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「お泊まりデイ」と「医療保険でのデイ」

無かったら困るという家族

2012年07月11日(水)

世の中は、奥が深い。
こんな仕事をしていても、「カイゴ」に関しては、知らないことだらけ。
「お泊りデイサービス」と「医療保険でのデイサービス」について家族から懇願された。

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「お泊りデイ」とは?

デイサービスに宿泊が付いているもの。
お泊りは、自費(1泊500~1000円)。
昼間沢山デイサービスを使ってくれたら、お泊りはサービスしますよ、という感じ。

1泊だったら、それでいいかも。
でも、30泊31日だったらどうなのか?
実質、そこに住んでくるということ。

住んでいるのにデイサービスとはこれ如何に。

デイサービスの費用は、介護保険なので月30~35万円も拠出される。
月30万円以上売り上げてくれる優良顧客なら、お泊り分はサービスしますよ。
泊まってくれれば、翌日も確実にデイを使ってくれるからね、という意味のようだ。

もちろん民間ケアマネさんが、それを先導する。
ケアマネさんも、いわば仲間。
さて、これがいいのか、悪いのか?

税金と保険料をそんな形で使うなんてケシカラン!
という声がある。
読売新聞でも大きくそう報道された。

しかし家族にしてみれば、こんな有難いものはない。
1泊500円で、認知症患者さんを丁寧に、預ってくれると大喜びされる。
しかも、泊まっている時の様子を写メールで知らせてくれる親切さがいいと言う。

公的保険を私的に誘導、との非難の声に耐えながらも、
まるで救世主のような存在、という家族の声に支えられているこの事業。
都市部では、驚くほど急成長している。

さて、一方の「医療保険でのデイサービス」について。
医療保険って?
そう、私も最初は嘘だと思った。

しかし介護保険ができた2000年以前からやっていたデイサービスの一部は、
既得権益として、現在まで残っているのだ。
そんなに数は多くないようだが・・・

このデイサービスは医療保険なので、デイに行くと、
いろんな検査(CTや採血など)を無理やり受けさされる。
もちろん、在宅主治医に許可も報告も無く機械的にされる。

家族サイドからみれば、多少の難があっても、介護保険の枠が一杯なので
医療保険でやってくれるデイサービスなんて、救世主以外なにものでもない。
おそらくケアマネにとっても、救世主なんだろう。

この2つは、規則の趣旨から言えば明らかにおかしい!!!
規則の隙間から自然発生した、言葉は悪いが「必要悪」のようなものか。
サービスを受ける側と供給する側の利害が見事に一致しているのが奇妙。

もし風俗産業ならば、税金は拠出されない。
しかし公的介護保険には、税金が投入されている。
そこが風俗とは少し、ちがうところ。

さて行政は、ちゃんと知りながらもこれらを放置しているようだ。
必要悪と見ているのか、手が回らないのか、
取り締まっても意味がないと思っているのか。

おそらく最後の理由だろう。
すなわち、現在の介護保険では不十分であるのは明白だ。
これらの隙間が見事に、営利企業が埋めてくれているのを黙認している。

多少のモラルハザードに問題があっても、それが無くなればもっと困るから
見て見ぬふりをしておこう、そんな感じだろうか。
少なくとも、家族からのクレームはあまりないのかもしれない。

というか、家族は、この2つを賛美している。
「これらがなければ、在宅療養は継続できない。
長尾先生、悪口を言わないでね」と懇願される。

医療と介護の連携、という講演をよく依頼される。
連携はもちろん大切だが、このような「のりしろ」の処理がとても気になる。
実は、訪問看護もこれと全くおなじようなところがある。

ある時は、医療保険。
ある時は、介護保険。
医者のさじ加減でどちらも使える。

じゃあそれを使いこなすのが、いい在宅医なのか?
そんなことはない。
しかし現実には、両者を使いこなさないと、在宅療養が難しい時がある。

そもそも
医療保険=非営利
介護保険=大半が営利企業

その2つが協働させるのが在宅療養という場。
しかし本質的に、性格が違う2者が協働するのは実は難しい。
多少の摩擦があるほうが自然だ。

photo94.JPG 介護保険も医療と同じように
「非営利」にしておくべきではなかったのか?
そんな根本的矛盾が、頭をよぎる。

「医療と介護の連携委員会」の委員になったが、全然、仕事が無い。
会議でこのような発言をしたが、誰も興味を示さない。
「連携」しすぎないほうが、行政にはいいのかもしれない。

