でした)』と私も必死だったので、思わずミスをした研修医を叱りとばした訳です。
主任、勤務医もろもろ、同僚もろもろ。。。が周りに沢山いたにもかかわらず、私の目には全く入っていませんでした(汗)
その日から、皆が私を見る目が恐怖に溢れております。。。(苦笑)
ですが、研修医達がびっくりするほど素直に言うことを聞いて、学習してくれるようになったので、災いが転じて福となったのでしょうか(嬉)。
このままスパルタ教育係として君臨してね、と主任も同僚も喜んでいましたが、
さすがに『実は転職を考えているんだけど。。』とは言い出せず、
結局損をしたのは私だったのかも(涙)
Posted by *snowflake* at 2010年05月30日 07:17 | 返信
*snowflake*さま、長尾です。
ビックリしました。こんな意見を堂々と出して頂きありがとうございます。
この期待に添えるよう、身を引き締めて精進します。
>もっと地域医療を活性化させるために、町医者の観点から医療を見つめるべきではないのでしょうか。>そうすれば病院医師が町医者を軽んじることも無くなると思うのですが。。。
国の政策としては、本来はそうあるべきです。
しかし、私がそう言っても「欲張り村の住人の戯言」としかとられません。
是非とも、 *snowflake*さんも、この視点を市民のみなさんに発信してください。
私も「地域医療連携委員会の委員」として、発信します。
Posted by 長尾 at 2010年05月30日 09:58 | 返信
akoさま。長尾です。
はじめまして。
在宅医療の体験談を書いて頂き、嬉しいです。
医療者が一番知らないのが「ザイタク」です。
Posted by 長尾 at 2010年05月30日 10:00 | 返信
梨木さま、長尾です。
ご紹介ありがとうございます。
>「死後診察をしなくても」という優しい表現になっています。
そうですね、
言葉が足りなくて申し訳ありません。
そのとうりです。
しかし医療者が一番知らないのです。
Posted by 長尾 at 2010年05月30日 10:05 | 返信
*snowflake*さま、長尾です。
病院で研修医を教育してください。
自分の研修医時代で覚えているのは、看護師さん、婦長さんに
ボロカスに叱られたことだけ。今も覚えてきます。
研修医に対する鬼軍曹は要ります。
頑張ってください。
Posted by 長尾 at 2010年05月30日 10:08 | 返信
ひとつ質問があります。
地方の病院の勤務医ですが看取りについて、
当院では全く診察をしたこともないのに、突然の心停止でよく救急車で運ばれてきます。
正直、事件性はないんですが死因は不明です(多分老衰です)。
こういうときは検視が必要と思いますがこれも警察に連絡しなくていいんでしょうか?
刑事さんによっては事件性がなさそうならいいです。とめんどくさそうに言われます。
それと、在宅看取りについて付け足しですがあくまで診療中の疾患での死亡については死亡診断書が書けるということであり、
他の原因が考えられるときはやはり、検視が必要と考えますがどうでしょうか?
Posted by paruteno at 2010年05月31日 01:27 | 返信
長尾先生、鬼軍曹って。。。(汗)
もうこれで私には怖い者なしですねえ(笑)
職場では、私に対する新しいニックネームが出来たようです。
その名も『スパルタンナース』(なんてたくましい名前!)
女盛り30歳、未婚&独身、子供無し、仕事バリバリ。。。となると、
やはり『仕事と結婚した強くたくましい女性』と思われるのでしょうか(笑)
とある研修生は私のことを『デビルナース』『鬼』と読んでいるようですが。(←なんて失礼な!)
それでも私は『ふふふ、現役看護師をなめてもらっちゃー困るのよ!』と言わんばかりに(←私の場合は堂々と言ってますが)患者さん達のみならず、知人友人にも『患者さん思いで、一人の人としても尊敬&信頼出来る病院内の医師』を教えています。
もちろん『これは、あくまでも私個人が患者として、そして仕事上で実際に自分の身を以て経験した限りのことだから、100%私が正しいとは言えないよ。』と注意書きをしてから、です。
そして同時に患者さん達には、
『私も昔はとっても頼りない看護実習生だったんだよ。私も、皆のおかげでここまで来れたから。鬼看護師に鍛えられて、患者さん達に沢山のことを教わって、汗と涙をたくさん流して初めて一人前になれた。こいつ頼りないなーとか、こんな人間に医者になってほしくないわーって思う研修医や看護実習生も沢山いるけど、人間っていうのはいくらでも変われるから、見放さないであげてね。 みんなこれから成長していくからね。』
と機会があるたびに話しています。
こんなこと言ってたら、ますます教育係を辞めさせてもらえないどころか、転職すら危うい状態に。。。(汗)
長尾クリニックが超遠距離にあるのが残念でなりません(涙)
Posted by *snowflake* at 2010年05月31日 01:39 | 返信
parutenoさま、長尾です。
言葉が足りずに申し訳ありません。
継続して診ていて、死亡が予想された時の話です。
初めて見る心肺停止は、ケースバイケースだと思います。
末期がんであっても、在宅主治医もおらず、死亡到着の
例も現実には相当あるでしょう。
まさに現場の判断しかありません。
Posted by 長尾 at 2010年05月31日 01:47 | 返信
*snowflake*さま、長尾です。
少しずつ情報を頂き、なんとなく勝手なイメージが出来てきました。
大変失礼いたしました。
現在の医療現場で、ひどく叱ることが減っているのでは?
ますます、その病院のために頑張って欲しいと思います。
Posted by 長尾 at 2010年05月31日 01:52 | 返信
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