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4月1、2日の相馬・南相馬

2011年04月03日(日)

南相馬の尾形薬剤師さんの日記。「お役所仕事」への不信感。
この非常時に、役人の勝手なお触れが回る、  訳が無いじゃないか。
阪神大震災の時も思ったが、強いリダーシップを求める。
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4月1、2日(金、土)  本日の相馬市・南相馬市(医療機関を中心に)

 

 1日(金)


 今日からは、公立相馬総合病院の朝のミーティングもなくなり、相馬市内の医療機関はほぼ正常に戻った様なので、いくつかの医療機関よ薬局の様子を確認した後、南相馬市の状況を確認しておこうと考えておりました。昼には我が子の用事で学校へも行ってみるつもりでした。


 思ったように、医療機関や薬局は患者の数も減り、落ち着きを見せているようでしたが中でお話を聞くと、そうではありませんでした。

今日から4月。レセプト請求の準備が始まっていました。震災直後は、処方箋なしでも医薬品情報だけで調剤し、薬を出していました。保険証もない初めての患者に自己申告だけでとりあえず薬を渡していました。

 お金がない患者には、一部負担金も足らずにそうしていました。逆に公費負担医療の対象者になっていた患者に確認ができないので一部負担金を求めてしまっているケースもあることがわかりました。


 国は3月11日付け事務連絡で都道府県に対し、「東北地方太平洋沖地震による被災者の公費負担医療の取り扱いについて」、「平成23年東北地方太平洋沖地震による被災者に係る被保険者証等の提示について」という通知で説明し、都道府県も各関係機関や薬局に通知したということでした。しかし、その通知は医療機関にも薬局にも届いていませんでした。少なくとも、ここ相馬市にはひとつも。なぜなら市内の大部分で17日までFAXもメールも使用不能だったのです。

 通知した側は、そのことにうすうす気づいてはいたのかもしれませんが、確認する方法もその当時はなかったことも事実です。法律や事業別に10件について今回の特例の取り扱いが記されておりますが、一部負担金等を患者から取ってしまった場合の返金の方法等具体的には示されていないものも多く、医療機関の窓口や県や市の窓口はこれからも混乱が起こり続けると思われます。

 通信手段が回復し、おおよそ予想されるケースが想定される今、国は再度必要な通知やQ&Aを早急に出して混乱を避けるべきだと思います。被災者と関係機関の負担をできる限り軽くするために。レセプトが提出されてしまった後のケースも想定して、対応策を示していただければなおよいと思います。ただし、返金等受けるために、患者や行政窓口が大きな負担になるような手続きは避けるべきと考えます。医療機関での受診・窓口負担についての免除の条件の確認方法についても、国の説明がもっと必要です。窓口に来た患者に「住宅は半壊ですか?」と聞いて、なにをもって半壊を説明するのでしょうか。原発からの距離の問題もです。半径30km圏内を患者がどうやって医療機関に説明するのでしょうか。決めた方に実際にやってもらいたいです。きっと住所や連絡先をカルテに記録すれば十分だと言うでしょう。それは、平常な場合の話であって、避難所を転々とせざるをない被災者が連絡先や住所を持つのでしょうか。それが確認できない場合、医療機関や薬局は回収できない負担金をかぶることになるのでしょうか。

 被災した方を自分たちは避難せずに助けたために、多くの負債を抱える結果となり倒産の危機を迎えるなんてことは決してあってはならないと考えます。回収不能分については、一律市町村に届け一次負担していただき、後に国がその分を負担するようにするのが現実的な解決策ではないかと考えます。小さな医療機関や薬局は耐えられないと思います。直ちに助けてあげないと医薬品等の購入支払いで倒産してしまいます。


 子ども学校へ行ったついでに、相馬港の様子を見てきました。私の知っている相馬港、松川浦の町は、消えていました。高台であったはずの場所にも家は一つもありませんでした。津波の高さはどのくらいあったのか想像できませんでした。人々は粉々になった家のがれきを少しずつ片付けはじめていました。


 午後から南相馬市の臨時診療所や南相馬市立病院へ行ってきました。病院は薬剤部だけ訪ねました。臨時診療所は落ち着きをみせておりました。薬剤部は、方針も定まらず、継続処方のみ調剤する作業が続き、疲弊していました。決断できないのは30km制限によることは明らかです。屋内待避、自主避難。

 なんと曖昧で矛盾だらけ、別の言い方をすれば無責任な措置でしょうか。そこに生活するひとが2万にいるのです。その健康を守ろうとする人たちも。新学期がすぐそこです。学校を再開できないなら、親はどうすればよいのでしょうか。出て行くしかないのでしょうか。残る老人達の生活はどうなるのでしょうか。医療は?すべて繋がっているのです。国民は等しく教育を受ける権利があるのではないのですか。憲法で保障された権利を守るのは国の責務でしょう。一般の国民そう考えているはずです。