「連携」と聞くと、つい、以上のようなことが頭に浮かんでしまう。

今日は、訪問入浴の看護師さんと立ち話。
実は、昨日も立ち話。
「連携」とは、こんな身近なところだけでいいのか?なんて気もしてきた。



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この記事へのコメント

お泊りデイは介護保険の居宅サービスではないでしょう。オプションみたいなものです。人間は実に浅ましい。安けりゃあ、使わなあ損とばかり、群がっている。ケアマネージャーもグルになって・・・。国は前回の改正で「居宅復帰に力を注ぐ」と歯の浮いた、非現実なことをいっておきながら、この現象に目をつむっている。言っていることとやっていることがあまりに違いすぎませんか?どう監査するかみものです。「必要悪」を正当化するようなら日本も地に落ちたものです。何がモラルハザードですか・・・。高齢者がわんさか増えることを国は百も承知、でも施設を増やす気はない。そこにタイミング良く激安のお泊りデイ登場。1ヶ月、使っても特養ととんとんなら家族はそりゃあ助かる。「年寄りの行き場がないからそこはうまくやってくれ」と舞台裏で手を擦り擦りしているのは容易に想像できます。冗談じゃあない。在宅なんて所詮、絵に描いた餅。何の苦労もなく在宅介護を実現している人がどれくらいいるでしょうか?国は現状を知らなすぎるか、知っていても知らぬふりをしているのか・・・、両方でしょう。サービスの谷間は山ほどあります。今、確かにその谷間がビジネスになっています。私の友人の社会福祉士は「便利屋」と称して海外旅行の付き添いから成年後見、お泊り、草むしりまで谷間という谷間すべてに対応しています。対価はきちんといただいて・・・。もちろん介護保険外ですから高いです。介護保険の居宅サービスにくっつけてぼろもうけ?そんなせこいことはしません。利用者がそれまでの生活を継続させるために必要なサービスを提供します。見事にサービスを受ける側と供給する側がマッチングしています。親を厄介者にして激安のお泊りデイに放り込むのとは質が違います。500~1000円でいいサービスが提供できるとは思えません。本人の様子を写メールで送るのが質のいいサービスだなんて勘違いもはなはだしい。その裏で過激な労働を強いられている人が大勢いるのではないかと思います。何より、満足度(やりがい)が得られる仕事になっているか疑問です。
こんな現象を福祉を目指す学生に教えなければいけないとしたら教育も罪な仕事です・・・。

Posted by 岡村 ヒロ子 at 2012年07月12日 12:20 | 返信

お久し振りです・・・。
 「お泊りデイ」の諸問題が、取り上げられる際に 比較対象とされたのが「小規模多機能型~」ですね。

マクロ的には、大義の御旗の元では 同じ土壌ですが・・・
ミクロ的には、水と油 相容れない「ケアシステム」なんですよね・・・

Posted by 駆け込み寺 at 2012年07月12日 12:00 | 返信

★お金は生きているうちに使いたい
岡村さんの友人の社会福祉士さんの活動、素晴らしいですね。情報を有難うございました。
私も以前から介護保険の利用者様に、自分のお金はもう少し自分のために使っても良いのでは?と情報提供してきました。車いすでも介護者付きで鎌田実先生とハワイを楽しむツアー等いろいろありますよね(旅行会社のツアーで介護者はトレーニング修了者。しかもお医者さん・看護師同行!)個人でも対応してもらえると思います。入浴も一緒にしてくれるケースもあり。

お金がある人の話?と言われそうですが、そこは考えよう。
私事ですが、お金持ちでない私は娘達に家を生前贈与して(贈与税も負担)、それを担保にお金貸してね、ということにしてあります。今は、だから借家人。でも日常生活は何も変わりません。借りるかもしれないお金を推定しても死後家を売却したら返せるはず、と踏んでいます。

娘達が相続を全然アテにしていないのは、多分私と妹のおばあちゃん分遺産管理を見ているからかも。母の遺産は分けずに毎年一族全員集まって宿泊。全ての経費をそこから出してきました。母の願いが「みんな仲良く楽しく」で、生前も良く集まって母が経費を出してくれていたので。
だんだん一族が増えて今年は19人。10年目なので文字通り遺産を食いつぶしてきつつありますが、いとこ同志・はとこ同志、赤ちゃんの時から見ているのでとても良い関係。大人同士も仕事の話、これからの話など一回で全員が分かりあえて、能率良くてバンザイです。孫達が部活等忙しくなり、会食後日帰りの親子が出た年もあったりして、でも貴重な10年+あと何年かになりそうです。

多分いろんな方が生活の知恵をお持ちでしょう。伺ってみたいなあと思います。
先日聞いて感心した話。お勧めする訳ではありませんが。
「すごく高価なブラを買ったけど、洗濯激しいと傷むのでスリップの上から着けてるの」…エッと思ったけれど、旅行の時は2~3日使えて良いかもと思ってしまいました。目からウロコでした!

Posted by 梨木 at 2012年07月12日 12:03 | 返信

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