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胃ろう議論の本質

2012年06月09日(土)

今朝の産経新聞朝刊・兵庫版に、平穏死シリーズ6回目を書いた。
老衰・認知症終末期の胃ろう議論の本質について分かりやすく解説した。
今日のよろず相談室も、認知症の胃ろうの相談。みんな困っているのが現実だ。
 

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平穏死シリーズ6 老衰・認知症終末期の胃ろう

(6月9日分)  本人が望んでも中止できない現実

 

超高齢社会とは、多死社会でもあります。老衰や認知症が増え、療養の場所や死に場所、終末期医療に大きな関心が集まっています。8割の方が老衰や認知症の終末期での延命治療を希望されていません。しかし現実には8割の患者さんに何らかの延命治療が施されています。「1秒でも長く生かす」ことが使命とされてきた医療の必然かもしれません。さらに介護施設においても最期は病院に搬送されることが多いのが現実です。確実に平穏死が叶う場として、私は「在宅療養」をお勧めする毎日です。

 
 延命処置への関心も高まっています。人工栄養、人工呼吸、人工透析が三大延命処置と呼ばれています。特に人工栄養の中でも胃ろう栄養が話題になっています。飲み込みが困難になり口から充分に食べられなくなった時、内視鏡でお腹に穴を開けて管を入れ流動栄養剤を流し込む栄養法です。胃ろうは、もともとは障がいのため口から食べることができない子供のために開発された栄養法でした。しかし日本では気がついたら主に高齢者の延命処置として多用されていました。この10年間で10倍に増加した胃ろうの功罪がメデイアに取り上げられる機会が増えました。人工栄養により認知症終末期の患者さんの寿命が少し延びるという報告と、そうでもないという報告があり、まだ一定の結論は出ていません。現実に胃ろう造設により栄養状態が改善し、床ずれが治ったり、再び口から食べられるようになった患者さんがおられます。このように「生きて楽しむための胃ろう」は、それを望む患者さんやご家族にはまさに福音です。一方、神経難病の患者さんにおける胃ろうは、足がお悪い方の車椅子と同じで福祉用具です。全身状態が良ければ、病気の終末期でもありませんので「延命治療」という言葉自体、本当は適当ではありません。


 胃ろうは単なる栄養法にすぎず、胃ろう自体が悪いわけではありません。では胃ろうの何が議論になっているのでしょうか?要はそれをどう使いこなすかです。さらに認知症終末期や老衰で不治かつ末期の状態となった時に、自分の意思で栄養剤注入を中止したくてもできないことが「いわゆる胃ろう問題」の本質だと私は思います。実際、もはや植物状態の高齢者の胃ろう栄養を止めたい、というご家族からの相談が増えています。本人が元気な時に「延命治療は絶対に嫌だ」と書面に書き残していても中止できません。過去に人工呼吸器による延命処置を中止した医師が逮捕されるという事件があったので、多くの医師は延命処置の中止には消極的にならざるを得ません。もし胃ろうが本人やご家族の意思で中止できるのならば、もっと気軽に胃ろうを試すことができるのかも知れません。なぜなら胃ろうに限らず延命処置は、実際にやってみないとその良し悪しが分からないでしょうから。平穏死シリーズ6回目に申し上げたいことは、現時点では一旦造設された胃ろうは、もし植物状態になっても簡単には中止できないという現実です。


 折しも去る6月6日に、超党派による尊厳死法制化議連の今年2回目の総会が衆議院・議員会館で開催されました。第1回目に続き私も出席しました。来週は、スイスで開催される死の権利・世界大会に出席します。それらの詳細は次回にご報告申し上げます。

 

キーワード:胃ろう

胃ろうとは胃と体表面が通じた「ろう孔」のこと。経皮内視鏡的胃ろう造設術のことをPEGという。経腸栄養の投与経路としての造設が大半だが減圧目的もある。現在、日本には約45万人の胃ろう患者さんがいる。

 

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