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長ーく、付き合いたい
2012年11月08日(木)
長ーく、お付き合いさせていただくことが、町医者冥利である。
産経新聞「医者の本音シリーズ第8話」には、そんな想いを書かせて頂いた。
医者の本音シリーズ第8話 医者と患者の関係性
長―く付き合いたい
私に26年間かかって頂いた患者さん(Aさん)がいました。そう、医者になって初めて受け持った患者さんが、その後私の職場が変わってもずーと来てくれました。いわゆる「おっかけ」です。大学病院にも来られましたし、アルバイト先の病院にも来られました。気がついたら自分の家族や友人も一人一人引き連れてきました。そしてなんだかんだ言いなが四半世紀以上、Aさんは私の患者さんであり続けたのです。しかし残念ながら、昨年、最期は病院で旅立たれました。
Aさんの事を思い出すと胸が熱くなります、なにせ医者になって初めて受け持つ患者さんだったので、やることなすこと、すべて「生まれて初めて」のことばかり。しかし失敗しても、いつも笑って許してくれたのです。私はその患者さんに育てられました。難しい病気の見方も、難しいお薬の使い方もすべてその患者さんが率先して「実験台」になって頂きました。そんな患者さんを失った事は本当に辛いことでした。
尼崎の地で開業して18年目。開業当日、診察券は1番から番号を振ってきました。番号は、1万を超えました。現在通院されている患者さんで、診察券番号が2ケタの方で現在も通院された方はごくわずかです。みなさん、どこかに移られたか亡くなられたかのどちらかです。おそらく後者の方が多いのでしょう。時代の流れ、時間の無常さを感じます。
さて医者と患者の関係の礎は、信頼関係だけだと思います。医者は患者を選べませんから、患者さんがお医者さんをどれだけ信頼してくれるかです。常に受け身ですから、信頼されていると思っていても、プイと来られなく患者さんもいます。愛し合っていると思っていた恋人に、ある日突然浮気されたようなショックを受けることもあります。「ああ、自分のどこかが足りなかったんだ。何か間違いをしたのかな」。叶うならば「振られた理由」を聞いてみたいくらいですが、そんなわけにはいきません。浮気をしても3年後に帰ってくる患者さんもいます。バツが悪そうな顔をしていますが、温かくお迎えします。ただ何度も浮気を繰り返す浮気常習犯は、「どうせ、またどこかに浮気に行くのだろう」とオオカミ少年状態になります。信頼されない患者さんがあるとしたら、このようにドクターショッピングを繰り返す患者さんです。しかしその渡り鳥のような患者さんでも、いろんなことを教えて頂きます。医者はどこまでいっても患者さんに教えていただくものです。
かかりつけ医とはAさんのようなものです。Aさんは難しいご病気があったので、いくつもの病院のお世話になりました。病院は変わっても、主治医=かかりつけ医=ホームドクターは私であり続けました。「病院と地域のかかりつけ医との併診」を、私はいつも勧めますが、Aさんは自然とそうなっていました。
長ーく付き合いたい。どこかの銀行のコマーシャルと一緒です。患者さんと長く付き合えれば付き合うことが町医者冥利です。医者も成長するので患者冥利という恩恵にあずかる機会も増えます。医者の本音シリーズは、今日までとします。診察室では言えない、町医者の本音を8回呟いてみました。来週からは、「がんが再発した」シリーズになります。
キーワード かかりつけ医
一人の人間を総合的に診る医師が求められている。総合医、総合診療医、プライマリケア医、家庭医などいろいろな名称が提唱されているが、日本医師会は「かかりつけ医」という言葉を使っている。
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この記事へのコメント
25年もお付き合いがあって、見送った患者さんなんて、長尾先生の心の財産ですね。
素晴らしいです。
私は残念なことに、そんな患者さんはいません。
Posted by 大谷佳子 at 2012年11月09日 02:13 | 返信
私は田舎の開業医ですが、いつも外来の患者さん(高齢者)には、言葉は悪いかもですが「外来から棺桶まで診るからね~~~」と冗談で言っています。(本当は本気ですが)開業10年を越え、80代で出会った方が90越え。。。見送る機会が増えてきています。10数年付き合った方の見送りは辛いっすね。。。。
Posted by べひん at 2012年11月10日 08:31 | 返信
あのう、誉めておいて、なんですけど、もう一度読み返すと、「愛し合った恋人のように」とか「浮気されたような、ショック」って、ちょっと、大げさなんじゃないですか?
それくらい、真剣に、診察していらっしゃるのは分かりますけど、患者さんに中には、窮屈に感じる人もいるのではと思います。
親の愛情と、希望を一身に受けている一人っ子みたいで、逃げたくなる。
それで、浮気してるんかもしれません。
やっぱり、医者の気持ちは分かりません。
Posted by 大谷佳子 at 2012年11月10日 04:18 | 返信
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