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医師法21条の現状と課題
2012年11月07日(水)
数字が繋がっているので関連はあるのだが、別物である。
医師法21条の何が問題なのか理解するのにいい記事が流れてきた。
一部は、延命措置へと繋がってきた。
以下、MRICから引用させていただく。
井上弁護士のいうとうりだと思う。
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医師法第21条に振り回される必要はない
この原稿は月刊『集中』2012年11月号より転載です。
井上弁護士事務所
弁護士 井上 清成
2012年11月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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1. 医師法第21条の法解釈の現状
医療に対する業務上過失致死傷罪(刑法第211条第1項前段)の適用を、いずれは完全に、法律改正をもって排除しなければならない。法改正の議論には長い時間がかかるであろう。しかし、この大議論は打ち切ってはならない。たとえ目前の小さな成果が得られたとしても、それに満足して、拙速に解決済みにするようなことがあってはならないと思う。
ところが、現在、医師法第21条の改正だけを旗印にして、中立的第三者機関の医療事故調設立の検討が進んでいるらしい。医師法第21条の改正のみをもって、医療過誤問題を事実上、決着させようという方向のように思われる。
このような方向を憂え、佐藤一樹医師が日本医事新報4615号(2012年10月6日号)62頁に「医師法第21条の法解釈の現状」という論稿を載せた。「Q&A」欄の「医師法第21条が問題視されて時間が経っているが、法解釈の現状を、いつき会ハートクリニック・佐藤一樹氏に。(岩手県O)」という質問に対する回答としての論稿である。その見識はさすがというほかなく、法的センスに優れているので、是非、参考に一読されたい。
2. リスクマネージメント作成指針の改定
回答の結論は「『異状死』を警察に届出する法律などなく、死体を検案して異状を認めた場合だけ届出義務がある」というもので、「リスクマネージメントマニュアル作成指針」が誤っていたという正当な指摘が続く。
「ところが、現在、法律に詳しくない医療者には『医療過誤によって死亡又は傷害が発生した場合又はその疑いがある場合には、施設長は、速やかに所轄警察署に届出を行う』(2000年7月厚生省保健医療局国立病院部政策医療課作成『リスクマネージメントマニュアル作成指針』)ことが法律の遵守だという誤解が蔓延した。この結果、20世紀には年間平均2件だった警察届出からの立件送致数が、級数的に増加した」とのことである。
つまり、その作成指針が改定されねばならない。何のことはなく、法技術的に改定は容易であると思う。前掲の箇所は、「第7 医療事故発生時の対応」のうちの「5 警察への届出」の(1)である。その際のキーワードは、「医療事故」と「医療過誤」の2つに過ぎない。
もともと作成指針は、「医療事故」をキーワードとして、その全編ができていた。その中で「医療過誤」の語句が出てくるのは2箇所だけであり、その2箇所だけ切除すれば、必要かつ十分である。1箇所目は、「第3 用語の定義」のうちの「2 医療過誤」の項目であり、「2 医療過誤 医療事故の一類型であって、医療従事者が、医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為。」の記述である。2箇所目は、前掲の「第7 医療事故発生時の対応」のうちの「5 警察への届出」であった。そこには、前掲の(1)に続けて(2)から(4)があり、医師法第21条に言及した(注)もある。しかし、すべて一連の警察への届出の記述に過ぎない。
したがって、それら2箇所を削除すれば足りる。極めて容易なことであり、直ぐにも改定可能であろう。
3. 法医学会ガイドラインとの切り離し
また、佐藤医師は、「日本法医学会も1994年5月『異状死』を独自に定義した『異状死ガイドライン』に加え、2002年9月『異状死ガイドラインについての見解』で『死亡に至る過程が異状であった場合にも異状死体の届け出をすべきである』と強調した『診療関連過程異状届出説』を取り下げていない」と批判する。確かに抜本的には日本法医学会ガイドラインが改められるべきであろう。ただ、実務上は、厚労省発行の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の影響が大きい。
死亡診断書記入マニュアルは、「2 死亡診断書と死体検案書の使い分け」の項目で、異状死体等届出義務について記述した。そして、その末尾の(注)で「『異状』とは『病理学的異状』でなく、『法医学的異状』を指します。『法医学的異状』については、日本法医学会が定めている『異状死ガイドライン』等も参考にしてください。」とわざわざ述べて、日本法医学会ガイドラインと関連付けてしまったのである。
したがって、(注)書きの後半を削除すればよい。死亡診断書記入マニュアルと日本法医学会ガイドラインとを切り離せば、実務上は、その最低限の目的は達せられよう。
4. 大野病院事件判決の再評価
佐藤医師は、「医師法第21条は、第33条2項に処罰規定がある『刑罰法規』である。刑法に準ずる法律であるからには、類推解釈は禁止され、拡張解釈は厳に慎むべきである。」と刑法の基本原則にも言及している。拡張的類推解釈禁止の原則ともいう。
この点を踏まえると、福島県立大野病院事件判決の医師法第21条に関する判示は、もっと高く評価されねばならない。過失なき診療行為については異状とは言わない旨を述べた判示である。過失がないと思っていた場合には、異状性の認識がなかったので届出義務がないと考えられよう。これは限定解釈(縮小解釈)と呼ばれる。
下級審判決だからと言って、先例としての価値を低く評価する見解もあるらしい。しかし、大野病院事件判決は、刑法第211条第1項前段に関する高い評価にとどまらず、医師法第21条に関する判示も再評価されてしかるべきと思う。
5. 中立的第三者機関は安直な発想
佐藤氏は、医療事故調の議論も批判する。
「2004年9月30日、日本内科学会、日本外科学会等全19学会は、『診療行為に関連した患者死亡の届出について~中立的専門機関の創設に向けて~』を発表し、現在もいわゆる『医療事故調査委員会』設立の方向にある。この内容には『どのような事例を異状死として所轄警察署に届出なければならないのかが重要な問題になってきている…明確な基準がなく、臨床現場に混乱が生じている』とあるが、根本的に21条を理解していない。『異状死を警察に届出するくらいなら第三者からなる中立的専門機関に届出したほうがよい』という安直な発想だ。」と言う。まさに正当な批判である。医師法第21条に振り回されて、中立的第三者機関としての医療事故調を創る必要はない。
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この記事へのコメント
患者と家族と、医師の立場に理解がある弁護士さんがいらっしゃって、良かったです。
でも、この難しい理屈が、葬儀屋さんとか、警察官も理解して下さっているのかしら?
葬儀屋さんの中に、直ぐ、警察に通報する葬儀屋さんがいると聞いています。
去年、家族葬をうたっている葬儀屋さんに、行くと、「親戚をできるだけ沢山集めて下さい。わたしども葬儀屋はそれで、食べているのです。100万から300万円くらいで、考えて下さい」と言われて、それ以上のことは聞かずに帰ってきました。
まあ、死んでしまえば、警察で、切り刻まれても、いいかも。
「煮るなり、焼くなり、好きにしてくれ!」と言う心境です。
Posted by 大谷佳子 at 2012年11月09日 02:34 | 返信
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