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生活保護バッシングへの反論への反論

2012年05月30日(水)

生活保護バッシングへの反論が新聞やネットで話題になっている。
明らかに筋違いの議論が交わされている。
私なりに論点を整理してみよう。

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生活保護は憲法に定められた社会保障制度。
弱者救済は、人の世の常。
問題は、制度の細則にある。

これは、各論で考えていくべき問題だろう。
制度が悪いのでなく、制度の細則が悪いのだ。

1)需給審査の甘さ
  身元が確認できない生保が250人もいた。
  誰でもなれる。
  資産調査が個人情報保護法が壁になりできない。
  兵庫県の銀行に1億あっても、大阪での資産がゼロならなれる。
  この法の甘さを撤廃するとの報道が、日曜日の産経新聞の1面に載った。
  ある生保担当の人から聞いた話では、3分の1が本物だそう。
  ということは、残りは偽モノ?

2)現金給付の愚
  現金14万円もらったら、誰でも遊びたくなる。
  そんな大金をまるごと渡すほうがおかしい。
  外国では、たとえば、食券という形で渡す。
  使途を生活に限定するのは当然。
  タバコ代に3万円使っている生保患者がいる。
  これを認めること自体が間違っている。

3)医療扶助が無料という愚
  生活保護費3兆円の半分は、医療費。
  もし世の中のレストランが、全てタダだったら?
  寿司とフランス料理をハシゴする。
  家族にお土産も持って帰るだろう。
  ただほど、人間のモラルハザードを麻痺させるものはない。
  100円でもいいから窓口負担すべき。
  今日のメデイハックスに載っていた。

生活保護の医療扶助「全て無料に違和感」梅村参院議員
 こんな票にならない仕事に取り組む議員もいてる。


以下のような新聞報道がとても気になる。
ここが会議場ならいくらでも議論したい。


親族援助 強化には弊害も

 2012/05/29 読売新聞大阪本社朝刊 3社面

 

 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん(37)の母親が生活保護を最近ま

で受けていたことに関連して、厚生労働省が生活保護にかかわる扶養義務の運用

強化を打ち出すなど、波紋が広がっている。

 

 そもそも扶養義務とは何なのか。実は義務にも程度の差がある。民法が定めて

いるのは、夫婦の相互扶助義務と、直系血族・兄弟姉妹の扶養義務だ。それ以外

の3親等内の親族が扶養義務を負うのは例外的な場合で、家裁の決定を経た時に

限られる。

 

 そして、1:夫婦間と、未成熟の子に対する親の扶養は「自分と同程度の生活

を保障すべき」という強い義務 2:それ以外の直系血族(成人した子から親、

祖父母と孫など)や兄弟姉妹は「自分の社会的地位にふさわしい生活を成り立た

せた上で余裕があれば援助すべき」というレベル――という解釈が確立している。

 

 一方、生活保護法は、扶養義務者の扶養は、保護に優先すると定めている。優

先するとは、親族の援助があればその分、保護費の給付を減額するという意味だ。

資産の活用のような保護の要件とは違うので、たとえ経済力のある身内がいても、

保護を受けられるかどうかとは関係ない。

 

 保護を申請すると、福祉事務所は扶養義務者に援助の意思を照会する。「でき

ません」「この額が限度」という答えなら、それ以上求めず、以後は年1回、照

会するのが従来の運用だ。つまり親族の援助は任意にとどめてきた。経済的余裕

の問題もあるし、親から虐待されていたようなケースもあるからだ。

 

 ただ、生活保護法には、保護に要した費用を自治体が扶養義務者から徴収でき

る、負担額の協議がまとまらない時は家裁が定める、という規定がある。厚労省

は、河本さんの事例をきっかけに、めったに使われていないこの制度の活用と、

援助できないという親族に理由の明示を求めることを検討している。

 

 問題は、その対象を相当な高額所得者や資産家に限定するのかどうか。強い援

助要請や費用請求を一般的に広く行うなら、影響は大きい。

 

 一つは生活困窮者が保護を申請しにくくなることだ。扶養意思の照会は、今で

も申請のハードルになっている。身内に恥を知らせて困惑させたくないと思うか

らだ。

 

 「親族の援助を保護の要件のように説明して追い返す“水際作戦”もあり、北

九州市では餓死者も出た。任意の援助の打診だけでなく、強制徴収に近い形にな

れば、身内に迷惑をかける覚悟をしないと申請できなくなる。自殺、孤独死、ホ

ームレスが増えてしまう」と吉永純・花園大教授(公的扶助論)は話す。

 

