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町医者と認知症ケア

2012年10月25日(木)

連載中の医療タイムス先週号から転載させていただく。
しばらく「町医者と認知症ケア」で書かせて頂くつもり。
町医者こそ、もっと認知症の勉強をするべきだと思う。
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冬の時代の診療所経営10月号  町医者と認知症ケア(その1)  
                                長尾和宏

 

 認知症患者が当初の予想より早まり300万人を超えた、と報道されました。65歳以上人口の10人に1人という数字です。私はこの報道を見ていくつかの連想をしました。この300万人は誰がどう診断したのだろうか?また、もっと多いんじゃないかな?あるいは、MCIと呼ばれる認知症予備軍はきっとその何倍もいるんだろうな、と。日々、外来診療をしていて、認知症の患者さんが5人くらい続くことがあります。認知症患者さんは家族同伴が原則ですが、家族が働きに出ているので一人で来院される患者さんも結構おられます。投薬日数が合わないことで相当な診察時間を要します。臨床の最前線にいる立場で感じるのは、認知症患者さんはもっといるだろうし、今後さらに急増するであろうと肌で感じています。まさに激増する認知症患者さんに、少数の認知症専門医だけで対応できるはずがありません。普通の診療所、普通の町医者が果たす役割がどんどん大きくなるのは当然です。

 
 一方、認知症対策はがん対策に比べるとかなり遅れている感がします。がん対策はがん対策基本法が制定され一定の予算がついたことが、推進の大きなモチベーションになっているようです。一方、認知症対策の一環として認知症サポート医やキャラバンメイトが養成されています。しかしまだ掛け声のほうが大きく、診療の場、生活の場、地域包括ケアの中での対応や法的整備など、課題山積です。特に、成年後見人制度の鑑定人を依頼されることが増えてきており、慣れない書類を相手に悪戦苦闘しています。従って超高齢化に伴い激増する認知症患者数に対応できる具体的施策が喫急の課題であると強く感じます。

 
 当院の場合、認知症を疑った場合、問診、長谷川式・MMSE,甲状腺ホルモンなどの血液検査、頭部CTを含む画像診断で総合的に診断しています。プライマリケアの範疇では診断できず、専門病院に紹介状を書く患者さんは決して多くありません。9割は自院で診断しています。認知症患者の多くは住み慣れた地域で診断・治療して、介護の力を借りながら、障害されていない能力を最大限に活用し最後まで生活するのが一番だと感じているので認知症の家族会とも深いご縁を頂く毎日です。

 
 私がなぜこんなに認知症患者さんを診ているのか考えてみました。ひとことで言うなら認知症という病気が決して嫌いでははいからです。いや結構、好きだからです。しかし認知症診療が心底嫌な医師も多いようで、好き嫌いで言うと、結構きれいに2極化すると思います。在宅医療が好きか嫌いかも、とても良く似ています。

 
 もし嫌いではなければ、認知症ケアに積極的に参画するのが今後の診療所が生き残る道のひとつではないかと思います。認知症診療はお薬を出すだけではありません。基本的にはケアの比重が大きい病気ですから、ケアマネさんやヘルパーさんなどの介護スタッフとの顔の見える連携に精を出すことです。すなわち認知症ケアを行うということは、必然的に地域包括ケアに参画することになります。これは町医者の大きな醍醐味である、と私は思います。(続く)

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