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不満足死

2012年08月21日(火)

10年待った特養にやっと入所できた患者さんの家族から携帯電話が鳴った。
「特養で急死した」、と泣きながら言われる。
そして「悔しい・・・」と絶句された。 いったい何が悔しいというのか?
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認知症の親を10年間在宅介護した。
その間に、いろんなことがあった。
働きながらの在宅介護を頑張った。

待ちにまった特養、のはずだった。
私と別れるのが辛いと泣いてくれた。
特養の嘱託医にバトンタッチをした。

しかし1週間もたたないうちに親を自宅に連れ帰った。
自分の思う介護ではない、と施設に猛然と抗議した。
しばらく連れ帰った親を、自宅に「籠城」した。

電話で相談された私は、施設に帰るように説得した。
一度出ると、また10年待ちなのだ。
それにその特養は、日本一との呼び声が高い特養。

そんな老人が、施設で突然倒れて、そのまま絶命した、らしい。
施設は救急車を呼び、亡くなった老人を乗せて蘇生しながらの救急搬送した。
施設内で急死されたら困るのだ。

搬送先で心臓マッサージしながらのCT撮影が行われた。
腹部大動脈瘤の破裂と判明した。
そこで蘇生処置は打ち切られて、臨終宣告になったそうだ。

「歳をとったらいろいろあるよ。
仕方が無い。苦しまなかったしね。
大動脈瘤破裂は家にいたって、破裂するときは破裂するよ」

こんな訳のわからない説明をしてみた。
御家族さんは納得するかの思いきや
「悔しい・・・・」と、さらに泣かれた。

悔しいという理由を、恐る恐る、聞いてみた。

施設の介護に対するつのり積もった不満と
悪い介護が、大動脈瘤を破裂させたという想像。
そんな葛藤が、「悔しい・・・」と言わせたようだ。

10年待って入った施設生活は、わずか3ケ月で終了。
入所した途端に、衰弱したとはご家族さんの弁。
私は治外法権なので、施設に入れないし、よく分からない。

どこが「悔しい」のか私なりに考えてみた。

家族はとにかく「不満」だったようだ。

施設に入れたことを、最後まで後悔していた。
連れ戻すことを決意できない中での突然死。

せかっくの平穏死も、残念ながら「不満足死」となってしまった。
その特養入所はご家族が選んだ道だから、私には責任は無い。
ご家族とのコミュニケーションが取れなかった施設に原因はある。

結局は、ご家族が満足されるかどうかで決まる、のではないか。
家族が満足すれば「満足死」
しなければ、「不満足死」、となる。

旅立つひとは、どちらか言えない。
言うのは、常にご家族だけだ。
その老人は、何も言わずに旅立たれた。

結局、その方の在宅医療は、満足医療だったのだ。
一方、その施設での医療は不満足医療だったのだ。

しかし在宅と施設を比べては、施設側には少し可哀そうな気がする。
だからこそ、少しは上手に「満足」を演出してほしかった、とも思った。
photo117.JPG
結局は、相性、コミュニケーションなんだろう。

満足死とは、本人はもちろん、家族も満足して使える言葉だろう。

お通夜の棺桶の中の本人のお顔は、満足死だったので少し安心した。




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この記事へのコメント

よくは分かりませんが、確かに、患者の家族の甘えというものはありますね。
一旦、特養にお父様を入れて、良くないと思ったら、誰かに相談などせず、そのまま、自宅介護をなさったら良いと思います。誰かに相談なさったというのなら、相談相手も何らかの、答えを出さざるを得ない。結果は亡くなられたのですけど、その場合は事実を粛々と受け止めなければいけないと、思います。私自身も患者の家族として省みる事柄です。そんな風に、患者や家族に甘えられる、長尾先生は羨ましいのか、お気の毒なのかは分かりませんが、訴訟に持ち込まれたのでなく、愚痴として、仰っているのですから、聞いて差し上げて下さい。おかしいな?これって長尾先生へのごますりなんかも?