 二つめは人間関係だ。

 山本忠・立命館大教授(社会保障法)は「もともと日本の民法は扶養義務の範

囲が広すぎるという意見は多い。そのうえ、お金を負担させられると親族の関係

は悪化する。収入の少ない老親や病人、障害者などが、身内に負担をかける迷惑

な存在として扱われかねない」と指摘する。

 

 テレビ・週刊誌や政治家による河本さんバッシングの背景には、親を養え、と

いう伝統的な家族観があるのだろうが、まれなケースをもとに性急に私的扶養を

求めると、家族・親族の関係を逆に壊すかもしれない。冷静な議論が必要だ。

                      (編集委員 原昌平)

 

 

民法の規定(要旨)

 752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 877条 直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある。

   2 家庭裁判所は特別の事情があれば、3親等内の親族にも扶養義務を

      負わせることができる。

 

生活保護法の規定(要旨)

 4条 保護は、資産、能力その他あらゆるものを最低生活維持に活用すること

    を要件に行われる。

 2  扶養及び他の法律による扶助は、保護に優先して行われる。

 3  ただし急迫した事由がある場合に必要な保護はできる。

 77条 扶養義務を履行すべき者がある時、自治体は要した保護費の全部また

     は一部を徴収できる。

 2   負担額の協議がととのわない時は家庭裁判所が定める。


  


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この記事へのコメント

本当に支給の仕方に問題ありだと思います。
働ける世代の人には奉仕活動を条件に入れるとか
お金を使うときは専用のクレジットカードで支払わせるようにしたら何に使っているか把握できると思うし
どうしたらよいかわからないけれど日本の生活保護の出し方は変えていくべきだと思う。

Posted by ノバ at 2012年05月31日 08:51 | 返信

セーフティネットが生活保護しかないのが問題。生活保護世帯になる前に、何らかの支援や方法があれば、そして一人一人に寄り添う支援者がいれば、何でもかんでも生活保護にたよることがなくなるのでは。生活を支援することは、ひとりひとりの課題に向き合って、きめ細かい丁寧な支援が必要。

Posted by 社会福祉士 河本健二 at 2012年06月01日 07:43 | 返信

無い物ねだりの話のようになりますが。

自分の食いぶちは自分で稼ぎたい! 出来ることは自分でしなければ
お天道様に恥ずかしい、という誇りはどこに行ったのでしょうか。
これが無い限り、生活保護の審査や支給方法の修正は、或る意味有効ではあっても
またその裏道を探し出す人は必ず出てくるように思います。

どうして、慎ましくはあっても真っ当な生活をしていた社会が、変わってきたのでしょう。
格差社会がその原因? 雇用制度が崩れたから? メディアにはいろんな説が紹介されますが
でももっと貧しい時代でも、真っ当な人が多かったのは何故? 
どうしたら改善していけるでしょう。子育てかなあ・・・

勿論どうしてもサポートが必要な時に「助けて」と言えることは
大事な一つの自立(=自助努力)なんだよ、と子供達に教えてきた私ですが。

Posted by 梨木 at 2012年06月01日 10:15 | 返信

長尾さん、ノバさん、河本さん、梨木さんの意見に全面的に賛成です。働かなくてもお金をくれる道があるなら倫理観の麻痺した本人や家族はその安易な道を選択します。働きたくても仕事がない現在の世の中ではギリギリに努力しても収入が得られない人たちがいます。そのようにギリギリに努力しても生活をどうすることもできない人に生活保護は認定されるべきです。
親子関係や兄弟関係が壊れているのだから扶養を強制したら却ってその関係が益々悪化するとの意見がありますが、実際そのようなケースも私は知っています。しかしだからと言って今のままでいいのでしょうか?これを機に親子や兄弟、親戚の絆を強くすべきだと思います。困った時は国に助けてもらえばいいではなくて、お互い貧しくても身内同士で力を合わせて支え合っていくのが人間ではないのでしょうか。そのような肉親、血族の絆を切るような制度は人間および人間社会をダメにするだけです。この機会に皆でその制度を見直し改革していくべきだと思います。

Posted by 小林一久 at 2012年06月14日 09:00 | 返信

この記事には違和感がありますね。
憲法に「自己決定権」というものがあったように思いますが、保護費の使い途を限定することはこれを侵すことになりませんか?

また日本ではGDPに対する保護費の額が先進国の中で最低基準です。
貧困者の捕捉率も低いです。

こうしたデータを知っての記事なのか、知らずに単に自分の考えだけを書いた記事なのか、はっきりさせて貰いたいです。

Posted by 違和感 at 2013年12月16日 09:25 | 返信

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