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非がん性疼痛への麻薬処方

2010年09月18日(土)

今日は、第2回尼崎在宅緩和ケア研究会を企画・運営しました。
順天堂大学の井関雅子先生を講師にお招きし、最新の疼痛管理について講演頂きました。
私は、前座として「非がん性疼痛へのオピオイド投与と多職種連携」についてお話ししました。
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緩和医療の扉が、非がん性疼痛にもどんどん開かれつつあります。
デユロテップパッチが、ついに非がん性疼痛にも適応ができました。
しかし、いくつかのハードルがあります。

正確には、慢性疼痛への適応緩和。
慢性疼痛とは、3ケ月以上続く痛み。
今回、ヂュロテップパッチMTだけが適応を取りました。

私自身、過去に非がん性疼痛にオピオイドを投与した患者さんは
数人です。
・腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症
・線維筋通症
・神経難病

井関先生のご経験でも
腰部脊柱管狭窄症が一番、多かった。
と言っても、投与した症例数は、そう多くありません。

今回のシバリとしては、

1) 医師は、Eラーニングにて、非がん性疼痛について学ぶ。
2) 確認書は発行され、医師及び患者さんの署名が必要。
3) NSAID等のベース薬が、原則、必要。
4) 塩酸モルヒネ錠か散の、先行モルヒネが必要。

しかし、考えてみれば、変なルールですね。

なぜ、非がん性疼痛のみのシバリなのか?
がん性疼痛は、シバリなしです。

薬局では、がん性疼痛か非がん性疼痛か判別できません。
患者さんが確認書を提示しなければ、分かりません。
ということは、確認書は、有名無実!?

井関先生は、むしろオピオイドの乱用を慎むような
トーンでお話されました。
米国の悪しき先例が、トラウマになっているようでした。

と言うのも、米国では、非がん性疼痛へのオピオイド投与が
大半を占めています。
その結果、深刻な薬物依存が社会問題になっています。

がん性疼痛へのオピオイド投与は、最優先です。
一方、非がん性疼痛へは、QOLとの天秤で考えるべき。
「痛みと仲良く付き合う」という姿勢で臨むべき、だと。

ヘルパーさん、ケアマネさん、薬剤師さん、看護師さんらが
熱心に聞いてくれました。
昨夜に続いての超熱心なヘルパーさんのお顔も見えました。

何度、このような勉強会を開催しても、
医師の参加が少ないのは、本当に残念です。
大体、医師の割合は、いつも1割程度。

医師は何を考えているのでしょうか?
疼痛緩和は、診療科を問わない医療の基本。
全医師の必須科目のはずなのですが・・・

しかし、めげません。
桜井先生とコンビを組んで(?)、尼崎ならではの
泥臭い勉強会を重ねたいと思います。

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この記事へのコメント

>深刻な薬物依存が社会問題になっています。

これまで理解していたのは下記のようなご意見です。
「がん性疼痛へのオピオイド投与は、薬物依存にはならない。その心配から拒否して痛みを耐えようとする患者がまだ多くて、日本では投与量が欧米に比べ少ないし、患者のQOLの改善を害している。緩和ケアは早期から受けるのが望ましい」

人間の体の反応はそう違わないと思うのですが
非がん性疼痛へのオピオイド投与は薬物依存になる、のはどうしてですか。
量が違う? それともがんよりは長期投与になるから? 
でもがんの骨転移などには結構長く使われるのではないですか。
私の理解が誤っていたかもしれない、と心配しています。

Posted by 梨木 at 2010年09月19日 12:49 | 返信

梨木さま、長尾です。
非がん性疼痛に使う麻薬量は少量ですから、量の違いではありません。
全身状態の違いだと思います。
全身状態が良好だからこそ、依存性が生じるのでは?
末期がんは、依存性が生じる前に亡くなってしまいます。

Posted by 長尾 at 2010年09月19日 10:01 | 返信

7月のNST研究会でご挨拶させていただきました東和薬品㈱研究開発本部の山田です。
先生の在宅医療に対するご姿勢には常々感銘を受けております。
また、土曜日の在宅緩和ケアセミナーでは先生の現場のご苦労や井関先生のオピオイド事情のお話を聞かせていただき、有難うございました。
私はジェネリック医薬品の会社で、患者さまの服薬コンプライアンスを高めるために役立つように、既に上市されている「錠剤」や「カプセル剤」を服用し易いゼリー剤や内用液剤に剤形を工夫する仕事をしております。在宅の患者さまは私共が想像するよりもずっと不自由な日常生活を送っておられるのではないかと思います。これからも先生の勉強会などに参加させていただき、患者さまのお役に立てる改良を考えさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

Posted by 山田昇 at 2010年09月21日 08:34 | 返信

山田昇さま、長尾です。
いつもジェネリックの悪口を書いてスミマセン。
2、3流のジェネリックを無くしたい一心からですから、どうかご理解ください。
アメリカのジェネリック局に管理された「先発より、安かろう、良かろう、ジェネリック」を
日本でも実現することを目指しています。
それには、貴社のような一流メーカーによる「ジェネリック業界の自律」を目指すか、
国家管理を目指すか、のどちらかしかありません。
私の知る限り、どちらの動きもないようですので、敢えて問題提起させて頂いています。
どんどん、リーダーシップを発揮していただきたく、お願い申し上げます。

Posted by 長尾 at 2010年10月10日 12:49 | 返信

私は、このプログの話しに食い付きました。だって私は慢性難治性疼痛の患者だから!
慢性疼痛は、3ヶ月以上続く痛みとありましたが私は最初の発症から数えると20年間 痛みと闘っています。今は、ペインクリニックで脊髄刺激療法と言う治療を受けていますが、これにも耐性があるらしく私も使い始めて6年目位になりますが、いつまで使えるか判りません。脊髄刺激電極を入れていても刺激が来ている部分は痛みがいくらかはマシなのですが、今は頚椎椎間板ヘルニアもあり身体中に痛みが走る事もあります。でも、これは今はどうする事も出来ないのか別にこれといった治療はしていませんが・・・。
こんな身体中の痛みにでも、デュロテップパッチは使えるのでしょうか?

Posted by 竹田です! at 2011年01月05日 08:06 | 返信

講演会の題材を検索サイトで探しているうちに偶然発見しました。通りすがりのペインクリニック専門医です。
非がん性疼痛へのオピオイド投与の問題点については2010年11月号のペインクリニックで特集されています。問題点の概要は獨協大学の山口先生のレビューを、アメリカでの状況については慈恵大学の北原先生のレビューをお読みになられると良いと思います。
基本的には、強オピオイドを長期間、大量に投与することが様々な問題につながります(依存症は問題の一部にしか過ぎません)。だから、生命予後の短い緩和ケアの患者さんでは問題が起こることがほとんどないのです。

Posted by まささん at 2011年03月28日 12:06 | 返信

ペインクリニック専門医からお返事をいただけるとは思ってもいませんでした。
お礼申し上げます。
今更に薬は両刃の剣と思いました。長期間&大量がキーワードでしょうか。
私の力で理解できるかわかりませんが、関心ありますので、ご紹介の先生たちのお名前で検索して辿り着きたいと思っています。
有難うございました。

Posted by 梨木 at 2011年03月28日 10:14 | 返信

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