このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
オールアウト
2011年10月31日(月)
ここでは綺麗事は通用しない。オールアウトなのだ。
あるのは、自然に身を任せて、寄り添うだけ。
精神病を持った、寝たきり患者さん。
背中がとても痛いが、ペインクリニックでも痛みが取れない。
麻薬を使いたいが、服薬管理ができない。
介護保険枠はヘルパーさんで埋まっていて
訪問看護は一切入る余地が無い。
お薬はすべてヘルパーステーションで管理している。
そこに置いておくと全て飲んでしまう。
睡眠剤や安定剤や痛み止め。
だからヘルパーステーションに置いている。
しかし麻薬は置けない。置いたら違法。
もっとも訪問看護ステーションにも置けないが。
患者宅の秘密の引き出しに置いておくこととした。
3ケ月以上続く痛みを慢性疼痛と言う。
オピオイド(麻薬)が、慢性疼痛にも認可された。
そのような患者さんは大勢おられる。
緩和医療は、病気の種類を問わないので、嬉しいこと。
しかし、処方ができても、管理ができない。
在宅緩和ケアの難しさは、薬剤管理にある。
精神科からの薬も大量に飲んでいる。
1年以上、ヘルパーさんがもらいに行っていたそうだ。
今度からは、私に出してくれと言う。
そもそもこの方は、在宅医療の適応だろうか?
しかし病院は、認知症を理由に入院させてくれない。
もしくは、「緩和医療が必要」と言っただけで断られる。
入院できる精神科病院は、かなり遠いところにある。
市外に長期入院したら生活保護が打ち切られる。
精神科で攻めても入院は難しい。
・在宅も大変
・麻薬の服薬管理が困難
・市内の病院には入院できない
・入院できる精神科病院は遠い・・・
ヘルパーさんの電話は夜中中、鳴りっぱなしだそうだ。
当院も緩和医療を行っているが、疼痛いき値が低くて
どんな痛みどめも効きにくい。
結局、このまま在宅で診るしかないのか?
ウンコまみれの部屋で、ヘルパーさんと一緒に悩む。
オールアウト、だと感じる。
もうひとり。
末期がんの患者さん。
近隣、遠方、すべての病院が実質出入り禁止になっている。(あとで知った)
勝って気ままな言い分が激しく、そうなったようだ。
たくさんの病院にかかっていながら、主治医がいない。
どの病院の医者も、パーツしか見ていない。
抗がん剤、栄養補給、温熱療法、がんペプチドワクチン。
しんどくなると、「どこでもいいから入院させー」とわめく。
仕方がないので、適当な病院を紹介して入院させた。
ところが当日から折り合いが悪かったのだろう。
病院の地域連携室から文句の電話が入った。
「診療情報が不十分なので、貴院からの今後の入院は考えたい」と。
我々の手元にも、前医からの情報は無い。すべて本人からの伝聞。
最近の病院は、患者を選ぶ。
手のかかるひとは入院させてくれない。
それはそれで止むを得ないことだろう。
結局は、最後の砦で、地域の開業医が診ることになる。
しかし、患者さんの要求は満たされない。
まあ、100%満たさなくてもいいという考え方も多い。
・近隣のすべての病院に断わられ(出入り禁止)
・最期まで抗がん剤などのがん治療を希望していて
・それでも、毎日、「入院したい!」と言い続ける。
オールアウト、のような症例がたまにある。
しかし、結局は我々が診て行く。
診るといっても、看護師とケアマネが診てくれるのだが・・・
訪問看護が介護保険なので入れず困っている。
何のために、こんな変な規則になっているのか。
介護保険下でしか許されない訪問看護、にしても。
がん拠点病院至上主義にいる緩和ケアについても
現場の在宅医には、すべて机上の空論に思えてくる。
だから、政府・厚労省内に
「医療・介護連携サービス懇話会」ができたのだと思う。
しかし、なかなか、機能していない。
アリバイ懇談会なのだろうか。
たくさんの患者さんをほったらかして行く価値があるのだろうか・・・
結局、オールアウト症例は、名も無いやさしい看護師とケアマネが
世話をしてくれている。
このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
この記事へのコメント
