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診療所も積極的にがん医療に参画を(その2)

2011年11月06日(日)

週刊「医療タイムス」への、連載、がん医療に関するその2を転載する。
がんと闘っている時こそ、身近な診療所が患者さんをサポートすべきだ。
誤った「がん拠点病院至上主義」に異議を唱えたつもりの文章だ。
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冬の時代の診療所経営10月号

診療所も積極的にがん医療に参画を(その2

 

 がん医療の進歩は目覚ましい。特に抗がん剤、なかでも分子標的治療薬は続々と新薬が登場しています。開業医が分子標的薬を投与する機会は多くはないでしょうが、これを投与中の患者さんが来院される場合はよくあります。従って、いまどきの開業医でも抗がん剤の知識は必要です。患者さんの持って来られた紹介状や薬の説明書から情報を得ることも大切です。現在、外来での抗がん剤治療が標準です。今後も、「抗がん剤は外来で!」という流れは変わらないでしょう。ボクシングに例えれば、リング(抗がん剤治療室)で弱った患者さん(ボクサー)を癒すセコンド係りが地域の診療所となって来るのでしょう。すなわち、がん医療は、がん拠点病院と地域診療所との「併診が標準である」時代になりつつあります。

5大がんの地域連携パスも各地で盛んに構築されています。この「がん医療の地域連携パス」に参画することが、地域のかかりつけ医に求められる時代です。がんが進行しADLが低下した場合、自然と在宅医療に移行します。「がんの終末期もできるだけ地域で診て行こう」という方向性がより明確になってきました。末期がんの在宅医療は、併診での抗がん医療の先にあるものだと理解しています。併診から在宅が始まる。それを意識しながら、抗がん医療には、そのサポーターとして診療所も積極的に参画すべきだと思います。

 がんの地域連携パスは地域により様々です。胃がんであれば、ステージ1ないし2までを対象にしたパスが多いようです。先日、「ステージ4は病院でしか診られないからパスは不要です」というがん拠点病院の医師の意見を聞きました。しかし私は反対だと感じました。「ステージ4こそ地域連携が必要」ではないかと。裏を返せば、いかに診療所ががん拠点病院に信用されていないことが垣間見えてきます。しかし、診療所が積極的に連携パスに参画することで病院側の意識も少しづつ変わってくるのではないでしょうか。ステージ4にこそ診療所が積極的に関わるべきだと思います。がんが進行しても、亡くなる直前までADLが良いのが、がんの特徴です。また介護用ベッドの導入には、介護意見書の作成やケアマネさんとの連携が必須です。主治医意見書は地域の開業医が書くべきだと常常主張してきました。病院の専門医には患者さんの生活状況を書くことはなかなか困難で、診療所のかかりつけ医の仕事とすべきです。

 さらに、生活習慣病や認知症を合併したがん患者さんが増加しています。正確に言えば、なにか余病を持ったがん患者さんが大半です。がん患者さんを生活者として診る役回りは、開業医です。この意味でも、地域のかかりつけ医の役割は大きくなる一方です。

 現在の新臨床研修プログラムには「地域医療研修」が組み込まれています。当院にもいくつかの病院から若い医師が研修にみえられます。そこでは以上のような実情を教えています。彼らが病院に帰られたら、研修の効果が表れます。全ては患者さん中心。決してがんという病気を特別視せず、地域の診療所が生活者としてのがん患者さんを診ることが大切だと思います。

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