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全国のお医者さんに至急のお願い

2011年12月26日(月)

全国のお医者さんに、被災地援助に関するお願いを申し上げます。
年末までに(もうあとわずかですが)被災地に「ふるさと納税」してください!
確定申告時に「税額控除」できて経費がほとんどかかりません。

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「もしドラ」をもじって今週発売の日本医事新報の書いてみた。
「週刊日本医事新報 第4574号(1224日号)」より転載させていただく。


町医者で行こう  (第10回)

もし全国の医師が被災地に「ふるさと納税」したら? 
                         
長尾和宏

 

東日本大震災から9ケ月が経過。津波の被害地域では高台移転に悩み、原発事故の被害地域では先が見えない風評被害に喘いでいる。筆者は阪神大震災の経験から孤独死を懸念し拙書「共震ドクター」(共著、エピック)にて、仮設住宅での引きこもり、アルコール依存症、うつへの対応や個人の二重ローン問題解消、震災孤児への支援等を提してきた。寒い冬を迎え被災地に行かずともできる支援を提案したい。世の中には様々な寄付や義援金があるが、経費がほとんどかからず確実に被災者に届く顔の見える義援金がある。正確には義援金ではなく、ほとんどが住民税として処理できる「ふるさと納税」を紹介する。

 

1円も届かなかった義援金

 16年前、阪神大震災で居住していた古いマンションが被災した。全国の友人・知人から「義援金を寄付したからね」との嬉しい便りを頂いた。しかし結局義援金は1円も届かなかった。何故か。住居が壊滅地区にあったため全壊、半壊が多く、マンションの自治会長として役所に文句を言っても「一部損壊で我慢してくれ」という言葉に引きさがったからだった。結局全壊と半壊には義援金が配分されたが、一部損壊は無視された。補修費だけでも百万円単位の支出を要したが義援金は届かなかった。阪神を経験したものとして義援金とはそのようなものだと知っているので、私は被災自治体に直接寄付をしてきた。(実はそれが今回の「ふるさと納税」であることは後で知った。)具体的には福島県相馬市の「震災孤児支援基金」に寄付した。相馬市がいち早く条例を制定し義援金の受け皿を作ったのでこの先駆的試みを成功させようと広く呼び掛けた。先日、立谷秀清・相馬市長(医師)から、義援金が奨学金として渡った子供たちの集合写真を見せて頂いた。涙が出た。寄付してよかった!という実感が込み上げてきた。

 

知られていない「ふるさと納税」の趣旨

「ふるさと納税」は2008年4月に公布された「地方交付税の一部を改正する法律」という一見地味な法律に基づく。しかし日本における税金の制度改革として革命的なものだ。安倍晋三内閣時代に菅義偉総務大臣の指示のもと高橋洋一氏が設計した。これは住民税を納める自治体を納税者が選べる制度であるが、この法律の革新性は日本初の「税額控除」である点であることはあまり知られていない。筆者は役所や税務の専門家のこの制度について聞いて回ったが、税の専門家でさえこの制度に詳しい方は皆無であった。さらに実際にこの制度を利用したひとは極めて少ないことも知った。さて、たとえば1000万円の所得のある人がどこかの自治体に100万円寄付したとしよう。もし所得控除なら所得から100万円引かれるので、もし税率が20%なら本来納めるべき税金から20万円が控除されるだけだ。すなわち100万円寄付しても税金は20万円安くなるだけなので、納税者はこの寄付行為に対して80万円を持ち出すことになる。一方、税額控除の場合は、所得ではなく支払うべき税金から100万円が引かれることになる。本来納めるべき200万円の税金から100万円が控除されることになる。この税制の本当の狙いは所得税においてNPO法人や独立行政法人への寄付を税額控除できる仕組みであったが、財務省の抵抗で断念された経緯がある。しかしこの制度の趣旨こそ、今回の震災に活かすべきだ。

 

税額控除の実際

 まず自分が義援金を送りたい各市町村を決める。振込先はインターネットで簡単に見つけることができる。漠然と○○市町村に寄付をしてもいいし、○○市町村のHPの中にある△△支援条例と具体的に選んで寄付をしてもいい。いずれにせよ送金すれば自治体から証明書付の領収書が発行される。これを確定申告すれば、所得税は寄付金控除、住民税は税額控除が受けられる。合計の控除率は所得と納税額によって異なり概ね60~99%となる。地方税である住民税の住民税所得割額の1割が限度というのが効いてくるので多額の寄付をした場合は控除率が低くなる。ちなみに年収1000万の人が10万寄付した場合は99%が控除される。以下、簡単な控除率の試算を示す。①年収1500万円の4人家族が100万円寄付した場合、控除率は53%。寄付額18万円の場合の控除率は99%。②年収2000万円の4人家族が100万円寄付した場合の控除率は58%。寄付額が26万円の場合、控除率99%である。控除率は概ね8~9割程度と覚えておけばよいだろう。

 

医師が「ふるさと納税」する意味

 「ふるさと納税」は、自分の出身地という意味ではなくどこの自治体に対しても可能である。平均的な勤務医がもし20万円寄付すればその98%が税額控除される。自治体への寄付は、「ふるさと納税」そのものだ。しかも経費がほとんどかからない寄付、それが「ふるさと納税」なのだ。経費がかからない顔の見える被災地支援になる。あくまで個人の住民税に対する税額控除であり、法人は対象外だ。勤務医も開業医も同じように寄付できる。
 
 「もしドラ」ではないが、もし全国の医師が医師会や大学や医局単位で一斉に被災各自治体に「ふるさと納税」したらどうなるだろうか。医師数100人の病院の医師全員が20万円ずつある自治体に「ふるさと納税」しただけで2000万円もの寄付になる。もし大学病院で取り組めば億単位の寄付が可能だ。しかも経費がほとんどかからない。このようなことが出来る職能団体はおそらく医師だけではないだろうか。被災地に喜ばれ、持ち出しは僅か。対費用効果は抜群だ。「ふるさと納税」は今後の税制を先取りした制度。個人的には、税額控除率を本来の趣旨どうりに100%にして欲しいと願う。さらにそれをもし非常時には120%とするならどんなに素晴らしい制度になるのだろう。被災地へのお金の分配は政治を通じての上流から下流への配分だけでなく、医局や大学病院単位での直接分配もあり得るのだ。ふるさと納税は年末までに行えば翌年の納税時に控除が受けられる。善は急げ。こんな非常時には、すでに存在する社会制度を有効に活用したい。医師会をはじめ大学の指導者や医局長先生には、被災地への「ふるさと納税」の呼びかけを是非ともお願いしたい。

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