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中原先生の過労死がようやく認められました(最高裁で和解成立)

やっとパンドラの箱が開いた!

2010年07月09日(金)

中原先生(小児科医)の過労死認定を巡る裁判(中原裁判)の最高裁判決が昨日、出ました。
和解成立とは、実質、勝訴です。
医師の労働条件を認めた、画期的な判決です。

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故・中原利朗先生の奥様の活動を、私自身も支援してきました。
拙書「パンドラの箱を開けよう」に書いた「箱」とは、
今日の裁判のことです。

患者さんには、何のことか良くわからないでしょう。
これは勤務医も労働者であり、時間外労働や過重労働という
概念が適応されることが認められた判決なのです。

そんなこと、当たり前とお感じになるかもしれえませんが、
医師は聖職であり、労働条件とは無関係であると言う考えが支配的でした。

しかし、医師も人間。
過重労働が続けば、当然壊れてしまいます。
医者がいなくなれば、困るのは患者さんです。
だから決して無関係ではありません。

病院から医者がいなくなっているのは、この過重労働が放置されてきた
からです。たった、これだけのことに、10年もの年月を要しました。

全国の心ある医師らが、奥様の活動を支援して、ようやく実りました。
しかし、まだ入り口の戸が開いたにすぎません。
しかし、歴史に残る日になったことも、事実です。


以下、MRICにて配信された、中原先生の奥様(中原のり子)さん
の文章を引用させて頂きます。



「小児科医師・中原利郎、過労死裁判が和解成立しました」

中原のり子です

本日、平成227815時、最高裁第二小法廷(古田祐紀裁判長)にて
和解が成立。
病院は中原利郎の死に対して深く哀悼の意を表し、和解金を
支払うこととなりました。

この和解は「よりよい日本の医療のため」に和解勧告を行った最高裁の
意向に沿い、
双方が歩み寄った結果であり、日本の医療現場を変える
一歩と考えます。

長年にわたり支援してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

弁護団の力と共に、社会的に医療者を大切にしようという盛り上がりが、

この裁判の終結に繋がったと思います。心より感謝申し上げます。

司法闘争は終わりましたが、これからも医師が過労死することのない
社会をめざして、
医療者の労働環境改善のための活動を続ける所存です。


今後ともお力添えを賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

なお、和解詳細につきましては、HPをご覧いただけたら幸いです。

     http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/

 これまでほんとうにありがとうございました。

                 平成2278日 中原のり子拝

  ・・・・・・・・

亡中原利郎氏損害賠償訴訟(小児科医過労死事件)のこれまでの経緯

2010(平成22)年7

第1 関係当事者

1 亡中原利郎氏(小児科医師)

   昭和30323日出生

   昭和494月  千葉大学医学部入学

   昭和566月  医師免許取得

(千葉大学医学部小児科学教室に入局し,小児科の専門医師となる)

   昭和624月  被申立人病院小児科に勤務

   平成11816日午前640分頃(推定) 投身自殺

*亡利郎は,知人からは「聖人君子だ」と言われるほど,礼儀正しく真面目で,サッカーを趣味とする明るい人物であり,患者からの信頼も厚かった。

2 上告受理申立人

   妻中原のり子(昭和31年生まれ,昭和56年に結婚)

   亡利郎と妻の間には,3名の子供(長女〔当時17歳〕,長男〔当時15歳〕,次男〔当時12歳〕)がいた。

3 相手方病院

   相手方病院は,昭和27年に開設。平成1511月現在で19の診療科からなり,363床を有する中野区内の総合病院である。東京都の二次救急医療機関の指定もあった。

第2 労災申請,訴訟関係の経緯

 平成11(1999)816日 亡利郎,勤務先の屋上より投身自殺(享年44歳)

 平成139月 遺族,新宿労基署に労災保険法による遺族補償給付を申請

 平成1412月 遺族,病院に対し,東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起

 平成153月 新宿労基署,自殺は業務上の事由によるものとは認められないとして給付をしない旨決定

 同年5月 遺族,新宿労基署の不支給処分取消を求め,東京労働局労災審査官に審査請求

 平成163月 東京労災審査官,審査請求の棄却を決定

同年5月 遺族,労働保険審査会に再審査を請求

同年12月 遺族,国に対し,東京地裁に行政訴訟(労災不認定取消訴訟)を提起

 平成193月 行政訴訟,原告勝訴判決(東京地裁11部)。うつ病の発症が過重労働によること(業務起因性)を認め,国に労災不認定取消しを求めた。国は控訴せず,判決確定

 同年3月 損害賠償請求訴訟,業務起因性を否定し原告全面敗訴判決(東京地裁27部)

 同年4月 遺族,損害賠償請求訴訟の地裁判決を不服として東京高裁に控訴

 平成201022日 損害賠償請求訴訟,控訴審,業務の過重性及び業務とうつ病発症との因果関係(業務起因性・相当因果関係)は認めるも,過失(予見可能性)を否定し,控訴人敗訴判決(東京高裁23部)

 同年114日 損害賠償訴訟,上告受理申立て(最高裁判所第二小法廷)

 平成22(2010)78日 (最高裁の和解勧告を受け)最高裁で和解成立

第3 事案の概要と地裁・高裁の判決内容(損害賠償請求訴訟の東京高裁判決の整理による)

