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平穏死シリーズ
2012年04月29日(日)
これだけ「死」が話題になった時代は無かったが、今後ますます増えるだろう。
昨日の産経新聞朝刊から転載させていただく。
「平穏死シリーズ」第一回 平穏死できない現実
年老いて、病院とどう関わるべきか
今日からしばらく「平穏死」をテーマに書きます。最近、特別養護老人ホームの常勤医を務められる医師らが書いた「死」に関する本が相次いでベストセラーになりました。一昨年は石飛幸三氏の「平穏死のすすめ」であり、今年は中村仁一氏の「大往生したけりゃ医療とかかわるなー「自然死」のすすめー」です。これらの本が爆発的に売れるということは、「死」への関心が高まっていること。平穏死、自然死したい!という国民の声にみえます。しかし現実はどうでしょうか?結論からいうと、現代において平穏死するのは簡単ではありません。むしろ困難。自分自身で求めて勝ち取らないと、平穏死は難しいのが現実です。今回は、なぜ平穏死できないのか、その理由について考えてみましょう。
医療の発展とはすなわち人を長く生かせることです。医療が発展した結果、日本人の寿命は世界一になりました。長寿化は当たり前のように感じられるかもしれませんが、世界にはまだ平均寿命が40歳代、50歳代の国も存在します。少し前まで人生50年と言われたのが、現在は人生80年。その結果、少子化とも相まってさまざまな社会問題が起きています。
医療の発展を最も効率的に享受できる場が「病院」です。そこでは様々な専門職が集合しています。その責任者である医師という職種を見ても、内科、外科、耳鼻科、眼科と20以上に細分化しています。内科の中でも、消化器科、循環器科、呼吸器科、内分泌科、神経内科などさらにいくつもの細かな科に分かれています。さらに消化器科の中でも、消化管(胃、大腸)、肝臓、膵臓などにさらに細分化しています。西洋医学の発展とは、細分化の歴史でもありました。臓器別・縦割りで細かく分けることで、研究・分析が効率的に行えます。その研究の目的とは「長く生かせる方法」を模索することです。
そんな医療システムの中で、たとえば90歳になって徐々に食事が食べられなくなったとしましょう。内臓に特に大きな問題が見つからなければ老衰なのでしょう。しかし「病院」という場の中では、胃に穴を開けて体外から栄養剤を直接胃に注入する「胃瘻」という技術が簡単に使えます。患者さんは「胃瘻」により、一旦元気になり、床ずれも治り、食べられるようになり、笑顔が戻り、医療の発展による利益を享受できます。
しかしそれでもまたいつか必ず食べる量が減る時期がきます。その時には、また「胃瘻」のお世話になります。そしてついに身動きもお話もできない状態(いわゆる植物状態)になった時に、それを見守るご家族はふと思うことがあります。「これは果たして本人が望んでいるのだろうか?幸せだろうか?」と。生きていることそれだけで喜ばれる家族もいれば、生きている質(いわゆる生の尊厳)に疑問を抱く家族もおられます。しかし一旦始まった胃瘻はわが国ではもう誰も止めることができません。「平穏に死にたい」と願っていても気がついたら、植物状態になっても「延命措置によってただ生かされていた!」というケースが増えています。今日はまず「簡単には平穏死できない時代に生きている」ことを、身近な現実として知って頂けたらと思います。
キーワード 平穏死
「平穏死のすすめ」(講談社)を出版した特養常勤医の石飛幸三氏は、終末期の高齢者には過剰な水分や栄養を控えて穏やかな最期をと訴える。平穏死という言葉はこの本をきっかけに、自然死、尊厳死とほぼ同義で使われるようになった。
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