このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

施設での高齢者虐待

居住系施設の再編は必至

2011年11月07日(月)

特養の6、7割で、虐待が行われているという。
大熊由紀子さん主催の勉強会での発表。
ジャーナリストの尾崎雄氏のレポートを、許可を得て転載させていただく。

2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 

<高齢者虐待は経営の問題である>

昨日、ゆきさんが司会する、特養ホーム良くする会のシンポジウム

「施設は人生最期を暮らす場として安心か!」を見てきました。

例によって独断と偏見のレポートをお届けします。

我が国の特養の6、7割で虐待が行われているとされる。

いままでに900の施設を見てきたという本間郁子「良くする会」代表は、

自ら撮影した"虐待現場"とされる施設の内部写真を映写しながら、

介護保険施設は「同じ介護報酬を取りながらサービスの質に格差がある」

と施設虐待について熱弁をふるった。たとえば、虐待を行った介護職員の

75%が2030代、虐待を受けた人はすべて認知症・重度者、虐待の種類

で多かったのは精神的(70%)と身体的(50%)だという。

その背景には事業所経営者の理念、使命感、能力の格差、自治体の

対応力の姿勢と格差がある。にもかかわらず、責任の所在が不明確だ

と訴えた。

千葉県高齢福祉課の櫛引宣子課長によると、虐待が頻発する時間帯

の実態を知ろうと、夜間の立ち入り調査をかけても拒否する施設がある。

すなわち、「虐待の普及」は介護現場の職員の資質・教育と管理の問題と

いうよりも施設事業における経営の基本問題、すなわち、社会福祉法人

の経営者の資質と法人の在り方に根本的な原因があるのだろう。

国際医療福祉大学教授の高橋紘士氏は、社会福祉法人の「社会還元度

指数」(松山幸広氏)を引用して、高齢者施設が社会貢献の度合いが低い

ことを指摘した。

それによると、聖隷福祉事業団、恩賜財団済生会の社会還元度指数は

2.201.43だったのに対して、高齢者施設(東京都内)は0.37だった。

これは都内の障害者施設(0.69)や生活困窮者施設(1.04)に劣り、全施設

類型で最も低い。このことは「高齢者施設が黒字を社会に還元していない

ことを意味する」(高橋氏)という。

とはいえ、「終の棲み処」と期待される社会的役割を果たしつつある

社会福祉法人おある。その一つ、同和園の橋本武也常務理事は

こう語った。

「虐待は起こりうる。なぜなら、(介護とは)人間がすることだから」。

その前提に立ってトータルリスクマネジメント委員会に虐待防止対策班」

を設け、介護職員の教育と啓発に取り組み、虐待防止に関する新聞、

Care For Life を年数回、園内で発行している。

また、提携する産業医は精神科医とし、職員の心のケアに当たる。

虐待をしてしまったスタッフも「深く傷つくため」からだ。

同和園は30年前から看護師の勤務を24時体制にし、看取りのケアを

実施しており、施設内で葬儀も行い、葬儀には職員も参加する。

「看取りのケアこそ、スタッフのモチベーションを高めます」(橋本氏)。

人の老いと死に最期まで付き合うことによって一人前の介護職に育つ

のだろう。介護人材が集まらないと言われるが、「平凡な人材の能力

を高めること」が施設経営の要諦である、ということだろう。

橋本さんは、それをB=f(P、E)とする「レヴィンの法則」に求めた。

B=ビヘイビヤー(行動)

f =関数

P=パーソナリティ(人間性、人格、個性、価値観...

E=エンバロメント(周囲の状況、集団の規制、人間関係、企業・組織風土)

虐待という行動の多発は、Pが劣化しているため。したがってEを強化する

ことによって事態を改善することが解決策に繋がるということ。

それは虐待防止だけのではなく介護施設の管理と経営のすべてに通じる。

在宅ケアの体制づくりは始まったばかり。在宅シフトのインフラづくりは

「保険者である市町村と(現場を担う)民間事業者がどこまでやれるか」

(宮島俊彦厚労省老健局長)どうかにかかっているのだが、正直言って

それがいま一つ見えない。

とすれば、やはり特養は「最期の拠り所」(宮島局長)になりそうだ。

その経営主体である社会福祉法人の在り方および類似の施設業態である

有料老人ホーム、老健など居住系施設の整理・統合・再編成は避けて

通れない課題だと思われる。

尾崎 雄(老・病・死を考える会)

2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

施設における看取る職員に対しての研修はとても少なく、
メンタル的にも追い詰められてしまうケースも多々あります。
人の死とは尊いものなのに、忙しさや書類、家族関係、職員関係…全てにおいて軽視されることは職員だけを責めるに値せず、法人経営者の中には経営優先とする者もいます。
上司や古株という人たちからのパワーハラスメントも横行している施設の風通しがよくならなければ、決して虐待は悪人だけがするというものではないと考える必要があります。
いつ自分がしてしまうかわからないという恐怖。
もちろん大半の方が虐待はしないのですが、ふと頭をよぎることは、どの介護職にもあります。

Posted by きみきみ at 2011年11月09日 07:54 | 返信

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