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平穏死のベースには緩和医療が必要

2012年06月16日(土)

平穏死には、緩和医療がベースにある!
昨日のスイスでの議論でも、偶然にも全く同じことが議論されていて驚いた。
今朝の産経新聞・兵庫版朝刊に掲載された拙文を転載する。(外国にいるので見れないが)

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平穏死シリーズ7回目 慢性疼痛にも麻薬が使える

           平穏死は緩和医療と両輪

 

 「緩和医療」という言葉をご存知でしょうか?文字どうり「痛みを和らげる」ための治療です。その「痛み」とは、肉体的痛み、精神的痛み、社会的痛み、霊的痛みの4つがあると言われています。最後の霊的痛みは、魂の痛み、ピリチュアルペインとも。4つの痛みを合わせて「トータルペイン」と呼びます。

 
 緩和医療を提供する場として「ホスピス」が有名です。キリスト教の精神が土台であるのに対し、「ビハーラ」という仏教が土台の施設もあります方、私が従事している「在宅ホスピス」という名前ができてから、従来のホスピスは「施設ホスピス」と呼ばれることもあります。日本の施設ホスピスは末期がんとエイズが対象です。しかし私はホスピスや緩和医療をもっと広い概念であると考えています。がんとエイズに限らず、様々な病気の週末期にはそれなりの「苦痛」が伴うからです。たとえ平穏死するとしても、多くの場合亡くなる前日には身の置き所が無いような状態を経ます。老衰ですらその大半にそれがあります。私は勝手に「死の壁」と名付けています。非がんの痛みも軽視できません。


 在宅医療に携わるうち、緩和医療はすべての病気を対象にすべきではないかと感じています。最近、「慢性疼痛」という概念が普及しています。3ケ月以上続く痛みをそう呼びます。がん以外の痛みであり病気の種類を問いません。特筆すべきは、慢性疼痛にも麻薬の使用が健康保険で認められたことです。緩和医療の対象が慢性疼痛にまで広がりました。「平穏死は緩和医療と両輪」というのが私の考えです。人生の終末期において医療は何のためにあるのか?と聞かれたら、緩和医療のためだと答えます。

 
 最近、様々な剤型の「医療用麻薬」が実用化されています。1日1回あるいは2回タイプの飲み薬の麻薬。一方貼る麻薬には1日1枚と、3日に1枚タイプの2種類があります。さらに頓服の麻薬として即効性の液体タイプの麻薬や肛門から入れる座薬タイプがあります。いわゆる弱い麻薬も、新薬がラインアップされました。麻薬の剤型の進歩は、一昔前と比べて、隔世の感がします。

 
 さて日本老年病学会は今春、高齢者の終末期の人工栄養に関する立場表明をしました。延命治療の不利益が利益を上回ると判断される場合は、人工栄養からの撤退もあり得るとの見解です。当たり前と言えば当たり前の内容ですが、医学会が初めて「撤退もある得る」と表明した意味は大きいと考えます。それまでの医学は、「一分一秒でも長く生かせる」ことが最大の使命でした。しかし日本の医学史上、初めて「撤退」という選択肢が公にされた。しかし医学界のガイドラインは、所詮はお医者さん側の都合かもしれまません。


 一方、超党派の尊厳死法制化議連は6月6日の今年第2回目の総会を開き、新しい法律素案を検討しました。不治かつ末期になった時に延命治療を拒否するというリビングウイルを文章で表明していれば、延命治療を差し控えるか中止しても、医師は免責されるという内容です。不治かつ末期とは、主治医を含む2人の医師が判定します。今後、 日本における尊厳死議論が活発化していくでしょう。次回は、スイスからレポートします。

 

キーワード 医療用麻薬

オピオイド鎮痛薬とも言う。現在、日本では医療用麻薬として、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニール、コデイン、トラマドールなどが使用されている。

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