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福島からの悲鳴
2011年10月10日(月)
帰路の途中、福島県の尾形さんからの手紙が届いたので、転載させていただく。
緊急時避難準備区域の解除と、除染作業の進行が連動していないことを皆で怒ろう。
福島県の尾形です。10月3日に報告したあと、次々といろいろな具体的な情報が飛び交い、その確認に追われてしまっておりました。
9月30日の緊急時避難準備区域の正式解除に伴い、関係機関の様々な動きや関係住民の不安や動揺でご相談も増大しました。具体的には、今回の区域解除と東電の保証は無関係と東電の相談窓口は言っているが信用できないとか、解除の理由が理解できないとか、どうして被害者が除染作業をしなければならないのか、県は国の具体的線量と補助金の関係を飲んだのかなどです。
私は9月30日に、休みを取っていわき市へ行っておりました。いわき市保健所の現状と双葉地域からの避難者の医師や薬剤師と会って相談を受けるためです。また、臨時広野町役場で広野町の薬剤師さんと一緒に町長さんとお会いしようとアポイントもとっておりました。広野町は原発20~30kmのすっぽり入る地域で、緊急時避難準備区域だったのですが、町全体で主に隣のいわき市に避難した地域です。役場もいわき市の常磐にあるある企業の中に借り庁舎を設置しています。南相馬市の原町区と同様なのですがほとんど報道等されておりません。南相馬市の原町区は約半数が避難したのに対し、広野町は95%が避難しております。町は、戻るためには除染の完了を条件としております。この件と避難者の現状については次に詳しくご報告するとして、県全体の避難者の概要と除染について本日はご報告いたします。
1 避難者の概要について
8月1日現在の情報として福島県復興ビジョンの資料では、避難者数73,444人、内県外46,295人とされております。9月8日調査の復興対策本部の資料によると、県外への避難者は全ての都道府県におよんでおり56,281人と公表されました。つまりひと月で1万人が福島県を出て行ったことになります。また、10月1日の福島県内の応急仮設住宅入居者数や借り上げ住宅入居者数を避難者、自罹災避難者(避難地域外の住民が放射線量の問題や住宅の罹災で避難)を含めて合計すると約8万6千人が入居しているというデータがあります。この数字と県外避難者数を合計すると、時期は少々ずれますが、約14万2千人が避難していることになります。
避難している方々の立場に立つと、更に驚く現実があります。10月6日現在の情報で、未だに1次避難所(学校の体育館や公民館等)で生活している方々が県内に95名もおります。また、徐々に人数は減ってきていますが、応急仮設住宅や借り上げ住宅に入れずに2次避難所(旅館やホテルなど)で生活している方々が1,393人もおります。震災後間もなく7カ月になりますが、応急仮設住宅については、要求戸数16,164戸のうち未だ未着工が377戸、8.8%に当たる1,425戸が未完成です。私は自宅の隣に仮設住宅が造られたのでその建設の様子を見ておりましたが、約1週間で70戸が完成しました。政府はことあるごとに最大級の表現で、急いでいると努力しているとか言っておりますが、とても信用できません。現に、今会津若松市で着工した200戸については、3月末には土地を地主から提供されておりましたが、10月になっての着工です。
2 除染について
原発事故直後は、被曝者に対する除染ということばがメディアを通じて流れましたが、汚染された地域の空間放射線量が明確になるにつれて、地域の除染の必要性や実際の実施結果について線量として報道されるようになりました。その後、政府は線量により誰の金で除染を実施するのかに話題をずらして行き、予算化が除染そのものとなるがごとき報道を繰り返しメディアから流し続けました。これによって大きく2つの事実を覆い隠そうとしているように思えます。
一つ目は、除染が実現可能な行為であることを一般の国民に植え付けたことです。増税し、予算化して除染する、これが復興の一番の決め手であるかのように国民の多くは納得していると思われます。しかし、現実は大きく違います。学校の校庭のような広い平らな土地なら、降り積もった放射性物質を削り取りどこかへ移動すれば確かに空間線量は下がります。通常の10~20倍程度(0.4~0.8μSV/h)になった校庭が数多くあります。しかし現実はそのような場所ばかりではありません。実際の民家ではまずは屋根や壁、外回りの側溝などの汚染が強く、高圧洗浄機やブラッシングで何時間もかけて洗浄しています。しかし、庭や樹木、雑草など取り除けるものと除けない物、更にそれらの廃棄場所が普通はありません。汚水も当然ためて処理なんて現実にはできません。流すだけです。そんな苦労をしても、20%~40%程度の減少しかないのが普通です。汚染水が別のホットスポットを造る弊害も、また、作業者の被曝も問題です。メディアの除染と言う言葉に、100%の線量減少を信じる人はいないにしても、安全が確保できると信じている国民は多いと思われます。農地や山林に至ってはまず方法も効果も費用も何もかも未知数だと私は思っております。冬に汚染された枯れ葉が散って、粉々になり、風に飛ばされればまた地域を汚染するのです。政府の3次補正での除染予算は2,000億円だそうですが、どこをどうやってだれが除染するのか、その廃棄物はどうするのか、いつまでに実施するのか説明して欲しいものです。
2つ目は、誰の責任かということです。通常、個人の土地に健康被害の可能性を否定できない物がばらまかれたら、ばらまいた人が責任をもって原状回復するのが当たり前の義務であり、刑事的にも責任があると考えます。従って、放射線レベルを通常の0.04~0.08μsv/hまで、政府、原子力保安院、東京電力が除染する義務があると考えます。なぜなら、政府が認め保安院がお墨付きを与え、東京電力がそれによって利益を上げて何十年も会社を維持してきたのですから。地元で生活する私たちには、何の落ち度もないはずです。なのに、なぜ被害者が汗をかき、お金を出して原状回復しなければならないのか、全く理解できません。現に、緊急時避難区域を解除された南相馬市の5つの小中学校は、父兄や先生方が一生懸命除染作業をしています。1円も費用は県からも国からも出されていない。父兄が雑巾を縫って持参し、校舎を拭いているのです。こんなばかなことがありますか。私は、こうした光景を目の当たりにし続けていて、福島県民いや汚染被害者全員訴訟しかないと考えるようになりました。国と東京電力は、通常レベルに下げるまで除染し続けること。できない期間は、その被害者である住民及び避難者に、1日3,000円程度の慰謝料と、被害実費を保証することです。この程度のことは、当然だと思いますが間違っているのでしょうか。地域の方々は本当に疲れています。あきらめの心持たされようとしています。なぜなら、一部の方々以外ほとんどの県民は、1円の保証も無い中で、必死に努力することを強いられているからです。
県職員、市町村職員を増やしてください。そのための援助を政府にしていただきたい。
そして、各種インフラ整備のための予算を、今すぐ流してもらいたい。全被害者に保証金を月単位で交付していただきたい。もう生活ができなくなっている方々出てきているのです。生活のために子供達が進学をあきらめることが実際に起きようとしているのです。
もう一度、誰の責任か皆さんで考えていただきたいのです。
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