Posted by 大谷佳子 at 2012年08月21日 02:39 | 返信

私の叔父は特養に入所したその日、数時間のうちに急変して亡くなりました。昼食を家族で囲み、甥が送っていったのですが家に戻って玄関を上がるか上がらないうちに様態が急変したという連絡が入りました。叔父の最期に間に合いませんでした。叔父は情の深い穏やかで優しい方でした。几帳面で毎日、日記をきっちり書いていたようです。遺品からその日記が出てきましたが認知症が出現してからもたどたどしい筆遣いで書いていたことが文面からうかがえました。とうてい真似のできない生き方でした。そんな叔父です、自らの最期を自らでけじめをつけたのではないかと思います。亡くなる前の2年ほどは深い認知症で、夜間せん妄は出るわ、外に出て行ってしまうわ、トイレは水浸しにするわで家族の介護は相当なものでした。老健で落ち着き、特養に・・・という時、これ以上、家族の手を煩わせてまで生きる必要はないと決めたのでしょう。信仰心の篤い方でしたので生前、自分の死に方を一心に祈っていたのかもしれません。「おじちゃん!あっぱれ大往生」といってあげることが最大の供養だと思いました・・・。家族は特養入所を決めたことを悔いたかもしれません、叔父の死期を早めたと・・・。でも、それは家族の思いであって叔父の思いではありません。人間は最善なんて尽くせないのだと思います。介護はこれでベストということはありません、医療だって、神様だって・・・。人間は微力です。「死」は受け入れざるをえません。

Posted by 岡村ヒロ子 at 2012年08月21日 12:37 | 返信

岡本ヒロ子様、茨木市での集会では大変お世話になりました。長尾先生に大目玉を頂戴して、あわてて帰ったので、御挨拶もせず、失礼しました。大盛況で良かったですね。
ところで、私は三宮のヒューマンアカデミーで、ヘルパー2級の研修を受けて、神戸の新在家のロングステージ灘で実習させて貰いました。
色々考えたのですが、施設を「終の棲家にする」と決めてしまう前にデイサービスとか、ショートステイで、自分に合うかどうか、試してみたり、心と体を慣らして行く準備があれば、もう少し、穏やかに、施設を利用できるんじゃないかと思いました。
施設は私達、何の経験も知識も無いヘルパー研修生には、有りがたい教育の場でした。分からないことがあれば、直ぐ、先輩に聞けるし、看護婦さんも複数いらっしゃったし。
利用者も、デイサービスの調理師さん達の腕をふるった、京料理を堪能したり、ショートステイで、仲間と再会したり、随分と、楽しんでいたようでした。
問題は突然送りこまれた、不安のある人達でした。お昼近くに、入浴施設の脱衣所に美しい天使か、女神のようなワーカーさんが、車いすで高齢の女性を運び込んだ時でした。服を脱がそうとした、美しい女神が「痛い!」と叫んで、手や腕から、血を流して、慌てて、出て行きました。高齢女性が爪で引っ掻いたのです。それから、大暴れで、私も怖くて、全部は見てないのですが、もの凄い騒ぎでした。ところが、夕方、私達が帰る時刻に、高齢女性が「もし、お姉さん!ワタシなあ、家に帰りたいんじゃけど、どうしたらええんじゃろう?」としおらしく、聞いてきたのを、よくみると、さっき、お風呂場で、大暴れして、天使や、女神を血だらけにした張本人ではありませんか!早速、先輩ワーカーさんに相談すると、「○○さん!。お家に帰るから、3階へ行きましょうね」と上手に言い聞かせて、エレベーターで行ってしまいました。やっぱり、突然無理やり、施設に、入居すると、不安が不安を呼ぶのかなと思いました。

Posted by 大谷佳子 at 2012年08月22日 01:24 | 返信

これからは、『介護施設の情報公開』がキーワードになっていくと思います。
施設の運営をオープンにして、運営に利用者が参加して関わっていくような
あり方にするのが理想です。
地域の住民が運営に参加するNPO法人の試みに、上野千鶴子氏なども期待しているようです。


彼女が言うのは、
「利用者を施設に預ける家族は、もっと介護の現状、介護保険の現状を知るべき。
時々施設に来てあら探しをするレベルではなく、もっと良い施設にするために
知恵を出し合う時期にきている」

調べ魔の上野氏は、ベストセラー『おひとりさまの老後』以降、介護問題にのめりこみ
『ケアの社会学』という本まで出しました。
『おひとりさま』は、一般向けに書かれたくだけた本でしたが、こちらは、社会学者として
書いた専門的な著書です。


11月には、高槻市で介護事業をおこなっているNPO法人主催の講演会・トークセッション
に参加されます。
高齢者問題に関する彼女の最新のコメントが聞けるタイムリーな企画だと思います。

Posted by 花へんろ at 2012年08月25日 12:21 | 返信

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