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家族会

2012年05月24日(木)

在宅看取りをしたご家族13人をお招きして家族会を開催。
その様子を、今週号の週刊医療タイムスに書いた。
本当は13人だったのに、10人と書いてしまった。
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冬の時代の診療所経営5月号  

診療所と地域との絆としての「家族会」  長尾和宏

 

 在宅看取りを行っている診療所の多くが、看取りに関わったご家族を対象にいわゆる「遺族会」のようなイベントを開催しています。しかし当院ではこうした「家族ケアシステム」は決して充分に行えていませんでした。すでに500人を超える在宅看取りを経験し、医師や看護師が患者さん宅を空いた時間に「慰問」してはきました。しかし複数のご家族が集って語り合ったことは一度もありませんでした。そこで今年3月にクリニックに10人のご家族に集まって頂きました。在宅スタッフたちの長年の願いがようやく実現しました。黙祷の後、私が故人たちへの想いを述べ、看護師やケアマネガそれぞれの立場から率直な気持ちを述べました。それに触発された形でご家族も様々な想いを続々と吐露されました。  


 話をしながら泣き出すご家族、もらい泣きをする在宅スタッフ。無意識のまま抑圧されていたご家族とスタッフの想いが噴出し、ひとつになった瞬間でした。最後に全員で何曲か歌を歌いました。このような企画をして本当に良かった!と思いました。全く知らなかったご家族の想いを初めて知り、私自身も少し成長できた貴重な機会でした。これは看取りに関わったご家族のみならずケアスタッフのグリーフケアを兼ねています。また診療所と地域の絆を深める貴重な機会でもありました。「個人」対「個人」の関係であった在宅医療が、「地域医療資源」対「地域住民」という関係に少しだけ広がったと感じました。


 たとえ故人を偲ぶだけでも意味があると考え、訪問看護師が中心となりこの1年間に亡くなった方に手紙を差し上げました。出席者はその半数にも及びませんでしたが結果的に、10人位がちょうどいいと思われた人数でした。会のネーミングに悩みました。「遺族会」というネーミングは他の診療所での例で知っていましたが、どこか腑に落ちません。というのも「人類みな遺族」が私の持論だからです。ならば素直に「家族会」でいいのですが、なんだか平凡です。結局、毎年3月に開催することに決めましたので当院の場合は「弥生会」と命名しました。ちなみに4月にお花見会、12月にクリスマス会も開催しています。


 兵庫県立柏原病院における小児科医療を守る会のように、これからの地域医療再生は「患者力」に期待されています。とはいえ患者さんには、元来横の繋がりがありません。そのきっかけを最初に提供するのは医療者しかいないでしょう。最初は、医療者の呼びかけで集まった患者さんやご家族です。しかしできればその家族同志が連絡を取り合って例えば尊厳死に関する市民フォーラムを患者会や家族会に企画してもらえることを夢見ています。


 こうした家族会は診療所が真の意味での地域の社会資源となるための一里塚だと感じました。一方、健康教室や市民フォーラムなどの開催での地域貢献も大切です。しかし今回の家族会のような個人的な、あるいはスピリチュアルな交流の場ももっと大切にしたい。在宅看取りが増える中、「看取ったら終わり」ではなく、「看取ってからがご縁の始まり」と考えたい。これは診療所経営術というより経営者の志と認識したい。経営には、信頼が基盤。その信頼とは、クライアントと想いを共有し絆を築くことだと感じました。

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この記事へのコメント

吹田ホスピス市民塾をスタートして、7年目の市民グループ。当初から、患者・家族会を考えていたのが、漸く、2年前にスタート。患者でない私たちが主宰して大丈夫かと思いながらではあったが、毎月の会合を楽しみにされている方が多い。患者会の日程を優先して、その合間を縫って入院される器用な方、余命を告げられた方は、「何とか、次回の会合に出たい」と念じておられたり。
会合に出てこられなくなったある方から電話を頂いた。私が、「いつでも電話OK.必要なら、出前もOK.いつでも呼んでね」と申し上げたら、「それを聞いただけで、落ち着いた」と。
この会に、会員を亡くされた方などが参加されるようになったが、患者さんとご遺族が同席では、お互いに遠慮が出来始めた。
そこで、昨年末に、「ご遺族の会」をスタート(ネーミングは未決定)。まだ、登録メンバーは10名くらいで、毎回、数人がお話されている。聞けば、別の機会に、一緒にお茶を飲んだりもしておられるとのこと。嬉しいこと。先日は、HPをご覧になって、彦根から、今週は奈良から・・。近くの会を探しましょうかと申し上げたら、「この会の雰囲気が好きだから」と。これも、嬉しい。
まだまだ試行錯誤ですが、少しはお役に立っているかな。

