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16年前の阪神から東北を想う

産経新聞4月15日掲載、震災シリーズ第一話

2011年05月29日(日)

なんだか、遠い昔に書いたような気がする。
この気持ちは今も変わらない。
便シリーズを1話書いたところで震災があり、急遽「震災シリーズ」に変わった。

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4月15日   16年前の阪神から、東北を想う (東日本大震災特集・第1話)

届けよう、知恵と後方支援 


 4月9日、私はクリニックの仲間たちと毎年恒例の「在宅患者さんを囲むお花見」を催しました。例年と違うのは、被災地から尼崎に避難されている被災者4名にも参加頂いたことです。偶然にもクリニックのすぐ横に、津波で家が流された被災者らが身を寄せておられるのです。


 16年前の阪神大震災の時、私は市立芦屋病院の勤務医として無眠不休で医療活動に埋没していました。しかし今回の東日本大震災は何もかもが16年前とは桁違い。地震に加えて津波と原発の3重苦です。震災翌日から、県内の医療者たちが相次いで被災地に入り様々な活動を継続しています。いま彼らから異口同音に聞こえてくるのは、範囲がとてつもなく広い(500km)こと、人が全く足りないこと、情報が少ないこと、物資は届いても現地の連絡網が無いこと、など。16年前を経験した我々には何となく想像できます。


 津波や原発の映像を見ていると我々は何をしたらいいのか、何が出来るのか、じっとしていられない気持ちになります。そのため遠く離れた地域でも不眠やイライラで体調を壊す人が増えています。さらに日本全体にどんよりした「不安」が広がっています。パニック発作を起こす人もいます。復興できるのかとう不安は、16年前も同じでした。しかし予想を上回るスピードで見事に復興が進みました。今回の震災は、まさに戦後最大の国難。1ケ月が経過した今、公、民を問わず、国を挙げての被災者救済、復興支援が急がれます。


 今後、ボランテイア活動で被災地に入る人が増えるでしょう。しかし被災地には、まだ水道・電気も無ければ宿泊施設も壊滅状態の所も多くあります。被災者にご迷惑をおかけしない「自己完結型」であることが求められます。寝袋で廊下に寝ることも覚悟しなければなりません。インフルエンザやノロウイルスが蔓延しています。現地の医薬品を消費しないように、多少の「常備薬」を持っていきましょう。ボランテイア組織に入って活動しましょう。

被災地に駆けつけて活動することを「前方支援」、こちらに残って物資を送ったり、
「疎開者」のお世話をすることを「後方支援」と呼びます。私たちはすでに様々な物資や医薬品を集めて、困っている施設にお届けしました。民間会社のトレーラーに「相乗り」させて頂きました。個人別に仕分けして送るなど兵庫県ならではの後方支援は、16年前に得た知恵が活かされています。


 私の近くに「疎開」されている被災者の医療には、「災害救助法」が適応されています。住所氏名、生年月日を書くだけで無料で医療を受けられます。彼らは家が津波で流されたので帰る場所もありません。かといって簡単に遠方に住居を構える訳にもいきません。何度か被災地と疎開先を移動しリフレッシュして頭を冷やしてから、今後を考えて欲しい。しかしその移動に一番お金がかかるのです。私は、新幹線などの鉄道を被災者が無料で利用できることを今、提案しています。医療機関の窓口で、住所氏名、生年月日を書くだけで無料で乗れるのです。災害救助法を「医療」のみならず「交通」にも適応すればどんなんに救いになるでしょう。温泉地等での癒しは、これから予想される大勢の「PTSD」を少しでも減らすことができるはずです。


 外国からも多くの義援金が届いています。彼らに負けないよう頑張って寄付しましょう。そしてできるだけ早く被災者に届くよう、要望しましょう。長期戦です。我々にできる「後方支援」は沢山あります。阪神大震災を経験したものの「知恵」を、今こそ東北に届けたいものです。

キーワード:PTSD心的外傷後ストレス障害。

命にかかわるような災害や事故などで心が傷つくと、不眠、悪夢、イライラ、うつ、パニック、フラッシュバックなどの症状が出る。カウンセリングや薬物療法などが有効である。

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この記事へのコメント

16年前、高校3年生でした。
地面が割れ
崩れた民家の前で友人とあう
阪神からできることはあると今もなお思います

Posted by きみきみ at 2011年06月01日 09:24 | 返信

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