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アルコール依存症の外来治療
2011年02月06日(日)
神戸大学精神科の菱本明豊先生に、治療のコツを教えて頂いた。
ニコチン依存も、アルコール依存も奥が深い。後者は死に至るので、より切実だ。
依存度は、アルコールの方が上。
うつの合併、自殺リスクも高い。
さらに、リタイア後の依存症が増えている。
認知症の合併も多い。
全国80万人の患者さんの切実な問題。
抗酒薬と安定剤を上手く使うことが要点。
外来でも充分止めれる。
明日から、何人かの、治せる「アルコール依存症」の治療に精を出そう。
「アルコール依存症の治療」
依存と依存症は違う
依存症は周囲に迷惑がかかる。
認知症と関係する。
「アルコール依存」は、晩酌など「習慣飲酒」をする多くの方に見られるが、
飲酒に対する強い願望があり、一度飲み出したら飲酒を止められない、
また飲酒による有害な結果が出てもやめられないのが「アルコール依存症」
●アルコール依存症の診断
1 飲酒への欲望=精神依存
2 飲酒量のコントロールが出来ない
3 禁酒すると禁断症状が出る
4 耐性の証拠
5 長い迷亭状態
6 入院しても止めらない
6項目中、3項目を満たした場合、依存症と診断
●依存症のおこり方
依存症は、長い経過の中で起こる。
精神疾患(うつや不安)と結びつきやすい
●依存症人口
アルコール依存症人口は、82万人
予備軍はその5倍いる。
高齢者依存症が増えている。
退職後は朝から飲めるので。
●4つの側面
1 精神依存
2 身体依存
3 急性障害
4 慢性障害
この4つが、複雑に絡みあう。
●精神依存
機会飲酒、習慣的機会飲酒(=週末飲酒)
⇒晩酌=アルコール依存(依存症では無いが、量と内容の増加)
⇒病的飲酒(朝酒、隠れ酒、山型飲酒サイクル、頻回飲酒)
●身体依存の症状
・手指の振戦、脂汗、瀕脈、高血圧、幻覚
・アルコール性不眠
(睡眠相の第4層が無くなるので、浅い睡眠しか出来なくなる)
●急性中毒(銘釘状態)
日本海型=静か、どんよりと飲む
太平洋型=暴れる、派手
●慢性中毒
・肝障害
・MCVは100以上
・慢性の下痢=水溶性ビタミン、VB12、葉酸の吸収が出来ない。
飲んでも吸収されない。ビタミン剤の点滴しか補給できない。
●依存症と否認
・依存症とは、否認の病気、
・家族の否認、イネイブラー(enabler)、依存症を長引かされる家族
・医療者の否認、分かっていても止めさせない
・社会全体の否認、タバコに比べて寛容
カンビール1杯800円になれば、依存症は減る
●アルコール関連精神疾患
・一次性合併症 うつ病の合併
うつと自殺、自殺者年間3万人
●自殺者
・98%が精神疾患を合併
・3割がうつ病、その次は、アルコール依存症が来る。
●自殺のリスク=Jカーブ現象がある。
・全く飲まないひとの自殺率は意外に高い。
・1~2合が低く、逆に3合以上飲む人の自殺率が高まる
・赤ワインには、認知症予防がある。
・しかし1日2本も飲めば、認知症予防効果より依存症のリスクが高まる。
・アルコールの中では、自殺予防の観点では赤ワインが最も良い。
●依存性薬物の分子接着場所は?
・まだアルコールのメインとなる作用点は見つかっていない
・GABA受容体がメインであろう。
・アルコールは溶媒なので、様々な部位に作用する。
●依存性薬物のランキング
抑制系 興奮系
横砂 へロイン コカイン
大関 覚せい剤
関脇 LSD
張り出し大関 アルコール
前頭 ニコチン
幕下 カフェイン
●脳内報酬系
・腹側被がい野に、ターゲットがある?
・脳内報酬系の関与。これはニコチンと同じ。
・すべての依存薬物は、脳内報酬系を介する
●依存症=学習の障害?
空間的な作業記憶の障害が起こる
●日本人をアセトアルデヒドを分解する酵素の遺伝子でみると
GG 50% 1 飲めるタイプが、依存症になる!
GA 45% 16分の1
AA 5% ゼロ 下戸
・AAアレルの世界分布をみると
北京、中国の江南地域、韓国、日本にしかいない
・欧米やロシアにはいない。
●薬物治療
1 退薬症候の予防と治療 充分量のセルシンによる離脱防止。
15~30mgを使い、眠くてもかまわない。5mgを1日3回
短時間型(コンスタン、ワイパックス、れキスタン)はそれに依存する
2 眠剤は、サイレース、ユーロジンなどがいい。マイスリーはダメ。
長期薬で、長く残っても構わない
3 ビタミンB群、葉酸の補給、下痢の対応
●抗酒剤投与の
・シアナマイドは強い、皮膚炎の副作用がある、断酒初期に有効
1回5~10mlで効く。
・ジスルフィラム(ノックビン)は粉薬、弱いが、途中でこれに切り替える。
0.1mg~0.2mgを朝1回、自分で飲ませる。
3ケ月~1年使用する
現在使える、抗渇望薬は無い。
治験中の薬として
・アカンプトロ-ル
・オンダンセトロン
受容体は、統合失調症と同じ。
従ってリスパダール、ジプレキサでも欲求を止めることができる。
●依存症は、わがままではない。
・病識が無くて飲酒が多い⇒消極的自殺へ
●プレアルコール依存は、1ケ月でも止めてみることから
・1週間でもいい。3日でもいい。
・週末だけでも止めてみる。
・アルコール性脳萎縮は、3ケ月禁酒である程度は戻る
●抗うつ剤は一生飲むもの
・3ケ月は仕事を休むもの。
・早期すぎる復職はダメ。
・自称うつは、別問題。
・仕事をさせておいた場合、励ましていい場合もある。
●アルコール依存症の外来治療
・最初の2週間は、毎日来させる。
・離脱後は、週2~3回来させる。
●抗酒剤の肝への副作用
・GOTが300を超えるとダメ
・γは、2000でも処方する
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