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胃瘻を抜いて死なせて欲しい。
死んでもいいから食べさせたい。

こんな相談が毎日寄せられる。
朝から深夜まで、家族との話し合いになる。

病院から出れない人も多い。
「退院したら死ぬで」と脅されている。

毎日、毎日、こんな相談ばかり。
診察室で、泣かれると診察も滞る。

病院の先生は、現実を知らない。
食べさせることの大切さを認識していない。

何度も何度も話しているうちに、
私の説明はシンプルになってきた。

まず、
「病院と在宅の考え方は、１８０度真逆です」

このように結論から述べる。
ここでご家族の目は、点になる。

高カロリー輸液をして、週３回水を抜く患者さんには、
「水を入れるから抜くことになる。まず、水を入れないことから始まる」

ここでさらに混乱。
すかさず、

「退院ではなく、自力で脱北してください」
「病院の先生と一生お話しても通じませんよ」


ご家族の頭には、おそらく
「脱北」という言葉しか残らないであろう。

しかしここまで言わないと、家族に理解してもらえないのも事実。
こちらも忙しいので、こんな話を毎日、何時間もできない。
短時間で理解してもらうには、こんな乱暴な表現しかできない。

実際に家に帰ってくる。
笑顔が出る。

水を飲ませる。
絶対に食べさせたらいけない、という病院の指示は何だったの？
と、私に聞かれても分からない。

「じゃあ、これまでは何だったの？」
これは全員から発せられる質問。

「さあ、幻だったんじゃないでしょうか」

ごめんなさい、病院の医療者さん。
でも、末端医療者としては、こう説明しないと論理が合わなくなるので・・・