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病院のための退院支援

2012年02月01日(水)

「退院支援」という病院内でのみ流行っている言葉がある。
たしかに病院のゴールは、「退院」である。
しかし、「病院の退院」は、在宅医には「入院」である。
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1時間半もかかる県外の病院から、クリニック近くの自宅に戻る患者さんがいる。
病院で退院支援カンファをするから来なさい、との通知が来る。
何気なくやっているこの慣例習慣の誤りを指摘しておきたい。

1 支援すべきは「退院」ではなく、「退院後の生活」である。
  よってカンファは、病院ではなく自宅で開催すべきである。

2 病院には報酬がつくが、在宅側には報酬がない。
  逆ではないのか?
  ケアマネと看護師が、それぞれ半日潰して呼び出される。
  延べ1日の人的ロス、人件費はすべて在宅医側の負担。
  
もっといえば、「病院の売上け」のために、在宅側から
  ボランテイアを献上するのが、この退院時カンファである。

在宅医側がボランテイアを提供しないと
病院側のノルマが上がらないという制度になっている。

かくいう私も、もちろん何度も出席したことがある。
末期がんに、なんと高カロリー輸液や、IVHをして退院さそうとしていた。
呆れていると、「どうだ、開業医にできるのか?」と聞いてくる。

病院勤務医のあまりの無知さに、話をする気にもならない。
かといって患者さんの前で恥をかかすわけにもいかない。
仕方なく黙って聞いている。

家に帰ってから、「本当の退院時カンファ」をやり直す。

おまけに、最後に、研修医がこう言う。
「何かあったらいつでも、夜中でも、病院に来てください」
「ありがとうございます。先生さま」

ここまでくると、開いた口がふさがらない。

「何かあれば在宅主治医に相談し、かかりつけ医を通してから
必要なら病院に連絡してくださいね。直接はやめてくださいね」
と言うべきではないのか?

退院時カンファとは、在宅側は被害者になる。
それに1日潰すのだ。
しかも、実際には半分しか返ってこない。

病院のための退院時カンファ。
少なくとも患者のためではない。

試しに一度、逆にしてみれば分かるだろう。

自宅で退院時カンファをやる。
病院主治医や病院看護師に、1時間半かけて自宅に来てもらう。
しかも、それらに対する診療報酬はゼロ!!!

これをやらないと病院側には分かってもらえないのかな?

地球は病院を中心に回っていると
病院は完全に勘違いしている。

「地域包括ケア」という概念を思い出して欲しい。
患者さん、地域を中心に地球は回っているのだ。
病院は、スライドの「辺境」に描かれている。

病院は、「地域包括ケア」の、ち、の字も理解していない。

これまではそれで行けたのかもしれない。
しかしこれからは、もうそんな時代ではない。

このブログを読んで頂いている、善良なMSWや看護師さんへ。
これをコピーして、医師や病院長にどちらが正しいか
一度聞いてみて欲しい。

厚労省のお役人さんにも、ここは考えて欲しい。

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この記事へのコメント

退院時共同指導料という項目での請求ができませんでしょうか?ただし、それとて決して人件費始め、それにかかわる診療所側の負担にみあうものではないと思いますが、、、。矛盾だらけですね。

Posted by 西の空 at 2012年02月01日 05:28 | 返信

前略。
先生の最近のブログ、エネルギーが渦巻いている感じがしてとても良いですね。
私の住んでいるところでは、基幹病院から「宛先のない紹介状」を持って来院されることがあります。
患者さんに対しては、どこでもいいから好きな医療機関を自分で探してこい。ということでしょうか?
その他の医療機関に対しては、事前の確認なしでも構わない、お前ら診ておけ。ということでしょうか?
旧帝国大学医学部以外は医者ではないと本当に思っていますよ。やつら!

Posted by おしげ at 2012年02月01日 09:21 | 返信

H県北部のがん拠点病院の元MSW(今は有床診のMSW)です
在職中は院外の先生方にはたくさん御迷惑をおかけしました
m(_ _)m

私は1時間半もかけておいでいただくことはしていませんでした 市内のおいでくださる先生方やケアマネさんに退院時共同指導や介護支援連携で算定できるように準備しました(診療や介護の報酬が算定できるようにしていました)

がん拠点病院勤務時代はグリーフケアの一環として自宅訪問をしておりましたが 今は訪問診療に同行したりしています 職場が変わり病院から見送る側から地域で受け入れる側に変わりました
今後も患者さんやご家族のために少しでも役にたてるように努力したいと思います

長尾先生のブログは本当に勉強になります
毎日楽しみにブログを拝見しボタンを押しています

Posted by 苺ちゃん(元在宅緩和ケアコーディネーター) at 2012年02月01日 10:03 | 返信

おしげさん、誤解していますよ。旧帝国大学医学部だって、偏差値とかいう基準でしか考えられない方々なら、東大以外は医者じゃない、ということになります。そんなことではなく、いわゆる学問として医学や病院医療こそ医療のすべてだと思って生活している医師がおおくいて、また世間知らずになりやすい医師は、その枠を越えられない、ということだと思います。世間でいう三流私立医学部卒業の医師であっても、基幹病院の医学と医療しか知らない医師は、ただ垂れ流しておしまい、ということになりやすいのではないかな。後は、開業医が適当にしておいてくれ、と、内心ではおもってしまうのでしょう。わたしも国立病院の医長時代はそんな思いがありました。ちなみに わたしは駅弁大学医学部出身です。

Posted by 西の空 at 2012年02月02日 10:17 | 返信

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