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骨折⇒入院による認知症

2012年05月14日(月)

産経新聞兵庫版、5月12日朝刊に掲載された平穏死シリーズ第二弾。
骨折⇒入院を繰り返すことによる認知症について書いた。
平穏死の第一歩は、まず転倒予防から。
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平穏死シリーズ第二回     骨折⇒長期臥床による認知症

               一にも二にも転倒予防

 

 歳をとるということは、筋肉量が落ちること。そしてその結果、転倒し易くなることです。町医者が「転倒」という言葉を耳にしない日はありません。毎日、誰かがこけています。大腿骨頚部骨折、腰椎圧迫骨折、肋骨骨折、腕の骨の骨折、頭部や顔面の打撲などなど。転倒で往診に呼ばれることが日常。かくいう私はまだ53歳ですが、慌てると時々こけます(恥)。さて転倒・骨折という不測の出来事がいわゆる「悪循環」の始まりとなる場合がよくあります。転倒⇒骨折⇒入院。これを2回繰り返すと、ある程度の年齢の方なら必ずと言っていいほど認知症状が出てきます。手術は成功したが寝たきりになった。そして認知症が始まって自宅に帰れなくなった、生活の質が落ちた、という話は昔からありました。しかし最近、特に多くなったような気がしませんか?

 認知症といえばアルツハイマー型認知症に代表されるように知らぬ間にゆっくり進行する病気。しかし入院を契機とした長期臥床による認知症も無視できません。寝たきり状態に陥るとすべてが悪循環となり、ついには廃用症候群、誤嚥性肺炎の繰り返し、そして胃瘻造設というコースが予想されます。ピンピンコロリが口癖だった可愛いおばあちゃんが、転倒・骨折から寝たきり、胃瘻栄養となり、気がつけばただただ生かされているだけの状態、という光景を何度も目にしてきました。どうして御本人の希望と真逆の結果になったのだろか?と振り返ってみると、あの転倒がすべての転機になっていました。平穏死できない原因は転倒に端を発していた。そうした苦い経験があるご家族の中には、超高齢の身内が転倒して腰椎圧迫骨折や肋骨骨折を起こしても入院を希望されないケースがあります。結局、寝たきりにも認知症にもならず「これでよかったんだ」と納得させられました。腕の骨の骨折や大腿骨頚部骨折でも同様な経験をしました。

 さて転倒予防が如何に大切かお分かり頂けたでしょうか。あちこちで「転倒予防教室」が開催されています。しかし転倒する確率の低い元気な人ばかりが集まり、肝心の転倒する確率の高い人がなかなか来てくれない、なぜなら転倒しそうでそこまで行けないから、というジレンマがあります(笑)。「メタボ」という言葉はあまりにも有名になりましたが、最近は「ロコモ」の時代です。「ロコモテイブシンドローム」という概念が提唱され、その自己チェック法として「ロコチェック(ロコモーションチェック)」や、ロコモ対策としての運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)があります。その詳細をインターネットで検索して御自宅で実践されることをお勧めします。

平穏死の条件、第2番目は、いかにして転倒を予防するかです。骨折⇒入院⇒手術⇒寝たきり⇒廃用症候群や認知症、という悪循環に陥らないことです。そのためには、一にも二にも転倒予防につきます。「転ばぬ先の杖」とは、まさに超高齢社会に相応しい言葉です。まだまだ健脚なひとは日々の散歩などを通じてそれなりに、また要介護認定の方はケアマネさんとよく相談して、住宅改修や転倒予防のための手摺りの設置など、自分に合った転倒予防策を是非とも真剣に考えてください。

 

キーワード:ロコモテイブシンドローム(運動器症候群)

photo59.JPG

腰や膝などの運動器を長く使った結果の障害による要介護状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい疾患概念。運動器は広く人の健康の根幹であるという考えに基づいている。






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この記事へのコメント

私の父は関西労災病院で、耳下腺腫瘍の手術をして、明くる、新年から、放射線治療で二ヶ月入院しました。
ところが、退院したその日に二階の、自室で、尻もち転倒して、TH12とL1~2の圧迫骨折になってしまいました。
それから、自宅療養をしましたけど、坂を転げ落ちるように、衰えて、最後は病院でMRSAに感染して死にました。

1~2年してから、兵庫県介護支援専門員協会の研修で整形外科のお医者さんに、「病院から退院した日に、転倒して、骨折するケースが多い」と聞きました。
先日の朝日新聞に耳下腺腫瘍の放射線治療は外来でできるし、その方が、筋肉力の低下が無いと書いてありました。
父は外来で放射線治療を受けたいと言っていましたので、残念です。

Posted by 大谷佳子 at 2012年05月18日 01:02 | 返信

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