長尾先生の宝塚市のソリオでの御講演の後、未亡人に癌患者さんの「胃ろうを止めさせた看護婦さんは何処の方ですか?」とお伺いしたところ、「癌専門の看護婦さんです」との事でした。こういう優秀な看護婦さんこそ、ケアマネジャーになるべきだと思いました。
しかし、この看護婦さんは鉄人28号みたいな、特別優秀な能力のある、看護婦ですね。
私はケアマネジャーとして、実務につくより、親の介護をして、親があの世に行けば、ヘルパーとして、働いた方が、無難だなと痛感しました。
Posted by 大谷佳子 at 2011年11月01日 12:30 | 返信
ガン拠点病院で看護師してます。
★暴言・暴力のひどかった終末期の患者さん。今はセデーションで眠らされています。
女性蔑視、看護師蔑視の暴言はヒドかったですが、
暴力は 点滴を抜く、モノを投げつける、といった程度。
ただ 大声で怒鳴り、ふらふら歩き出すため、他の看護に支障をきたし
看護師の疲労はピークでした。
精神科の医者によると、これがベストな方法だと。
本人は苦痛を感じてはいないのだから とのこと。
看護師からの「眠らせなくてもいいのでは?他に方法は?」の問いに
「看護師さん達でで意見分かれてるの??」 と。
もしも在宅で診られるなら 他の方法があるように思うのです。。。
★何度も再入院してくる患者さん。
いつもアンモニア脳症で緊急入院されます。
患者さんによると 訪問看護師は
アミノレバンの点滴を20分でおとし、
お腹が張って苦しいといってもなにもしてくれないとのこと。
本人の言い分だけを鵜呑みにはできませんが…
患者さんが訪問看護を変えてほしいと要望され
それをケアマネに伝えると
そんな要求ばかりされるのは納得いかない
もうこの患者さんは 診きれない と。
在宅を診ているのに 緊急入院させ、おまけに放棄するなんて
プライドはないのでしょうか。。。
この2つの相反する『オールアウト』寸前の例、
病院か 在宅か……
考えるほど分からなくなります。。。
Posted by 果実 at 2011年11月01日 02:15 | 返信
ごめんなさい。説明不足なんですが、宝塚市ソリオ3Rでの「何でも相談会」で、話題になった、癌センターの癌専門も看護婦さんを、長尾先生が「偉い看護婦やねえ。そんな優秀な看護婦が宝塚にも居るんやねえ!」と仰ったのは、癌の末期の患者さんに、何処かのお医者さんが、胃ろうをしようとしたのか、既にしたのか、分かりませんが、それを聞いた看護婦さんが「胃ろうは良くないから、止めるように私から先生に言います」と、仰った。すると奥さんが「私の目の前で、言って下さい」と頼んだ。それで、患者と家族の目の前で、医者と看護婦が(患者を、良い状態にする為に)喧々諤々の討論をして、看護婦さんが勝った。こんな話は、私には前代未聞の話でした。それで、私はお医者さんと、対等に堂々と討論して、患者さんの為に良い状態を確保した看護婦さんの話は、ケアマネジャーの研修会の症例報告には無い、珍しい良い話だと、長尾先生にコメントしました。
長尾先生が「コメントをくれ!誰もコメントをくれない!」といつも言ってるからです。
お聞き苦しい事がありましたら、お詫びして訂正致します。
Posted by 大谷 at 2011年11月03日 10:47 | 返信
恥の上塗りなんですけど、静かに考えますと、看護婦さんの気持ちも、お医者さんの気持ちも、患者さんと家族の気持ちもわかる様な気がします。
看護婦さんは、初めに「先生には、私から言っておきます」と言ったから、それで良かったんだと思います。患者の妻さんが「私の前で言って下さい」と言っても、正直に言いなりになる必要は無かったんじゃないかと思います。「そうね」と言っておいて、患者の家を出てから、すぐ携帯で、担当の医師に事情を説明する方が良かったんじゃないかと。
チームケアという意味では医師が患者の前で看護婦さんを叱責するのは厳禁なように、看護婦さんも医師を患者や家族の前で、論破してしまうというのもどうかなあと思いました。笑われると思いますが、近い将来、元看護婦さんが続々と医師免許を取れる時代も来るのでは無いかと思いますので。御批判があれば御指摘下さい。
Posted by 大谷佳子 at 2011年11月06日 12:22 | 返信
コメントする
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL: