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「救急車を呼ぶ」ということ

2012年03月17日(土)

日本国では救急車は無料なので、誰でも気軽に呼ぶ。いや、呼びすぎる。
しかし高齢者の急変で呼ぶ場合は、その先のことまで考えておくべきだ。
3月17日の産経新聞朝刊の記事から転載させていただく。是非ご参考に。
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医者選びシリーズ第3回  「救急車を呼ぶ」ということ 

        蘇生・延命治療への意思表示

 

 
 市民の救急医療への信頼度は抜群です。夜中に38度の熱が出ると慌てて119番に電話をかけます。すぐに救急車が到着しても、搬送先の病院がなかなか見つからないことがよくあります。阪神間では数件の病院に打診してはじめて搬送先が見つかるのが通常です。救急車がすぐに到着しても患者さん宅を出発できません。仮に出発しても右往左往。これを「たらい回し」と呼ぶ方もいますが、間違いです。どの病院も救急患者さんが多すぎて受け入れることができないのです。「医者ならちょっとくらい診てくれてもいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。しかし人命に関わる処置を掛け持ちすることはできません。また専門外の領域に手を出して万一でも失敗したら、訴えられる可能性があります。ですから病院の当直医は無理したくても出来ないのが現実なのです。


 さて元気な若者の急病ならともかく、寝たきり老人であっても在宅主治医がいない方も結構おられます。ご家族が大病院にお薬受診されている。介護意見書までも病院主治医に依頼。そんな高齢者がある日の夕食の最中におかずを喉に詰まらせて目を白黒させながら呼吸停止しました。家族は慌てて救急車を呼びました。心臓マッサージでなんとか心拍は再開しましたが、人工呼吸器を付けられました。2週間目には気管切開が施され、1ケ月後には胃瘻が入りました。ご家族はおばあちゃんのそんな姿を全く想定していませんでした。「穏やかな最期を迎えさせたい」と漠然とイメージしていましたがその逆。「こんなはずじゃなかった」と後悔しながら私のところに相談に来られます。蘇生処置で息を吹きかえした後は、延命治療に移行します。しかし一度開始された延命治療は、現在の社会情勢では誰も中止できません。過去に家族の希望で延命治療を中止した医師は殺人罪で逮捕されたという歴史があるからです。お医者さんも人の子。逮捕されたくないのです。


 在宅で診てきて「余命はあと1日」と宣告した末期がんの方でも、いざ呼吸が止まると、気が動転した遠くの親戚が救急車を呼ぶ場合があります。救急隊が到着した時に心肺停止から時間が経っていたら警察が呼ばれます。本来、末期がんでの在宅看取りに警察はなんの関係もないのですが、そうなってしまいます。この場合、救急車を呼ぶという行為は警察を呼ぶことに繋がります。ですから私は「在宅看取りと決めたら救急車を呼ばずに在宅主治医に電話して待つように」と書いたパンフレットを配っています。事前にそれくらいはっきり言っておかないと、慌てるとついつい救急隊に電話してしまうもの。また救急車を呼ぶということは「蘇生処置も延命治療もフルコースでしてください!」という意思表示なのです。


 では、どうすればいいのか。末期がんや難病の終末期や老衰になったら、大きな病院に主治医がいても往診してくれる「かかりつけ医」を持つことです。「病院の専門医」と「地域のかかりつけ医」の二刀流。これが高齢化社会での医療の基本型となりつつあります。どんなことでもまず「かかりつけ医」にご相談を。また救急車を呼ぶ意味をよく考えてから119番をしてください。できるだけ「かかりつけ医」に相談してから救急隊を呼ぶことをお勧めします。

 

キーワード 延命治療

命を延ばす医療処置として人工栄養、人工呼吸、人工透析等がある。人工栄養には胃瘻や中心静脈栄養等がある。自らの意思でこれらを拒否することをリビングウイルというが、まだ法的には認められていない。

 

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この記事へのコメント


 信頼して“ 命 を 託 せ る ” “ か か り つ け 医 ”が、いないのです !!!

 心から寄り添って“ 診 て く れ る ” 医者が、い な い の で す !!!

      尼 崎 に  【 ひ と り 】 !!!

 ★ 先 生・・・探 し て く だ さ い !!

         教 え て く だ さ い !!

         お 願 い で す !!!!!

Posted by ❤ 寺田 薫 ❤ at 2012年03月17日 11:58 | 返信

とっても関心のある問題です。自分の死期を自分で決めたいと思っている私にとっては、病院は言ってはいけないところという感覚があります。極端かもしれませんが。何かがあっても病院に連れて行ってくれるな、と夫にも常日頃言っています。と言ってもまだ40代ですが・・・人生全うしたら、即死にたい。そう、今は思っています。農業やっている私にとっては、動物の死、植物の盛衰、身近なものです。それがどうじて人間だけがそんなに生きよう、生きたいと思うのか、不思議でなりません。(私の考えのほうが常識はずれだと言われると思いますが)
ステキなご提案ありがとうございました。ご活躍をお祈りしています。

Posted by キャンベルこのみ at 2013年02月07日 07:59 | 返信

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