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町医者から見た禁煙施策

2012年02月29日(水)

インフルなのにタバコを吸いながら診察に来る患者さんがあとを絶たない。
日本医事新報の今週号の連載は、禁煙施策について書いてみた。
FCTCという国際条約も知らない国会議員がたくさんいる。
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2月25日発売の日本医事新報の連載記事に、

「町医者から見た禁煙施策」という小文を書かせて頂いた。

http://www.nagaoclinic.or.jp/picture_library/media/nihniji120225.pdf

FCTC(タバコ規制枠組み条約)は、条約。
TPPは、協定。

条約のほうが上位の約束事。
しかし日本においてのみ遵守されていない。

それどころか、兵庫県では一歩後退。
いや、かなり後退した。

残念で残念でならない。


第12回 町医者で行こう2月号  
町医者から見た禁煙施策      長尾和宏

 

喫煙死 年13万人という現実

 喫煙が原因(がんなど)で亡くなった日本人は、2007年に約12万9千人であると国際医学誌プロメデイシンに発表された。一方、高血圧が原因で亡くなった人が10万4千人と推定されている。喫煙、高血圧に次いで死者が多いのは、運動不足が5万2千人。次いで3万4千人の高血糖だった。日本人の年間死亡者119万人のうち本人の喫煙が影響した死亡者は約1割である。WHOの2004年の世界の死亡者約5900万人の分析でも、最多が高血圧で、第2位は喫煙だった。これらの数字を直視することから話を始めたい。世界においても日本においても、長寿の条件は、高血圧と喫煙対策に集約される。臨床の最前線にいる町医者の役割はこの2点こそが診療科を問わず最重要課題であると認識すべきであろう。


 2010年の国民健康・栄養調査によると、喫煙者の割合は男女合わせて19.5%であり、初めて2割を切った。男性の喫煙率は32.2%、女性は8.4%だった。厚労省は、がん対策推進のために現状から4割減を喫煙率の数値目標として新しい「がん対策推進基本計画」に盛り込む予定である。19.5%を12.2%まで削減するとのことだ。さらに医療機関での受動喫煙を0%とすることを目指す。この方針に現場の医師も全面的に協力したい。タバコで生計をたてている小売やタバコ農家に充分配慮しながらも、ゆっくりと急ぎたい。

 

FCTCを知っていますか?

 FCTCとは、「タバコ規制枠組み条約」のことだ。受動喫煙防止などを謳ったこの国際条約に世界の174ケ国が加盟している。TPP議論が盛んだが、こちらは「国際協定」。もちろん「国際条約」の方が上位である。しかし、そもそもFCTCの存在を知っている政治家が一体どれだけいるのであろうか。議員会館に喫煙室があることを見ても、我が国のFCTCという国際条約への無頓着さは異常だ。国際的に見れば公約違反であり直ちに是正措置を講じるべき事態なのである。しかし有識者の中にも、いまだにタバコは嗜好品だと言い張る方までいて国民は惑わされている。タバコは毒物以外の何物でもなく、喫煙者の7割は「ニコチン依存症」という病気であることは、論を待たない。


 私はタバコが原因で早逝したがん患者さんを何人も自宅で看取ってきた。この世にタバコさえなければ20代の若さでこの世を去ることは絶対に無かった!間違いなくタバコに殺された若者を診てきた町医者として、「タバコは毒物である」ことを強く意識することが医師としての矜持だと信じている。もちろん医師の中にも多くのニコチン依存症の方がいる。現実は単純ではない。しかし医師がその認識を持たずにいったい誰が啓発するのか。受動喫煙の方が健康被害が大きいことは今時は、中高校生でも知っている。しかし現状はどうだろうか。日本は世界で最も受動喫煙に寛容な国である。日本の常識は世界の非常識。

日本禁煙学会(作田学理事長)は、FCTC遵守を強く啓発してきた。FCTCでは受動喫煙を認めていない。いくら分煙しても受動喫煙は防げない。我々医師は、「分煙」という言葉に騙されてはいけない。「分煙を死語に」。これを全国の医師の合言葉にしたい。

 

兵庫県受動喫煙防止条例

 神奈川県では前・松沢知事の尽力で全国初の受動喫煙防止条例が制定された。しかし小規模な飲食店は除外され、完全な受動喫煙防止法には至っていない。そこで本年2月の兵庫県喫煙防止条例に期待が集まっている。日本初の屋内完全禁煙化がなされるか否かである。しかし県議会で様々な抵抗にあい「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会」の最終報告書よりかなり後退した内容となっている。飲食店や喫茶店などは除外され、分煙義務に従わない事業者や禁止区域で喫煙したひとには罰金規定で最終調整されそうだ。受動喫煙防止は、またもや事実上、骨抜きにされた。FCTC遵守の視点からは停滞どころか一歩後退である。兵庫県民の一人として大変残念。神奈川、兵庫では叶わなかったが、次の都道府県での挑戦に期待したい。そこでは医師が大きな声を上げて欲しい。

 

禁煙治療は「かかりつけ医」で

 健康保険で禁煙治療ができるようになった意義は大きい。当院ではこれまで630人の方に禁煙治療を行い成功率は約5割強であった。全国平均(約6割)より成功率が低いのは、私の非力もあるが、精神疾患を有する患者さんの禁煙にも挑戦しているからかもしれない。意外に多いのが子供の禁煙治療の依頼だ。保険規則では、20歳以上でブリンクマン指数200以上が保険適用の条件に定められている。しかし禁煙は早ければ早いほどいい。自費診療となると5万円以上かかる。未成年にも保険適応について是非門戸を広げて頂けることをこの場をお借りしてお願いしたい。大病院でも禁煙外来が続々と立ち上がり、喜んでいる。しかし禁煙治療には5回の通院が必要であり、地域のかかりつけ医で治療ができれば理想的だ。地区医師会が中心となって定期的に「禁煙治療の指定講習会」を開催し禁煙治療医療機関を大幅に増やすべきだと思う。禁煙は、本来、がん対策基本法の予防の項の根幹に位置づけられるべきであろう。


 高校や大学でタバコの講義を何度もしてきた。そこで必ず出る質問は、「そんな毒物を国がなぜ許可しているのか?」。大変真っ当な質問である。しかしこの質問に正確に答えるには少々、マニアックな知識が必要だ。新聞には書かれていない。もし子供たちに正確に答えたいと考える医師の方には、拙書で大変恐縮だが「禁煙で人生を変えようー騙されている日本の喫煙者―」(エピック)を是非ご覧頂きたい。マスメデイアのみならず医学界をも巻き込むタバコ戦略のカラクリを述べている。目の前のニコチン依存症の患者さんには何の罪もない。目の前の患者さんを救いたいと願う医師であるなら、それを操る国家システムや法律にまで目を向けて欲しい。

難しい話は横に置いておき、医師として、禁煙治療に関わり易い環境がある。すなわち、ニコチンパッチやバレニクリンによる保険診療が認められている。機は熟している。あとは、現場の医師の熱意で禁煙治療に取り組むことである。個人的には、歯科医師にも協力して頂きたいと考えている。

 



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