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侮れない結核

2010年09月02日(木)

今日は、結核予防会の伊藤邦彦先生による講演
「プライマリケアにおける結核の診断」を拝聴しました。
結核はまだまだ侮れません。
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医学生の時、「女を見たら妊娠を疑え」と習いました。
今日は、「人を見たら結核を疑え」だと感じました。
何度聞いても、結核は奥が深い・・・

以下、医療者向けサマリーです。

【尼崎の結核は多い】

平成21年尼崎市の活動性結核の罹患数は134人。罹患率は29.0

うち、塗抹陽性肺結核は罹患数66人、罹患数14.3人でした。

全国平均よりも兵庫県は高いが、

尼崎市は特に高く、全国平均の2倍近い。

 

尼崎市は塗抹陽性者が多い。
だからこの研修会が開催される。

 

【確定診断の重要性】

「抗生剤が効いたから結核でない」とは言えない。

塗沫・培養がどこまでも基本である。

多くの人は2週間以内に陽性となる。

PCRの感度は悪い。

塗抹陽性なら97%がPCR陽性となる。

受診の遅れ、診断の遅れが問題になる。

進展の速度は実に様々である。

 

【診断のポイント】

菌の検査が重要。

塗抹陽性ではじめて結核と言う。

陰性であれば「結核疑い」と言う。

検体は唾液では駄目。

下気道からの分泌物を調べる。

両者の菌量は、100倍から1万倍違う。

 

【結核の臨床症状】

咳が軽い人でも、レントゲン写真を撮る必要性はある。

咳のレセプターは、上気道に多く分布するから。

咳や痰などのく局所症状の無い結核や、

全身症状のみの結核が増えている。

発熱のない結核はいくらでもある。

結核に特異的な症状や陰影はない、と銘記する。

 

【CRPはあてにならない】

CRPは全く当てにならない。
15%は、CRP陰性である。

抗生剤で熱が下がるが、これで誤診する。
白血球が異常に高いから結核を疑わないのは間違い。

 

 【咳はあてにならない】

塗抹陽性の患者さんの20%は症状が無い。

咳を訴えるのは、50~60%程度にすぎない。

レントゲン写真を撮るには、経験と勘が要る。

咳を当てにするのは間違いである。

空洞なしの塗抹陽性の患者も増えている。

喀痰検査は3回行う。

 

【胃液検査は慎重に】

胃液で菌が死滅するので、早急に検査する。

 PCRの感度は低いが。

 

【症状とは比例しない】

重症であっても症状の無いことが多い。

重症度と症状や全身状態は全く関連しない。

 

【画像診断は粒の集まり】

結核とはツブツブの集まり。

CTでは空洞が大切。

聴診しても何も所見は無い。

SpO2も保たれる。

 

【粟粒結核の実際】

糖尿病やエイズなど基礎疾患のあるひとが多い。

1ケ1ケの粒がぼやっとした結核が増えている。

 

【鑑別診断は沢山ある】

粟粒サルコイドーシスや粟粒肺腺がん
などとの鑑別は現実には難しい。

1年以上、結核の治療をされて
最終的に腺がんであった症例もある。

非定形抗酸菌症との鑑別も難しい。

 

【治療後のフォローアップ】

陰影焼失後の再発はある。

痰の検査は重要。

陳旧性肺結核の再発の診断は難しい。

治療歴が無ければ、精査と予防内服の対象になる。

石灰化があっても安心できない。

空洞には着目。

結核か誤嚥性の肺炎かの鑑別は難しい。


特養の管理者になれな両者の鑑別は超難問。

抗生剤で改善するからたちが悪い。

誤嚥性肺炎に全員に結核の検査をするのか?


大部屋でもいいのか?

マルメの中でどうやって検査をするのか。

診断というより「リスクマネジメント」の領域になる。

 

 結核専門施設でも結核の診断は極めて難しい。

集団感性になると「診断の遅れ」として新聞に載る。
また裁判沙汰になる。

 


【結論】

結核の検査(レントゲンと痰)を沢山すれば保険で削られる。

しかし、しないで死ねば、訴えられる。
結核の診断は古くて新しいし、難しい。

 

 

 

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