Posted by 小澤 和夫 at 2012年05月24日 11:38 | 返信

「この会の雰囲気が好きだから」・・・素敵ですね!
いつかめぐりめぐってその方達も誰かのサポーターとなり
それを喜びにされる日が来ると思えます。

小澤さん達はどんなことに気をつけて
こんな素敵な言葉をいただける会を
運営しておられるのですか。
機会があったら読んでみたいです。

Posted by 梨木 at 2012年05月25日 01:19 | 返信

ご返信、有難うございました。このように、長尾先生から離れたところでのやり取りが出来るのは、とても嬉しいことです。
気をつけていること:実は、当初は、かなり、おっかなびっくりで、「こんなことを言うと、気分を害するかな」と思いながらのスタートでした。
でも今は、「余計に考え過ぎて、妙な遠慮はしないこと。指図・指示めいたことは一切しないこと。但し、適正な情報の提供は心がける・・・一緒にお話をしていると、自ずと皆さんが、ご自分で決めていかれる」、でしょうか。心があれば、少々の表現は許して頂ける。
そして、最も大切なことは、自己満足にならないこと。そして、皆さんとの会話の中から、私たちの大きな学習・・如何に生きるかを学ばせて頂いている。
技能(言葉は上手くないが)としては、「傾聴」の手法が役立っている。8年前に「吹田傾聴ほほえみ」がスタート。私は、副会長を任じられ、在宅部門の責任者でもあります。140人のメンバーで、年、延べ3,000回以上傾聴をさせていただいています。
がん患者さんのための「ピアサポート」が、国の方針でも示されている。3月に、「吹田在宅ケアを考える会」で、名古屋のNPO法人「ミーネット」の花井理事長のお話を伺う機会がありました。吹田でも、「吹田がん情報サロン」を作って、「がんのことなら何でも相談できるセンター」を作りたいと考えています。
尼崎では、既に、ピアサポートの研修会が実施されているようですが、吹田でも、是非実施をと思っています。
梨木さま、有難うございました。

Posted by 小澤 和夫 at 2012年05月25日 09:09 | 返信

小澤様
早速のお返事有難うございました。
長尾先生は心の広い方だし、アピタルのように半分公けのイメージもない個人ブログですから
お許し願えると思って書きました。というか、私は長尾先生のブログから、関連する世界が
広がっていったら良いなあと思っている者です。だめなら先生が不掲載にされれば良い事。

コメントを拝見して良い言葉を沢山いただきました。
私も東京で同じようなボランティアの一端に関わっていますので、お言葉が心に響きました。
「最も大切なことは、自己満足にならないこと」・・・初心を忘れずに行きたいです。
そして対等に、お互い学びあいながら。
さわやかな5月に、再び心を柔らかな若葉の頃にスイッチさせていただき、嬉しく思いました。
ご活躍をお祈りしています。有難うございました。

Posted by 梨木 at 2012年05月26日 12:58 | 返信

再三のメール、有難うございました。実は、今日、患者・家族会でした。今日は、医療費の話題が沢山出ました。これまでも少しは出ていたのですが、今日は、切実な話と色々な知恵が沢山・・。そして、お互いに知らないことが沢山あることも分かりました。本音が話し合えるなと、感じました。
昨年、「吹田在宅ケアを考える会」で、医療者が、「がん患者さんのコスト」を取り上げてくださいました。大変な力作でした。でも、今日の話からの大きな反省としては、「本当に、十分に、患者・家族の立場に立っていなかったのではないか」。
そして、前便で、漏れていたことを一つ思いだしいました。会合には、色んな方がお見え頂きます。在宅医、訪問看護師、大学の教員・・・。それに、他の患者会の方も。先月お見えの患者会代表が仰ったのは、「随分、明るい、楽しい雰囲気ですね」ということでした。
やや、自画自賛になりますが、私はダジャレ(もちろん、親父・・です)が好きで、我が家では相手にされませんが、この会では、皆さん、良く笑ってくださいます。年寄りを労わって下さっているのかも。
少しは、雰囲気が伝えられたでしょうか。梨木さまがお近くでしたら、お会いしたいと思っていましtが、遠くのようで、残念です。有難うございました。

Posted by 小澤 和夫 at 2012年05月26日 08:46 | 返信

小澤様へ
(長尾先生 この場を使わせていただくこと、お許し下さいね)

先日の「随分、明るい、楽しい雰囲気ですね」とゲスト様が仰ったというコメントが心に残っていましたが、昨日研修がありそのレジュメに、裏付けのような引用が載っていて、お知らせしたくなりました。もうお読みになりましたか。

「婦人公論」編集長が、6月7日号で阿川佐和子のインタビュー力について語っている一部。
【聞き上手の人とは】
「…どういうタイプが聞き上手に育っていくのかというと、これはかなり共通しています。
絞り込むと①笑い上戸であること、②ささいなことに感動し、驚く感性の持ち主であること、③聞く態度がゆったりしていること の3点でしょうか。・・・」

そのあと、聞く(hear)の他に、訊く(ask)、聴く(listen)があり、聴くは目と耳と心が組み合わされている傾聴のことと学んで、「傾聴」という言葉を作った方に感動しました。
先日いろいろ教えていただいたので、お礼の気持ちの情報提供でした♪
お元気でますます楽しくお過ごし下さい。

Posted by 梨木 at 2012年06月03日 09:50 | 返信

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