 早く、責任ある明確な方針を示していただかないと、大混乱になります。もう、すでにその混乱は始まっているのです。


 地震と津波のよる避難民、次は原発避難民、そして教育避難民が国内をさまよう事態になりつつあります。

 

2日(土)


 余震の回数は、ずっと減ってきたように感じます。その強さも弱まってきているようです。このまま、収束してくれればよいと思っています。


 本日初めて、宅配便が届きました。坂田さん、ありがとうございました。郵便は先週末あたりから届き始めていたのですが、民間の荷物は今日が初めてでした。


 今日は、公立相馬総合病院は震災後初めて外来が休み、通常どおりの救急のみの体制に戻りました。門前の3薬局もお休みです。でも、レセプト関係でシャッターの奥の電気は暗くなってもついておりました。きっと一枚一枚、悩みながらの請求事務なんだろうなと思うと心が痛みました。


 昼からは、公立相馬総合病院の精神科外来の準備等を実際に手伝いました。今日から獨協大の2クール目。ドクターが代わり、土曜日の午後の診察ということもあり、薬局とうまく連動できるか不安があったので張り付きました。病院の事務員、相双保健所の保健師、ボランティアで南相馬市の精神病院である雲雀ヶ丘病院の看護師が対応に当たりました。受診した人数は7名でしたが、1時前から4時過ぎまでかかりました。複数の医療機関の患者が来院しており、前回処方も精神科らしい内容で、ぎょっとする品目数や分量だったりして、診療に当たった医師もとまどっておられました。私は、対応可能な薬局を探しながら患者さんの処方箋をチェックし、薬局の在庫状況を確認して患者に処方箋と情報を提供しました。


 夕方、相馬市役所の市長室を訪ねると、相変わらずパワフルに仕事をこなす市長にお会いすることができました。ひととおり、現状を報告すると、やはり南相馬市の医療インフラの重要性に話が向きました。来週からいくつか外来診療を始める病院や診療所がある情報は共通でした。ここで問題が、入院加療を必要とする患者が外来から現れた場合の問題です。病棟を再開する病院がないと、本当の意味での医療インフラは整っていないことになります。市長は副知事と相談のうえ、大町病院の病棟のオープンにに向けて体制整備を推し進めていくことにしたようです。


 だんだんと外堀は埋まってきました。人が住める南相馬市へまた一歩、歩みを進めたように思います。しかし、大きな問題はまだまだです。盛んに海の汚染について報道されていますが何か変です。プルトニウム等放射性物質等の濃度です。基準の何倍とか。基準を報道してください。わからないんです。それから採水ポイントは、なぜ排水口の330m地点なのですか。教えてくだい。その距離の意味も。実際15km、30km地点でも採水してるそうですがその数値をなぜ報道しないのですか。特に繰り返し報道するNHKさんには、その解説をする義務があると思うのですが。一般の方は、NHKをもっとも信じています。そんな根拠もないけれど。だからこそ、科学的でわかりやすい、確かな情報を報道する責務があるのだと思います。

 しかし、マスコミの視点は、時に少し違った価値観でとらえることがあるようです。被害者がいれば、加害者いる、など典型です。罪のない人に危害を加える犯人がいる。今回は、その判断や解釈が非常に難しいケースだと考えます。犯人は、地球です。地球人はみんな、その被害者です。でも、その後に起きてきている二次的被害の加害者は、人間ではないでしょうか。その誤りを早く見つけて是正する必要があると思います。但し、今は非常時です。原因究明、再発防止は後でゆっくり考えましょう。救急救命、緊急対応を全て片付けなければなりません。そのマンパワーすら不足している現場があることを皆さんに理解してもらいたいと思っています。


 生意気なことを言って済みません。許してください。率直な意見として聞いてください。反対意見が多いことも理解しています。

 

尾形眞一

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この記事へのコメント

南相馬の尾形薬剤師さんの日記、さまざまな思いを胸にいつも拝読させていただいておりました。
今回も御意見御尤もなことと思います。個人としても一医療関係者としても是非、患者さんのために被災地に留まり、医療を続けられた方々に不利益の生じない措置がとられることを強く望みます。
今後とも是非「相馬・南相馬の現状」と「率直な御意見」をお聞かせいただければと思います。
私事ではございますが、尾形さんには大変お世話になりました。今後とも会津の地よりご活躍を応援しております。

Posted by 佐藤典子 at 2011年04月04日 01:34 | 返信

佐藤典子さま、長尾です。
南相馬には今後も目を離しません。
桜井市長を応援しています。

Posted by 長尾和宏 at 2011年04月07日 11:10 | 返信

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