 1 本件は,申立人らが,亡利郎は被控訴人病院における業務上の過重な肉体的心理的負荷によってうつ病を発症し,これを増悪させたことにより自殺したのであって,相手方には,亡利郎の心身の健康状態に十分配慮し,適切な業務内容の調整や健康状態に対する適切な措置をとるべき安全配慮義務ないし注意義務を怠った過失があると主張して,相手方に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。

 2 東京地裁判決(損害賠償請求訴訟)は,亡利郎は遅くとも死亡する数か月前にうつ病に罹患し,これが原因で自殺したものといえるが,亡利郎のうつ病の発症ないし増悪について,相手方病院における業務との間に相当因果関係を認めることができず,かつ,仮に業務が過重であったとみる余地があるとしても,相手方に認識可能性がなかったから,債務不履行又は不法行為に基づく責任を負うことはないと判断して,申立人らの請求をいずれも棄却した。

 3 これに対し,東京高裁判決は,「亡利郎の自殺の原因となったうつ病の発症と業務の遂行との間に相当因果関係があることを肯定することはできるが,相手方が安全配慮義務ないし注意義務を怠ったということはできない。」と判断した。

4 東京高裁判決の理由は,次のとおりである。

「亡利郎は,平成11年3月には,月8回,週当たり2回の割合の当直を担当しており,際立って多いといえることが明らかである。その上,同月の時間外総労働時間は83時間に及んでおり,これは平成10年9月以降で最も長い平成11年2月の54時間の1.5倍強であって,同年3月の勤務は,明らかに過重なものであった。しかも,翌4月から6月まで,当直回数は5回から6回と相変わらず多く,月間の時間外総労働時間は60時間を連続して超えており,単純計算しても,1日平均2時間を超える時間外労働が4か月間にわたり継続していたことになる。殊に,4月には時間外総労働時間が69時間に達した上,当直を挟んで通常勤務や半日勤務を行うという連続勤務をしたことが6回の当直のうち4回もあり,他の2回も当直の前後に通常勤務をした。以上に照らすと,亡利郎の平成11年3月と4月の勤務は過重なものであって,亡利郎に著しい身体的心理的負荷を与えたというべきであり,5月と6月の勤務の負担は多少緩和されたものの,それまでの過重な勤務により疲弊し,・・このころにはうつ病に罹患していたと考えられる亡利郎に与える負荷は大きなものであったというべきである。」

「また・・,亡利郎は,部長代行就任直後の平成11年3月,4月において(少なくともF医師が常勤医として採用されるまで),常勤医や日当直担当医の減少という事態に直面し,従前からの経緯や部長代行としての職責からして,それらの問題解決に腐心し,見過ごすことのできない心理的負荷を受けたものというべきである。・・さらに,亡利郎は,平成8年ころから不眠を訴えて睡眠導入剤の処方を受けていたが,従前は一度服用すれば足りていたものの,平成11年3月ころからは就寝前と深夜の2回にわたって服用することが多くなったものであり,そのころから,うつ病の重大な要因でもある睡眠障害ないし睡眠不足が顕著に増悪したことは明白である。そして,その原因は,上記の事情,殊に過重な勤務の影響によるものと考えるべきである。」

「以上の説示を総合勘案すれば,亡利郎は,主として平成11年3月以降の過重な勤務により,加えて,常勤医や日当直担当医の減少という問題解決に腐心せざるを得なかったことにより,大きな心理的負荷を受け,それらを原因とした睡眠障害ないし睡眠不足の増悪とも相俟って,うつ病を発症したというべきであり,亡利郎の業務の遂行とうつ病発症との間には,条件関係が認められる。そして,疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危険のあることは周知のところであり,(中略)亡利郎の相手方病院における業務の遂行とうつ病発症との間には,相当因果関係も肯定することができる。」として,相手方病院における過重な勤務によって,大きな心理的負荷を受けてうつ病を発症したこと及び,亡利郎の業務の遂行とうつ病発症との間の相当因果関係の存在を認めた(地裁判断を否定)。

 しかし,「・・平成11年3月から4月にかけての亡利郎の勤務は過重であり,また,部長代行に就任した早々に常勤医や日当直担当医の減少という事態に直面し,亡利郎は,それらによって相当な身体的又は心理的負荷を与えられたということができるが,相手方側において,それらの問題によって亡利郎が疲労や心理的負荷等を過度に蓄積させ,心身の健康を損なって何らかの精神障害を起こすおそれを具体的客観的に予見することはできなかったものであり,かつ,亡利郎が精神障害を起こしていることはもとより,精神的な異変を来していることを認識することもできなかったものである。」として予見可能性を否定したうえで,安全配慮義務ないし注意義務違反を否定した。

cf.〔最高裁での和解状況(司法統計による)〕

  平成20年度の司法統計によれば,最高裁に上告申立て・上告受理申立てがなされた民事・行政事件数は延べ約4500件であるが,そのうち最高裁で和解となったのは僅か延べ8件であった。ちなみに,原判決が破棄されたのは,56件に過ぎない。

  同様に,平成19年度は,延べ約4700件中で,和解は延べ4件(破棄47件)である。

以上

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この記事へのコメント

とても良かったと思います。
自動車の会社は3勤交代や2勤交代って
あるじゃないですか、病院もそうして
上手く好循環になってくれればいいのに
なと感じました。

Posted by st**yminmin at 2010年07月12日 12:00 | 返信

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